Sweets&Music「あべまき茶屋」を訪ねてみた。
大正14年に建造された旧本家屋の蔵を改装した甘味処。「あべまき茶屋」店主・吉田広介様(よしだ ひろすけ)にお話を伺いに行った。
- 「あべまき茶屋」に込めた想い
- 店主のこだわり
- 常に新しいことにチャレンジし続ける
- これからの「あべまき茶屋」
①「あべまき茶屋」に込めた想い
創業から25年という「あべまき茶屋」について幾つか質問してみた。
(インタビュー時:2023年現在)
「あべまき」という聞き慣れない言葉が気になり、あべまき茶屋の名前の由来について聞いてみた。
「”あべまき”というのは、木の名前なんです。お店の前に立っている樹齢約150年の大きなくぬぎ科の木からもらったんです。秋にはたくさんのどんぐりの実をつけるんです。」と教えていただいた。
お店はもともと大正14年に建造された旧本家屋の蔵だったそう、それを店主の吉田さんが改装し現在の落ち着いた雰囲気の店舗となった。
創業のきっかけは、店主の大の甘いもの好きが高じて、25年程前に甘味処あべまき茶屋を開店したのだという。
「当時は周りにスイーツ店なんて全然なかったですよ。そもそもスイーツって言葉自体なかったからねー」と店主は笑ってみせた。
「だから、当時は凄く珍しかったですよ。」と話してくれた。
②店主のこだわり
実際にあべまき茶屋名物の宇治抹茶パフェをいただいた。
抹茶の香りがとてもよく、口に含むと甘すぎない抹茶のアイスクリームと、濃い抹茶の風味が感じられた。
“うちでしか出せない味”にこだわり、お店で使用している抹茶は京都の宇治からわざわざ取り寄せているそう。
「宇治抹茶だから結構高いんですけどね。」と笑い飛ばした。
「まーでも、ちょっと手の込んだ事がやりたかったのですよ、それに昔から人とは違う事がしたかったんです。」と話してくれた。
“自分にしかできないことをやり続ける”これが、お客様から長く愛され続ける秘訣なのかもしれない。
「あべまき茶屋」では、SNSなどでの情報発信にも力を入れているそうだ。
最近では、SNSを見て濃厚でしっかりとした抹茶感を求めて来店されるお客様が多くいらっしゃる、
しかし、創業時はSNSなど一切ない時代。
当時は、あべまき茶屋の代名詞である、濃い抹茶感に戸惑い
「思ってたのと違う。苦くて食べれない!」なんてことを言われたこともあったそうだ。
③常に新しいことにチャレンジし続ける
創業から今まで、長く続ける秘訣があるのか聞いてみた、
「人それぞれだと思うけど、自分は普通のこと・みんなと同じこと・自分がつまらないと感じることをやってこなかった」
常に”どうしたらもっと良くなるか” “もっと楽しいことがしたい”と考えているそうだ。
その考え通り、甘味処としては、かなり珍しく音楽制作も行なっている。
“音楽が好き”から始めたこの活動。
ユニット名は、『あべまき&アソシエイツ』アソシエイツという言葉には、仲間達という意味が込められているそう。
最近は、吉田さん本人が歌も歌っていらっしゃるそうで、
「最近は誰も歌ってくれないから自分で歌ってるよー」と笑い飛ばしていた。
現在までに30ほどの楽曲が制作されている。
「楽曲の販売はしてるけど、単価が低いから全然儲かんないよ。でも何かが繋がればね!」と教えてくれた。
25年間続けるって大変だと思うのですが、途中で辞めようかとは思わなかったんですか?と質問した。
すると、先ほどまでのにこやかな笑顔が消え、真剣な眼差しで話してくれた。
「仕事ってボランティアじゃないから利益は必要ですよね。でも利益だけを求めていたら続けられない。楽しめないと!」
「生きるために働くなら楽しいほうがいいじゃないかなって」と話してくれた。
この話を伺い、私も”こんな風に思いながら仕事がしたい”と心から思った。
④これからの「あべまき茶屋」
最後に今後のやりたいことや夢はありますか?と尋ねてみた。
「そんなに大きな目標はないんだけど、これからも”続けていく”それから自分たちの”好き”をやり続けたいし、できれば楽曲もたくさんの人に聞いてもらえたらいいなーと思う。けど、まだまだ今からって感じ。」
と話してくれた。
取材中「凄いです、尊敬します!」などと伝えると
「いやいや全然凄くないよ〜。一言で言うと自分勝手なんです。」と謙遜する謙虚な姿勢がとても印象的な店主・吉田 広介さんだった。
今回「あべまき茶屋」を取材し、長く続けるためには
“変わらないこだわり、そして、変わる事を恐れないチャレンジ精神”が必要なのだと知る機会をいただいた。
今後も落ち着いたレトロモダンな空間に店主・吉田さんのこだわりが光る抹茶スイーツとお客様の笑みがこぼれる情景を想像しながら「あべまき茶屋」を後にした。