ヴィンテージ食器と雑貨を提案する「レリッシュ」を訪ねてみた。
アメリカのヴィンテージ食器や雑貨を取り扱うセレクトショップだ。2004年創業で、3年前に岐阜に移住して店舗を構えたという。今回はオーナーの加登 利香(かとう りか)さんにお話をうかがった。
- 東京から岐阜に移住しての挑戦
- ヴィンテージ本との出会いがきっかけ
- お気に入りの食器で楽しい食卓を
- 新たな施策「ヨガ教室×ティータイム」
- お気に入りの橋渡し役になりたい
①東京から岐阜に移住しての挑戦
relish(レリッシュ)は、アメリカンヴィンテージの食器や雑貨を取り扱うセレクトショップだ。現在、実店舗やネットショップ、イベントへの出店をプラットフォームに展開している。
創業は2004年で、最初はネットショップを立ち上げ、本業の仕事をしながら、副業として小さく始めた。今でこそ副業は一般的になったが、20年前はまだマイナーで、時代を先駆けた加登さんの行動力に感心させられる。
「数年間休業した時期もありましたが、再開して今に至っています。初めは実店舗がなかったので、自宅に在庫を置いてネット販売していました。あとは、年に数回のイベント出店の時だけ対面販売ができました。」
レリッシュが実店舗を構えたのは、加登さんが東京から岐阜へ移住した、3年前のことだった。
東京出身の加登さんは、元同僚が岐阜でカフェをオープンしたことがきっかけで、定期的に岐阜へ来るようになった。その後、いろいろな知り合いができ、岐阜のご縁を感じたこともあり、元同僚のカフェで仕事をしようと、移住を決意したのである。
「移住後、最初に住んだシェアハウスに店舗向けのスペースがあったので、それを活かして念願の実店舗を始めました。その後、今年の春に移転して、今は週に1日だけ営業しています。」
東京は便利で楽しい都市だが、人が多く建物も密集しているため、落ち着かない一面もある。それに比べて、岐阜は住みやすく居心地が良いという。
都会から地方への移住には苦労も多かったはずだ。しかし、それを感じさせず岐阜にすっかり馴染んでいる、加登さんの適応力の高さに驚かされた。
店名のレリッシュは、ホットドックのトッピングなどで使われる「ピクルスのみじん切り」を指しており、薬味や付け合わせなどを意味している。
relishの単語には、「楽しむこと、味わうこと、風味、好み、香り、嗜好」という意味があり、単語の響きと併せて店舗のイメージと合うと思ったのが理由だと、加登さんは話す。
「レリッシュのコンセプトは『お気に入りの食器で楽しい食卓を』で、レリッシュの『楽しむ』や『味わう』や『付け合わせ』という意味とテーマがぴったり当てはまりました。」
店名のロゴの色も、食材のレリッシュと関連させた緑色にしており、レリッシュへの強い想いが伝わってくる。加登さんは、岐阜で新たな挑戦を迎えているのである。
②ヴィンテージ本との出会いがきっかけ
加登さんがレリッシュを始めたのは、「ニューヨークで探すアメリカンアンティーク」という本との出会いがきっかけだった。
当時、加登さんは店舗の内装デザインの会社に在籍し、会社が運営するインテリアショップで働いていた。仕事で家具や雑貨を扱っていたこともあり、食器や雑貨が好きだったというが、最も影響を受けたのはこの本との出会いだと振り返る。
「表紙に載っていた食器が、ラッセル・ライトというアメリカの工業デザイナーの作品で、それを見てひと目で気に入りました。これをきっかけに、ヴィンテージ食器探しに目覚め、自分で買い付けをしてみようと考え、事業を始めました。」
ヴィンテージ食器との運命的な出会いを果たした加登さんだが、なぜアメリカに特化したのかについてうかがった。
「アメリカが好きだったからです。高校の夏休みにホームステイをして、そこでの時間がとても楽しかったんです。ロサンゼルスの郊外だったんですが、家も広くてインテリアも素敵で、カルチャーショックを受けました。」
当時は3週間という期間であったが、アメリカでの生活で受けた刺激により、加登さんの感性は磨かれたのだろう。節目節目でアメリカが思い出され、その体験が活きていたという。
その後社会人となり、店舗内装のインテリアショップで5年勤めた後に退職。再びアメリカへ渡り、今度はソルトレイクシティで1年間の語学留学をした。
「ソルトレイクシティは、山があったりと自然豊かなところでした。きっと私は自然が好きなのでしょうね。この留学経験もあって、岐阜での生活にもすぐに馴染み、居心地が良いと感じるのだと思います。」
帰国後に「ニューヨークで探すアメリカンアンティーク」と出会い、本に触発されて創業したという時系列だ。食器、雑貨、アメリカが好きであったことと、本に出会ったこと、すべての要素がつながり、レリッシュは誕生したのである。
そのときは点だった経験が、振り返るとすべて線でつながっていることに気づかされる、加登さんの生きたエピソードである。加登さんは、岐阜で、今日も自分の好きなことを仕事にしている。
③お気に入りの食器で楽しい食卓を
「お気に入りの食器で楽しい食卓を」というのがレリッシュのコンセプトである。
「お気に入りの食器で食べたり、盛り付けしたりすると、それだけで楽しくなります。それが買ってきたお惣菜であっても、料理をより楽しく味わうことができるのです。だからこそ、このコンセプトを掲げています。」
レリッシュで扱う食器には、ブランド食器も含まれているため、人によっては使わずにコレクションする人もいるという。ただ、加登さんは、毎日の食卓でどんどん使ってほしいと話す。
「食器を見ていると、こう盛りたいとか思い浮ぶことがあるので、お客様にも楽しく使ってもらいたいという気持ちで紹介しています。雑貨も同様に、お気に入りを部屋に飾るだけで楽しくなるので、暮らしを豊かにするお手伝いをしたいという想いで販売しています。」
自分が体験した楽しさをお客様にも味わってほしいという想いが、提案する商品に込められているのである。ユーザーにとって、これほど心強いコンシェルジュはいないだろう。
レリッシュの強みは3つあると考えている。
1.アメリカで直接買い付け
加登さんは定期的に渡米して、現地で買い付けをしている。現地でしか見つけられない物など、市場に出回っていない希少価値の高い商品をラインナップとする強みがある。
2.加登さんが厳選する(気に入ったもの)
雑貨と言ってもいろいろなジャンルのヴィンテージがあるので幅広い。数ある中で、加登さんが気に入ったものを厳選してくるのだ。基準は、レリッシュの店頭に置きたいと心から思えるもの。お客様にも楽しさを味わってほしいという想いが込められている。
3.商品はレア物である(ヴィンテージ)
扱っている商品はラッセル・ライトやファイヤーキングなどのブランド食器だ。ミッドセンチュリーと呼ばれる1900年代半ばのデザインで、もう生産されていないレア物である。最近は復刻版も出ているが本物は違うという。昔の良さを味わえるという強力な強みを持っている。
レリッシュでは、「お気に入りの食器で楽しい食卓を」をコンセプトに、自分が体験した楽しさをお客様にも味わってほしいという想いで、厳選した商品を提案している。何よりも加登さんご自身が、レリッシュの最大の強みだろう。
④新たな施策「ヨガ教室×ティータイム」
現在、加登さんは、元同僚が経営するカフェの仕事も並行して行っているため、レリッシュの実店舗は週1日だけの営業としている。
限られた営業日数の中でも、より多くのお客様に来店してもらうため、SNSやイベント出店などの集客活動に力を入れている。
「課題はやはり集客です。今のお客様は、カフェのお客様が来てくださったり、インスタグラムを見て来てくださったりします。SNSは定期的に投稿していて、少しずつ反応が増えるようになりました。ただ、自分としてはもう少し工夫して投稿しないと広がっていかないと考えています。」
SNSでの集客活動によって、一定の成果は出始めているにもかかわらず、加登さんはその先を見据えて、自ら新たな課題を見つけ、取り組んでいる。
さらに、認知度を上げるため、イベントへの出店も強化するという。
「今までは、東京や横浜で開催される、骨董市やアンティークマーケットに出店していましたが、今年から新たに名古屋で開催されるイベントへの出店を決めました。車やバイクとアメリカ雑貨などのイベントと、アンティークマーケットの2つです。この機会に活動の幅を広げて認知度を上げたいと考えています。」
イベント出店では、自分の店舗を見ていただくのも楽しいが、逆に加登さん自身が他の店舗を見て回るのも楽しいという。
好奇心旺盛だからこそ、他店舗にも興味を持ち、自然とコミュニケーションが生まれて、新しい出会いとビジネスチャンスが生まれるのだろう。
加登さんは、レリッシュでできるサービスを充実させて、「お客様にわざわざ来ていただける店にしたい」と想いを語る。それにあたって、新たな試みを行っているという。
「月に1回、3〜4人でヨガを始めました。ここでヨガをすると、景観も良くて気持ちが良いと好評なんです。さらに、ヨガの後にティータイムをしています。『レリッシュの食器を使って、ケーキとお茶を楽しむ少し贅沢なひとときを提供する』という試みです。」
自然豊かな場所という地の利を活かしたヨガに、ヴィンテージ食器を使ったティータイムを組み合わせる。これは、レリッシュだからこそ実現できる唯一無二のイベントである。
加登さんは、いつも自分でできる範囲の中で考えていると話すが、「ヨガ教室×ティータイム」のイベントを知った今、今後のレリッシュの展開に、ワクワクせずにはいられないだろう。
⑤お気に入りの橋渡し役になりたい
レリッシュの事業を通して目指す姿は「橋渡し役」である、と加登さんは話す。
「店頭に置いている商品は、私が良いと思ったものです。それをお客様が見て、共感を呼び喜んでもらうために並べています。自分のお気に入りをお客様が気に入って使っていただく。それが何より嬉しいと思えるので、私がその橋渡しをできればと考えています。」
加登さんは、アメリカの大きなアンティークショップで商品を買い付けている。そこはまるで倉庫のように商品がずらりと並び、それを見るのが好きだという。
「お宝探しじゃないですが、気に入ったものを探すのが楽しくて好きなんです。だから、レリッシュの実店舗ももっと充実させて、訪れたお客様に楽しんでいただけるようにするのが、今後の希望です。」
アメリカのアンティークショップのように、お宝探しができるぐらいお気に入りの商品を取り揃えて、お客様をワクワクさせたい。加登さんの遊び心が垣間見える、エンターテーメントの要素を含んだ楽しい夢である。
加登さんはさらに構想を語る。
「食器をまとめてカフェに卸したり、雑貨のコーディネートの仕事もできればと考えています。あとは、岐阜に移住し、在庫を置く場所に余裕ができたので、椅子や籠などの大きめの家具や雑貨を、将来的に輸入したいです。」
前職で培ったインテリアの知見と経験を活かした、加登さんならではの構想だ。ギアを上げた加登さんに、自然と期待が膨らむ。
最後に、レリッシュの商品をどういった方に使ってもらいたいかをうかがった。
「基本的にお客様を選びませんが、敢えてということであれば、料理が好きな方やアメリカが好きな方に普段の食卓で使って欲しいです。アメリカのヴィンテージの食器や雑貨について、楽しくお話できたら嬉しいです。」
レリッシュは、アメリカンヴィンテージの食器や雑貨を通じて、お客様の食卓と暮らしを豊かに彩りを添える店舗だ。加登さんの目利きと情熱が詰まった商品選びが最大の強みである。アメリカ好きや料理好きの方はもちろん、日々の暮らしに楽しさを加えたい方は、訪れてみることをおすすめする。加登さんの橋渡しによって、あなただけの「お気に入り」が見つかるだろう。
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