ドライフラワーとヒンメリで出会いを紡ぐ「麦わら」を訪ねてみた。





四季折々の新鮮なドライフラワーを提供し、お花を通じてインテリアのプロデュースまで行っている。今回は、店主の遠藤 めぐみ(えんどう めぐみ)さんにお話をうかがった。
- ドライフラワー×ヒンメリ!親子で紡ぐ麦わら
- 四季を彩るオリジナルのドライフラワーを提供
- 麦わらの強みはトータルプロデュース力
- 今度の課題は「認知度の向上」
- 手作りへの挑戦を応援したい
①ドライフラワー×ヒンメリ!親子で紡ぐ麦わら
遠藤さんが手掛ける「麦わら」は、ドライフラワー専門店として、2019年に創業した。遠藤さんはもともと家具メーカーで住宅に関わる仕事をしていたが、夫の転勤を機に退職。一方で、将来お店を開きたいという気持ちを抱いていたという。
「もともと、家具や雑貨をはじめインテリア全般が好きだったので、退職後も家の中を彩る仕事に関わりたいと考えていました。母が手先が器用で、昔から洋服や刺繍、トールペインティング(家具などに絵を描くクラフト)など、様々な作品を創作していました。そんな環境の中で育ったので、母の影響が大きかったです。私自身も昔からモノづくりが好きで、ドライフラワーも最初は趣味として始めました。」
遠藤さんはもともと花を使った“リース作り”が好きで、中でも華やかで長持ちするドライフラワーに惹かれたという。
「ドライフラワーは、本やネットを参考に独学で習得しました。また、ドライフラワーにしている花の多くは、母が作ってくれています。」
麦わらの店舗は遠藤さんの自宅に隣接している。真っ白な壁面に木目のドアが設置され、シンプルでありながらセンスの良さと温もりを感じる外観である。
「お店のスペースは、家を建てるときに予め作ってありました。開店を決めるまでは、物置になっていたので、開店を決意してから、家族で壁にペンキを塗ったり、照明を付けたりして、いちから手作りで完成させました。」
店内に入ると、色とりどりのドライフラワーや、ヒンメリ、雑貨などがお出迎え。まるで北欧の家にいるような、オシャレな雰囲気を楽しむことができる。
「当店は、ドライフラワーがメインですが、母が手掛けるヒンメリも置いています。お店の名前である『麦わら』もヒンメリの素材からとっています。」
ヒンメリはフィンランド発祥の手工芸品。寒くて冬が長い北欧では、家の中にこもって、家族でヒンメリを作って飾るのが伝統で、インテリアとして愛されている。ライ麦の茎を原料として、それを幾何学模様に形成し、糸に通して吊るして飾る。関節部で曲がる仕様になっており、ユニークさと知的さが感じられる。
ヒンメリの制作には数学的な要素も加わり、緻密で複雑な工程が求められるため、海外ではCADソフトを使って制作する方もいるくらいだ。遠藤さんのお母様は、本やネットで作り方を学び、長年の経験を生かして作品づくりを続けているという。
「岐阜で『ヒンメリ専門店』は聞きませんし、母も趣味として極めていたので、せっかくだからドライフラワーと一緒にヒンメリも置こうと考えました。そのため、店のロゴにも『dried flower・himmeli』と書いています。」
インテリアへのこだわりとお母様への想いから生まれた麦わら。ドライフラワーとヒンメリが創り上げる空間で、親子の想いが花開き続けている。


②四季を彩るオリジナルのドライフラワーを提供
麦わらの特徴は、四季に合わせた新鮮なドライフラワーを提供している点だ。
「ドライフラワーにもシーズンがあり、花の場合は色落ちするので2〜3ヶ月で入れ替えをしています。一方で、コットンフラワーやパンパスグラスなどは長持ちするので、1〜2年置くものもあります。店頭には、常に最適な状態のものだけを置くことを心がけています。」
店頭に並ぶほとんどのドライフラワーが、遠藤さん自身で生花を仕入れ乾燥させた、手作りのものになっている。こうして作られたドライフラワーは、1本単位での販売はもちろん、リースやスワッグ、バスケットでのアレンジメントなど、様々な形での販売もされている。
ドライフラワーの寿命について、お客様によく尋ねられるが、最終的にはお客様にお任せしていると、遠藤さんは話す。
「ドライフラワーの楽しみ方は人それぞれなんです。『花が色落ちするのもアンティークのようで楽しい』と感じられる方もいらっしゃり、その場合は4〜5年経っても楽しむことができます。」
また、麦わらではドライフラワーのオーダーメイドでの依頼も受け付けている。
「オーダーメイドは、ご予算やご希望の色やイメージを聞いてお作りします。以前いただいたオーダーでは、ご家族のイメージカラーがあってその色でリースをご希望されたこともあり、難しかったですが心を込めてお作りしました。いろんなオーダーをお受けすることで自分の枠が少しずつ広がっていくような気がします。」
過去には、お店のオープン記念のリースや、100歳のお祝いとして紅白を基調としたものなどの依頼を受けたという。生花よりも長持ちする点が魅力で、プレゼント用として希望されるお客様が多いらしい。来店されるお客様は、30〜50代の女性が多く、コロナを境に、家の中を落ち着ける癒しの空間にしたいという方が増えているようだ。
「もともとお花やドライフラワーが好きな方は季節ごとに来てくださいますし、母の日やクリスマスなどの時期には、『イベントに合わせて装飾を楽しみたい』とより多くのお客様にお買い求めいただいています。」
ご自宅用やプレゼント用としてお買い求めになるお客様以外に、経営者のお客様やハンドメイド作家のお客様などもいらっしゃるという。
「フォトスタジオを経営されている方がお店の装飾として使ってくださったり、ハンドメイド作家さんが、レジンアクセサリーやキャンドルなどの作品の素材としてドライフラワーをお求めになったりするケースもあります。」
四季折々の新鮮なドライフラワーと豊富なアレンジメント。自宅用のインテリアや大切な人へのプレゼントまで、暮らしに寄り添う麦わらのお花たちは、癒やしの空間づくりに華を添えている。


③麦わらの強みはトータルプロデュース力
麦わらは、単なるドライフラワー専門店ではない。麦わらの強みは、お花を通じた遠藤さんのトータルプロデュースであり、インテリアのプロとして信頼を得ている。
「ご自宅の部屋やお店の写真を持参して、雰囲気に合うドライフラワーを作ってほしいというお客様もいらっしゃいますし、写真を見て壁の色に似合うお花を提案することもあります。」
中には、お客様から自宅にもう少しドライフラワーを置きたいと相談を受けた時に、遠藤さんの視点では現状のままが良いと感じる場合もあり、その際はインテリアのプロとしてお客様に寄り添ったアドバイスをするという。
「お店としては売上になったほうがよいのですが(笑)、写真を見せていただいてインテリアとのバランスを考えて無理に置かない方が良いと思う時は正直に提案します。」
このようなお客様視点で寄り添う姿勢が、多くの信頼を得ている。その信頼は厚く、中には花瓶を持参して遠藤さんにお任せで依頼するお客様もいるという。
「その方は、私が何本か選んで装飾したものを、そのまま購入してくださいます。花の首が垂れたり色が落ちたりすると、また花瓶ごと持参されます。その際は、以前購入された花の状態を判断して、選別した上で、必要な分追加装飾をします。そういった入れ替えを、私にすべてお任せいただくことも、お客様からの信頼を感じられて嬉しいです。」
遠藤さんにとって麦わらは、お客様との出会いによる繋がりの場所にもなっている。
「私はどちらかというと人見知りで、誰とでもすぐにお話しできるタイプではないんですが、このお店を通じてたくさんの新しい出会いが生まれています。また、昔の友達や知人、会社の元同僚など、疎遠になってしまった方との再会の場にもなっていて、そんな時はお店を開いて良かったなぁと思います。」
ドライフラワーを通じて生まれた人との繋がりを大切にする遠藤さん。一人ひとりのインテリアに真摯に向き合う姿勢が、お客様からの絶大な信頼を集めている。

④今度の課題は「認知度の向上」
遠藤さんは、麦わらの課題として認知度の向上を掲げている。これまで表立った宣伝や広告をしていないこともあり、未だに近所の方からも「麦わらの存在を最近知った」という声も多いという。
「これまでは、子供が小さく育児の時間を優先するため、月に10日程度の営業日数に留めていました。ただ、子供も大きくなり育児も一定の目処が立ったので、今後は営業日を増やす予定です。ワークショップの開催やマルシェへの出店も積極的に行いたいです。」
実際に、去年から開催しているワークショップでは、お客様の反応を直接見ることができ、手応えを感じているという。
「母の日のワークショップでは、バスケットの中に、ドライフラワーをご自分の感性で挿していっていただきました。皆さんついつい集中しすぎて無言になりつつも、思い思いに楽しんでいただき好評でした。自分用はもちろん、ご家族へのプレゼントにされたり、体験自体をプレゼントとされたり、お客様にとっても、私にとってもいい機会になりました。」
今後も季節ごとのお花の仕入れや、母の日などのイベントに合わせて、ワークショップを開催する予定だ。また、イベント出店も果たし、多くの方に知ってもらえるきっかけになったと、遠藤さんは振り返る。
「各務原の『マーケット日和』というイベントに、妹が揖斐川町で経営するカフェ 『ノタリ』とコラボする形で出店しました。出店経験が豊富な妹からノウハウを学べましたし、イベント自体が大盛況だったことも追い風となり、用意したクリスマスのリースも完売しました。」
ワークショップの開催やイベント参加に確かな手応えを実感し、今後も続けていくことで、認知度の向上に繋げていきたい、と遠藤さんは意気込みを語る。
⑤手作りへの挑戦を応援したい
麦わらの今後の展望について、遠藤さんに話をうかがった。
「ご自身でリースやスワッグを作りたい、という方をサポートする教室を開きたいです。去年、少人数向けのワークショップを開催する中で、自分で作ってみたいと思っていた方が想像以上に多いことに気付いたんです。一からリースを作るとなると、材料や道具を揃えるだけで一苦労なので、そういった方をお手伝いできる場を作りたいと考えています。」
ワークショップ開催を通じて、参加者のニーズを掴むことができた。まだ構想段階ではあるが、実現に向けて前向きに検討している。また、遠藤さん自身の経験から、子どもも参加できるワークショップも開催したいという。
「去年は自宅で、松ぼっくりのクリスマスツリーを、子どもと一緒に作りました。とても喜んでいたので、子どもも参加できる内容のワークショップを開催するのも楽しいだろうなと考えています。店舗を拡大したいなどの考えはなく、作る楽しみと地域の人との繋がりを大切にしながら、これからも続けていきたいです。」
2019年の創業以来、ドライフラワーとヒンメリを通じて人との繋がりを紡いできた。麦わらの特徴は、四季折々の新鮮なドライフラワーを提供し、インテリアのトータルプロデュースにより多くの信頼を集めていることだ。
自分へのご褒美や大切な人へのプレゼントとして、麦わらのドライフラワーを選んではいかがだろうか。遠藤さんが、唯一無二の癒しの空間を提案してくれるはずだ。
