飲食業
岐阜市

祖父の海苔を兄弟で紡ぐ「のり手巻きsendou〜千道〜」を訪ねてみた。

祖父の海苔を兄弟で紡ぐ「のり手巻きsendou〜千道〜」を訪ねてみた。
TOM
TOM
手巻き寿司って簡単そうに見えて、意外と奥が深いんだよね。
SARA
SARA
そうね、巻き方ひとつで食べやすさが全然違うわよね。
TOM
TOM
僕は不器用だから巻かずに、そのまま食べることにしたんだ〜!
SARA
SARA
それはもう手巻き寿司とは言わないわよ・・・
この記事は約7分で読めます。
岐阜市にある「のり手巻きsendou〜千道〜」をご存知だろうか。
お祖父様が焼き上げた海苔を使った新感覚の手巻き寿司専門店だ。今回は、代表の伊藤 渉(いとう わたる)さんにお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • こだわりの海苔を使った手巻き寿司
  • ポイントは兄弟それぞれの強み
  • 愛知と岐阜を繋ぐ海苔
  • 知名度アップの秘策はSNSと常連客!
  • 岐阜の海苔屋といえば!を目指して

①こだわりの海苔を使った手巻き寿司

 

2024年11月8日にオープンを迎えた「のり手巻きsendou〜千道〜」は、兄弟が営む手巻き寿司専門店である。

 

伊藤さんが経営を、お兄様が料理を主に担当し、営業を行なっている。この店の最大の特徴は海苔だ。愛知県で海苔屋を営むお祖父様が加工した、上質で新鮮な海苔を使用し、手巻き寿司の奥深さを追求している。

 

海苔は採れる時期や加工する職人、産地によっても味や風味が変わる奥深いものなんです。当店では、海苔屋ならではの視点で手巻き寿司を楽しんでいただこうと、市場に出回らない希少価値の高い海苔を提供するなど、他にはないサービスを展開しています。

 

ここまで海苔にこだわる手巻き寿司屋は全国的にも珍しく、伊藤さんもその独自性に自信を持っている。

 

また、手巻き寿司の具材である海鮮も特別なルートを開拓し、名古屋の柳橋市場から産地直送で仕入れている。中には、東京の料亭で提供される高級食材を譲り受けることもあり、新鮮で良質な海産物を味わうことできるのが特徴だ。

 

「おすすめは、2種類の海苔が楽しめる『手巻きランチセット』です。海鮮や野菜など数種類の具材が楽しめ、ご飯の量はお好みに合わせて選べるので、老若男女問わずご満足いただけるボリュームです。お客様ご自身で巻いて召し上がっていただくスタイルなので、海苔の風味とともにオリジナルの手巻き寿司を楽しんでいただけます。」

 

また、フレンチトースト専門店で働いていたお兄様の経験を活かし、カフェとしても営業を行なっており、フレンチトーストやチョコレートなどのスイーツも手作りで提供している。

 

「最近は、海苔を使ったスイーツ作りにも挑戦しています。今は、試作品として『あおさのカヌレ』を開発中です。」

 

店舗の特徴である「海苔」をキーワードとし、アイデア豊かに、新しい楽しみ方を提案している。

 

店内には、絵画やドライフラワーが飾られ、一般的な寿司屋のイメージとは異なる、オシャレで可愛らしい雰囲気が演出されている。

 

「この内装は、ボタニカルアートのアーティストである母にプロデュースしてもらいました。店内の雰囲気に合わせて、手作りのランチョンマットやコースターを用意するなど、細部までこだわっています。お客様からも好評で、特に女性のお客様から『可愛い』と褒めていただくことが多いです。

 

お店の内装もご家族と共に作り上げたこだわりの空間である。「のり手巻きsendou〜千道〜」は、ボタニカルアートのアーティストであるお母様が手掛けたオシャレな空間で、お祖父様の海苔屋から仕入れた上質な海苔を使用した手巻き寿司が楽しめる唯一無二の手巻き寿司専門店だ。

 

②ポイントは兄弟それぞれの強み

 

「のり手巻きsendou〜千道〜」を創業したきっかけは、お兄様の夢と伊藤さんの夢が、タイミング良く重なったからであった。

 

「兄は様々な飲食店で積み上げたノウハウを持っており、私は企業のバックオフィス業務に長年携わってきた経験がありました。お互いの強みを活かせば、より良いものが出来ると考え、兄弟での創業を決めました。」

 

お兄様は長年飲食業界に勤め、これまでダイニングバー、フレンチトースト専門店など幅広いお店で経験を積んできた。また、お兄様は食材そのものにも興味を持ちお祖父様の海苔屋で2年間修行していた経験もあるため、海苔の加工にも精通している。

 

「修行を終えた兄、『次は自分のお店を持ちたい』と言っているのを聞いて私から話をして提案しました。」

 

伊藤さんの前職はITソリューションの商社で、総務や人事、経理領域まで幅広く行う、バックオフィス業務に就いていた。

 

「会社員時代、『自分が経営者なら違う判断をするのに』と、意思決定できないもどかしさを感じることがありました。長年、企業のバックオフィス業務に携わり、内側から支えてきた経験が経営に活かせると考え、お店を開くことを決意しました。」

 

伊藤さんの出身は愛知県であるが、前職で岐阜の企業に勤め、岐阜市に住んでいたことや、岐阜市が飲食店にとって良い環境であったこともあり、岐阜でお店をオープンすることに決めた。

 

飲食業界で豊富な経験を持つお兄様と、企業のバックオフィス業務に長けた伊藤さん。異なるキャリアを歩んできた二人夢と経験が重なり合い、新たな挑戦が始まっている。

 

③愛知と岐阜を繋ぐ海苔

 

「のり手巻きsendou〜千道〜」で提供する海苔は、愛知県田原市にある「海苔の店 杉浦水産」から仕入れている。そう、このお店こそが、伊藤さんのお祖父様が営む海苔問屋である。

 

杉浦水産は、三河湾で採れた新海苔を産地直送で仕入れ、加工している。長年、地元で愛される有名な海苔問屋だ。味・香り・色のすべてが一級品として高く評価されている。

 

「祖父の会社では、採れたての海苔の加工を行っています。海苔にも競りがあり、落札した海苔を加工して焼き海苔にするんです。祖父の海苔は地元では有名ですが、この海苔の奥深さをもっと多くの方に広めたいと考えています。」

 

海苔本来の味を伝えるため、「のり手巻きsendou〜千道〜」では、希少価値の高い「幻の海苔」を炙って食べるメニュー提供している。これはお祖父様の地元に根付く食文化からヒントを得たものである。

 

愛知県田原市では『海苔を炙る』光景が日常です。先日、ご来店された田原市出身のお客様も子供の頃から海苔を炙って食べていたそうです。祖父の店もご存知で、『杉浦水産が岐阜にも出店した!』と懐かしさを求めてご来店され、会話も弾みました

 

「海苔を炙る」文化が、愛知と岐阜を繋ぐ、地域交流の架け橋となっている。三河湾で採れた焼きたての新海苔の味は、世代を超えて人々の記憶に生き続けているのだ。

 

愛知から岐阜へ、海苔を通じて広がる交流。祖父から孫へと受け継がれる想いは、新たな出会いを紡ぎ続けている。

 

④知名度アップの秘策はSNSと常連客!

 

伊藤さんが現在の課題として挙げるのは、知名度の向上である。実際に、お客様との会話の中で、認知度の低さを痛感する場面が多いという。

 

「当店では安全を考慮して、お客様の目の前で海苔を炙ります。その際、自然と会話が生まれるのですが、当店を知った経緯をお聞きすると、『いつの間にかできていた』『今日まで知らなかった』といった声が多く、まだまだ認知が足りていないと実感しています。」

 

この課題を打開するため、現在はInstagramでの発信を強化。その効果が少しずつ見え始めていると、伊藤さんは手応えを感じている。

 

「インフルエンサーの方々が来店して、当店のコンセプトが珍しいと評価してくださいました。その影響で、『SNSを見て来た』というお客様が増え、今では来店の大半を占めるまでになっています。」

 

また、知名度向上の取り組みとして、口コミの拡散にも注目。特に、常連のお客様のネットワークを活かし、新たな広がりを生み出すことに力を入れている。その試みの一つが、日本酒持ち込み企画だ。

 

「この企画は、常連のお客様からの要望をきっかけに実現させました。産地の異なる9種類の海苔を用意して、違いを味わっていただきながら、日本酒のおつまみとしても楽しめる内容です。好評だったので、第二弾も開催予定です。

 

伊藤さんは、お客様とのコミュニケーションを大切にしており、一人ひとりのお客様と近い距離で関わりを持っている。その結果、常連のお客様が着実に増え、口コミの輪が広がっている。

 

「私はいつも、成功するために失敗を恐れず、とにかく前に進み挑戦することを大切にしています。

 

SNSでの情報発信とお客様との関係構築で知名度向上に挑む。こうした伊藤さんの活動は着実に実を結び、最近では、地上波TVの東海3県のマチの〝自慢〟を紹介するコーナーで取り上げられるなど、メディアでも注目を浴びている。

 

SNSでの拡散と、お客様との密なコミュニケーションが相乗効果を生み、確実に「のり手巻きsendou〜千道〜」の名前を広めている。失敗を恐れない挑戦が、この店の未来を拓いていく。

 

⑤岐阜の海苔屋といえば!を目指して

 

伊藤さんは、お祖父様の海苔に並々ならぬ想いを抱えている。

 

「採れたての新海苔を使って、職人技で焼き上げた海苔にこだわりを持って提供しています。海苔の味わいは奥深く、祖父の海苔の味をもっと多くの方に知ってほしい。そして、『本物の海苔の違い』を実感していただきたい。そんな想いとこだわりを持って提供しています。」

 

一般的に流通している海苔と、お祖父様の海苔の大きな違いは、「焼きたての鮮度」にある、と伊藤さんは語る。

 

「市場で販売されている海苔の多くは、焼いてからかなり時間が経っています。一方、当店の場合は、焼いてから5日以内の海苔を提供しています。焼きたての新鮮な海苔だからこそ、パリパリとした歯切れの良い食感や、濃厚な味わいを楽しんでいただけるのです。」

 

実際に来店されたお客様からは「人生で一番美味しい海苔」と絶賛されることも多く、その評価の高さがうかがえる。また伊藤さんは、今後の展望についても明かしてくれた。

 

「岐阜には海苔屋がないため、当店では海苔の販売も行っています。地域に根ざしたお店を目指し、『岐阜の海苔屋といえば、のり手巻きsendou〜千道〜』と言われる存在になれるよう、認知度を高めていきます。」

 

「のり手巻きsendou〜千道〜」は、お互いの強みを活かしながら兄弟で営む手巻き寿司専門店だ。

 

三河湾の採れたての海苔を、お祖父様が職人技で焼いて仕上げたこだわりのものを提供するという、本物の味と文化を岐阜に伝承する新しい試みを行っている。

 

本物の海苔の味を体験したい方は、この機会に足を運んでみることをおすすめする。きっと、海苔の奥深さに驚かされるだろう。

 

SNSで記事をシェアしよう

RECOMMEND

記事一覧へ戻る

Instagram