ブライダル業界に革新を起こす「ウェディングイノベーション」を訪ねてみた。
- 起業までの歩み
- 自己探求した一年、そして起業
- 結婚式の新しい形と実現力
- コロナでの試行錯誤
- 働く女性の新しい形
①起業までの歩み
彼女に出会ってまずその元気な声と愛嬌に魅了された。ウェディングイノベーション・代表の清水 莉沙(しみず りさ)さん。「心が震えるほどの感動を」をコンセプトに、ブライダル業界に革新を起こしたいと奮起して起業し、今年で9年目を迎えるそうだ。(取材時:2023年9月)
清水さんは、ブライダル業界の異端児として一風変わった結婚式を世の中へ提供している。このコロナを乗り越え、長く愛されるウェディングイノベーションと、清水様の人柄、そしてその原動力についてを聞いてみた。
愛知県で生まれた清水さん。学生の時からイベントが好きだったと話す。生徒会や、文化祭、運動会などのイベントには昔から積極的に参加をするのが当たり前だった。
「常に自分が巻き込んでいくタイプでした。周りの友人もイベントでリーダーをやりたい人ばかりでした。」
環境が今の清水さんの考え方や行動力を作ったのは間違いない。周りの友人も消極的な人は少なかったそうだ。ただ、ダントツで一匹狼タイプであり、マイペースだったと話す。また、小学校の先生は、「目的を明確」にする方で、当時から何の為にするのかを教えてくれたそうで、それも清水さんの中に今なお根付いている。
幼少期より、結婚式のプランナーを夢見る清水さん。専門学校でプランナーの仕事を専攻し、念願が叶い式場に務めることとなる。同期、周りのみんなのやる気もある。支配人は人望もあり、尊敬できる。恵まれた環境の中で、清水さんはプランナーとしての力を蓄えて行った。
②自己探求した一年、そして起業
プランナーとして勤めて6年が過ぎた頃、清水さんに自身に結婚の転機が訪れる。務めていた式場で、自分の願いを全て叶えてもらえる満足のいく挙式だったそうだ。それから程なくして、専業主婦としての一年を過ごすこととなる。
「このままでいいのかと悩みました。自分と向き合う一年でした。」
お買い物、洗濯、掃除、当たり前の専業主婦の中で自分はこのままでいいのかと将来のことを真剣に考えた時、清水さんは「私は仕事に復帰したい」という気持ちが強くなった。
式場にプランナーとして務めるか、独立するか色々と迷った結果、清水さんはプランナーとしての独立を決意する。その原動力は、業界をもっと良くしたいという強い想いであった。ただ、ブライダル業界の独立は皆が思うほど簡単なことではない。業界としては当時より”タブー”と言われたからである。そもそもプランナーは、結婚式場に入り提携している会社との折衝や仲介など、お客様の思い描くものを実現するプランを設計するのが仕事である。
清水さんが企業に際し、立ちはだかった大きな壁は幾つもある。
(1)フリーランスがまだまだ少ないこと
(2)実績がないこと
(3)女性の起業家に対しての偏見
今は当たり前になっているフリーランスのプランナーも当時は皆無であった。また、女性が独立するという上で実績もなければ、話にも応じてくれない。
「壁しかありませんでした。・・・ただ、絶対にうまくいく確信がありました。」
そう笑顔で話してくれた清水さん。
愛知で育った清水さんは、結婚を機に岐阜に移住する。
「生まれた所には何もなかったので、岐阜には引っかかるものばかりでした。長良川、岐阜城、鮎・・・この良さを客観的に感じたことも成功するビジョンに繋がりました。」
起業に際し、清水さんを突き動かしたのは、幼少期に培った目的を明確にし、どんな逆境でも突き進んでいく行動力であった。
③結婚式の新しい形と実現力
ウェディングイノベーションでは「心が震えるほどの感動を」をコンセプトのもと、式場も持ち込みも全て自由、いわゆる”完全オリジナルウェディング”というやり方を実現している。式場で行うという概念さえも覆し、”全てが完全にオーダーメイド”なのである。
当時は、奇をてらった結婚式のニーズはまだまだ少ない。「結婚式場で、大人数で、盛大に挙げる」というのが業界・時代の”当たり前”だった。そんな折、友人の紹介で一件の紹介の電話が鳴った。
「ビニールハウスで結婚式をやりたいという農家の方がいるんだけど・・・」
正にウェディングイノベーションにもってこいの結婚式の企画であった。勿論、結婚式場のように全ての環境が整っているわけではない。完全オリジナルウェディングでは、清水さんがプロデュースする。会場の折衝、料理から、照明から音楽まで。時には、ゲスト(来ていただく方々)の服装まで指定することもある。電気がない所で、どうやって照明を灯すのか。火気厳禁の場所でどうやって火を焚くのか。ここからがプランナー清水さんの本領発揮である。
結果、ウェディングイノベーションとしての初めての結婚式はメディアにも取り上げられて、一世を風靡する。そこからは依頼が殺到、”人と違うものをやりたい”という時代を超えたニーズを清水さんは捉えたのだ。
「常に完成度、そして質を大事にしています。もっとこうすればよかったと反省の繰り返しで、いつも悔しくて泣いています。」
その貪欲な姿勢には頭が下がる。常に原動力は、「絶対に成功するというビジョンを思い描き、そのための壁を乗り越えていくこと」だと語る。
「初めてのことばかりだからこそ、全部壁なんです。また壁きたなって壁が当たり前だから、何とも感じません。笑」
土地の良さを表現することも清水さんが大事にしているポイントだそうだ。過去、岐阜の鵜飼ミュージアム、キャンプ場、レストランなど、様々な所で交渉し、結婚式を行ってきた。
身近にあるからこそ、大事なものに気づかないと清水さんは語る。そういった風土や環境の本来の良さを引き出していくのも清水さんだからこそ大事にできる感性なのかもしれない。清水さんのこだわりは結婚式に溢れています。そして、新郎新婦の願いを第一優先に据えて、叶えるチームこそがウェディングイノベーションなのだろう。
④コロナでの試行錯誤
コロナはブライダル業界にも襲いかかった。式場の予約は全てキャンセル、延期。清水さんは頭を抱えた。
そんな折、考え出したのが「若菜式」というスタイルの結婚式であった。家族婚・少人数で行うスタイルの提案である。料理をその場で食べない(持って帰っていただく)、マスクを外さない、ケーキのカットだけを見せる。といった時代に合わせた様相の結婚式である。このスタイルもお客様に受けて、依頼が殺到。柔軟な対応がコロナを乗り切る一つのきっかけとなった。勿論“完全オリジナルウェディング”のコンセプトも変わらない。
時代に併せて順応することも、ウェディングイノベーションの魅力の一つなのだろう。
⑤働く女性の新しい形
「私が大事しているのは、お客様と一つの目標に迎えているか。そして、質を大事にしています。」
清水さんは、海外の作品(結婚式)も沢山見て、自社の参考にしていると語る。ハードとソフト両方の面を海外のものを参考にすることで、奇抜なアイデアが生まれるのだという。
「私が思い描くものを再現できるのは、スタッフと周りの方のおかげです。多くの人の力を借りているからこそ、世に出しても恥ずかしくない作品にしたい。」
清水さんは、結婚式を新郎新婦と一緒に作る”作品”と語る。こだわりがあるからこそ、常に日々研鑽しアップデートを重ねていく。
「誰でもいいからウェディングイノベーションに来てほしいと思っていません。一度きりの結婚式を一緒に最高の思い出にしていきたい。」
新郎新婦の二人らしさが出るのは大前提、そして、人と違うものを創ることも大前提。ただし、結婚式の本質は変わらない。これからも結婚式の新しい形、ブライダル業界に変革を起こす清水さんに目が離せない。
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