手仕事雑貨の魅力に出会える「QQ実験所」を訪ねてみた。





日本はもちろん、世界各地の手仕事によるアイテムから食品類まで、日常を彩るさまざまな雑貨類を幅広く取り扱っている。今回は、ご夫婦で経営する片山 輝(かたやま あきら)さん、千鶴(ちづる)さん夫妻にお話をうかがった。
- 実験するように、やりたいことを
- 転機となったコロナ禍
- 手仕事の魅力とは
- 触れる機会を、より多くの人に
①実験するように、やりたいことを
岐阜市長良福光に位置し、地域の歴史的な風情を感じさせる町並みの中に佇む「QQ実験所」。
素朴で温かみのある雰囲気の店内には、日本はもちろん、世界各地の職人や町工場が丁寧に作った日用品のほか、揖斐で作られるよもぎ茶やほうじ茶、
一度聞いたら忘れられないユニークな店名は、台湾で“モチモチした食感”を表す言葉から取られ、これからどんなお店になっていくか分からない、何でも試してみるという自由な発想を表現しているのだそう。
「以前、台湾に訪れた際に“QQ”という言葉を知り、それがすごく気に入って、そのまま店名にしました。自分たちのやりたいことは決まっているんですが、最終的にどうなるかはわからない。有名なジュエリーブランドも最初は輸入雑貨の販売からスタートして、最終的に現在の形になっているという話をきき、とりあえずやりたいことから始めて、いろいろ試しながらやっていこうという意味を込めて“実験所”にしたんです。」
ご夫妻の自由な発想が可能性やできることの枠を広げているのであろうと感じた。


②転機となったコロナ禍
以前は東京の会社で勤務していた二人だが、新型コロナウイルスの流行により東京での生活に疑問を感じ、2021年12月、千鶴さんの故郷である岐阜市への移住を決意。半年後の2022年5月に「QQ実験所」をオープンした。
「以前からいつか独立したいなと思ってはいましたが、コロナ禍で自分たちの生活を見つめ直したことで、より現実的になりました。岐阜はちょうど日本の真ん中で、東にも西にも行きやすいですし、タイミング良くちょうどこの物件が空くと聞いて、見に来てここでやろうと決めました。」
全てのタイミングが合い、話が進んでいったのだと教えてくれた。
独立・開業前後での変化についてうかがってみると、
「以前は、荒物(あらもの)と呼ばれるものを全国に卸す会社に勤めていたので、やっていること自体はあまり変わっていないです。ただ、全国に卸す仕事だったので、やはりある程度の数が必要になったんですね。良いものを見つけても『商品が5個しかないなら取り扱えないから、諦めよう』『この商品は最低でも100個ないと卸せないから難しいね』という事が結構ありました。今は、自分たちが良いと思ったものや気に入ったものがあれば、1個でも仕入れられるので、その辺りは前職時代と大きく違うところで、非常に面白いですね。」
ここ数年、コロナによる規制が緩和され、ようやく仕入れのための海外渡航ができるようになったといい、昨年はウズベキスタンとベトナム、今年は台湾と東ティモールへ出向いた。
「仕入れ先を選ぶ基準は“直感”と“ご縁”ですね。前職時代からお世話になっている方に同行させていただいたり、現地の方を紹介していただいたり、素敵なご縁がたくさんあって、非常にありがたいです。」
これまで多くの国や地域に訪れたことのある二人だが、現地に出向くことで、より手仕事の魅力を実感するのだという。
「前職では日本の他に、アジアを中心にタイ、ベトナム、ラオス、ネパールなどで手仕事の物を探したり、逆に海外に売るために展示会に出たりしました。手仕事のものを求める人が世界中にこんなにいるんだな、職人さんがこんなにいるんだなということがわかりました。自分たちのお店を始めてからも現地へ行くことで、職人さんや販売店の方たちとの言葉でのコミュニケーションは難しくても、空気感みたいなものでなんとなく伝わるので、やっぱり現地に出向いて見る、話すってすごく大事だなと思いましたね。もちろん全てを見れたわけではないので、また機会があれば行きたいです。」
日本にいても海外の手仕事に触れることはできるが、自分自身の目で見て、体感するからこそ、より良いものを選定し、お客様に届けることができるのだ。


③手仕事の魅力
「手仕事」とは、人間の手で行われる仕事や作業を指し、陶芸や織物などの伝統的な工芸品、アート作品などが該当する。
これらは、職人の技術や感性が反映されるため、同じものが二つとない独自性を持つことが特徴だ。また、地域や文化の歴史が色濃く反映されることもあり、手仕事はその土地のアイデンティティを守る役割も果たしている。
「国の経済力が上がるにつれて、手仕事のような時間がかかるものってどんどん減っていく傾向にあるんですよね。日本でも、昔は味噌や醤油も手作りだったのが、現代は手軽に買えるようになったことでだんだん手作りは減っていっています。海外も同様で、今は都会へ出て働いた方が稼げるので、わざわざ時間をかけて手作りのカゴを作ったりしないんですよね。こういうのって一度途切れてしまうと、それをまた取り戻すのってすごく時間がかかるんです。だからこそ人間の手仕事ってすごく尊いなと思うし、いろんな人に見てもらって、共感してもらえると嬉しいです。」
二人とも、仕事を通して少しずつ手仕事の魅力に惹かれていき、自分たちでお店を開くまでになったのだという。
「知れば知るほど面白いし、好きになります。観光客向けに作られているものではなく、できるだけシンプルな、実際に現地で使われている生活道具だったり、現地の素材が使われているものや、昔から作り続けられているものなど、歴史や伝統のあるものにより惹かれますね。」
「QQ実験所」では、さまざまな国や地域の歴史や伝統、職人の温かみを直に感じられる、二人のこだわりが詰まったアイテムに出会うことができる。
④触れる機会を、より多くの人に
日本各地、タイ、ベトナム、ラオス、ネパール、台湾などから仕入れたアイテムのほか、岐阜県産の材料で作られた工芸品、お茶などや、日本各地の調味料などを取り揃えており、訪れるたびに新たな発見や感動を提供してくれる。
取材中、ご厚意で、店頭でも販売されている“よもぎ茶”をいただいた。リピーターも多い人気商品で、お二人もよもぎの生産のお手伝いをしているのだそう。
「こういうのも手仕事と同じで、放っておいたらどんどん減っていって、いずれなくなってしまうと思います。体のことを気にされる方とか、これを目当てに来てくださる方も多いですし、このままなくなってしまうのはもったいないので、今後も力を入れてやっていきたいと思っています。」
将来的には、仕入れだけでなく生産から携わるのが夢だと話してくれた。
「ここに訪れるお客様は、SNSやインターネットの情報を見て来てくださる方がほとんどです。手仕事のものが好きな方、旅行好きの方が多い印象ですね。ありがたいことに、『近くに寄ったので』とか、『帰省してきたので』と言って県外から来てくださる方も多いです。」
「QQ実験所」では、手仕事の魅力に触れられるワークショップや、災害復興支援を目的としたチャリティーイベント、ポップアップショップなども開催している。
過去には、タフティングというタペストリーラグが制作できるワークショップや、能登半島地震被害復興支援のためのチャリティーイベントが開かれ、どちらも多くの方に共感をしていただいた。
「おもちゃやお皿を作ったり、かごなどを作ったり、子どもから大人まで楽しめる内容になっています。スペースがそこまで広くないのですぐに埋まってしまうんですが、毎回すごく好評なので、今年もいろいろ計画したいと思っています」。
インタビューの最後に、2人の夢や目標をうかがってみた。
「これからも日本各地や海外に直接行き自分たちで仕入れて販
江戸時代より続く金華山と長良川の美しい景色は、多くの観光客を引き寄せる魅力的なスポットだが、そんな景観の一角に佇む「QQ実験所」は、訪れる人々に新しい発見を提供している。
観光地としても名高い長良川を散策する楽しみだけでなく、手仕事の魅力に触れ、体験し、理解を深める場所として、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。


詳しい情報はこちら