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地域の味と笑顔を守り続ける!「舟伏の里へおんせぇよぉ~」を訪ねてみた。

地域の味と笑顔を守り続ける!「舟伏の里へおんせぇよぉ~」を訪ねてみた。
TOM
TOM
僕、ついに『おんせぇよぉ~』の真の意味を理解したよ!これは僕の美貌を褒め称える最高の賛美の言葉だったんだ!
SARA
SARA
え?それは岐阜の方言で『いらっしゃい』という歓迎の挨拶よ。あなたの妄想とは関係ないわよ・・・
TOM
TOM
違うよ!『お』は『おお、なんて美しい』、『ん』は『んまぁ素敵』、『せぇ』は『世界一』、『よぉ』は『よくぞ生まれてきてくれた』の略なんだ!これは僕への愛の告白なんだよ!
SARA
SARA
どうしたら、そんな解釈になるのかしら・・・その解釈力を別の方向に使えばノーベル文学賞も夢じゃないわね。
この記事は約7分で読めます。
岐阜県山県市の山奥に、地元のおばあちゃんたちが営む温かな食堂があるのはご存知だろうか。
「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」は、2013年にオープンし、廃校となった小学校を活用して10年間営業。現在は古民家に移転し、地域に伝わる家庭料理を提供し続けている。今回は、スタッフの代表として山口晋一(やまぐち しんいち)様にお話を伺った。
今回のツムギポイント
  • 廃校活用で生まれた地域の交流拠点
  • 「場所づくり」への強い想い
  • おばあちゃんたちが主役の運営スタイル
  • 郷土料理で繋ぐ食文化の継承
  • 世代を超えて続く店を目指して

①廃校活用で生まれた地域の交流拠点

 

「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」の物語は、1997年に閉校した小学校から始まった。

 

しばらくは宿泊施設や体験活動の拠点として使われていたものの、常に誰かが来るような場所ではなかった。大きな変化が訪れたのは2013年頃。山口さんが集落支援員としてこの地域の現状を変えたいと活動を始めたことがきっかけとなる。

 

「当時、JAの女性部が発足して、都市と農村の交流をしようという流れになったんです。山菜採りや昔遊び、方言を学ぶ体験イベントなど、いろんな取り組みを通して、少しずつ人が来るようになったんです。次第に、イベントの時だけじゃなくて普段から人が集まれるような場所になったら良いという意見がで始めたんです。」

 

地域の人たちの誰でも来れるように「お店をやりたい」という気持ちと、市が進めていた過疎地域対策の交付金制度が合致。その後、採択が決定し自治会長、地域住民、行政、大学、NPO法人など沢山の方に協力してもらい「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」が正式にオープンした。

 

「学校が廃校になって空いているから、そこを使ってほしいという話があって、201310月にオープンすることができました。」

 

行き止まりの土地にある小学校は、卒業生にとって特別な場所だった。お店ができたことで、同級生に会うきっかけが生まれ、懐かしい校舎に足を運ぶ人が増えていった。

 

10年間、廃校を舞台に地域の交流拠点として機能してきたが、水道管の老朽化により2023年に古民家へ移転。それでも、その精神は変わらず受け継がれている。

 

②「場所づくり」への強い想い

 

山口さんに、この店のコンセプトを尋ねると、明確な答えが返ってきた。

 

「私たちは、“地域内外の交流の場を作りたい”という想いから始まっているんです。だから、地元の人が活躍できたり、集まれる場所だったり、食文化を次の世代に継承していける場所だったり、働く場所としても機能するような場所づくりをしたいと考えました。」

 

単に料理を提供するだけではない。地域の社交場として、人々が集い、語らい、つながる場所。それが「おんせぇよぉ~」の目指す姿だった。

 

店名に込められた「おんせぇよぉ~」は、「いらっしゃい」を意味する地元の方言。ようこそ、よく来たねという温かな言葉が、この場所の本質を表している。

 

「地元の方がやりたいと言ったところから始まっているのが大きいです。地域の方々からも、協力的な雰囲気で進められました。」

 

山口さんは、あくまでもサポート役。主役は地域の人々だったと話してくれた。

 

③おばあちゃんたちが主役の運営スタイル

 

「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」の最大の特徴は、地元のおばあちゃんたちが主役となってお店を運営していることだ。現在はおよそ1213人のスタッフで切り盛りしており、その多くが地域に住む女性たちだ。

 

「うちで働いてくれている方達は主婦の方ばかりなので、料理を作ることへの壁はあまりなかったように感じます。ですが、飲食店としてやるとなると、衛生に関するルールや食事提供の仕方や仕事がしやすい食器の収納方法などは、家庭とは違うこともたくさんあるので、そこはみんなで勉強しました。」

 

スタッフさんの一人に、この場所で働く楽しさを尋ねると、思わず笑ってしまうような答えが返ってきた。

 

「私たちはみんな言いたいことは言い合うようにしてます。たまには意見が合わずにぶつかることもあります。本当に喧嘩もするけど、そういう言いたい放題言えるからいいんです。それがこの職場の魅力かもしれませんね()。」

 

「私たちなんて、永遠に仲悪いですよ!」と言いながらも、その表情は笑顔だ。

 

営業は春から秋の金・土・日のみ。冬は雪のため休業し、お盆も子どもたちが帰省するスタッフのために休みにする。無理のないペースが、12年間続いてきた秘訣だ。

 

「金曜は1630名以上の方がいらっしゃいました。先週は日曜が秋祭りでお休みだったんですけど、土曜日だけで80人くらい来てくれました。正直お店を作ろうと動き出した時はこんなに多くの方が来てくださるなて想像もしていなかったので、ほんとにありがたいですね。」

 

この場所に集う人々のにぎやかな声と、地元の味を受け継ぐおばあちゃんたちの笑顔が、週末の「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」を温かく包み込んでいる。

 

④郷土料理で繋ぐ食文化の継承

 

「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」のメニューは、地域で昔から親しまれてきた家庭料理が中心となっている。特別な料理ではなく、日々の暮らしの中で当たり前に食べられてきた味。その家庭の味がこの場所でしか味わえない特別な物となっている。

 

「家庭料理をメニューに取り入れて皆さんに味わっていただいています。メインになるのは3種類なんですが、ひとつは味噌煮です。これは昔、山仕事に行くときに、手味噌を持っていって、お昼に鍋の中で味噌を火にかけて、野菜や肉や漬物など色々な物を入れて食べる風習があったんです。なので、昔からあるものを提供したくて味噌煮をメニューにしました。」

 

もう一つの看板メニューは「そば」。この地域ならではの歴史的な背景が、そば文化を支えているという。

 

「私たちはこのあたりで昔から食べられていたものを、提供したいと考えているんです。ここは昔、米が採れにくい土地だったんですよ。だから、「ひえ」や「あわ」そして「そば」など、米が実りにくい土地でも育つ作物を育てていたんです。ここでは、そばもたくさん作られていたので、それをメニューに取り入れました。」

 

「もう一つは、特性ランチなんですが、このランチは本日の主菜と地域の方が昔から食べている田舎料理が5品付いてくるので、おばあちゃん達の愛情たっぷりの昔ながらの食事を楽しんでいただけます。煮豆などはふっくらと炊いてあってとても美味しいですよ。」

 

食材もできる限り地元産にこだわっている。スタッフの中には現役の農家さんもいて、自分の畑で採れた野菜を提供することもあるのだそうだ。

 

「できる限り地元の野菜を中心に使っています。ただ、猿や鹿の被害も多くて、なかなか安定しない部分もあるんですけど……。スタッフとして関わってくれている方が農家さんなので、その方の畑で採れたものを分けてもらったり、地域の要である移動スーパーさんが岐阜市の市場で仕入れしていただいたりして、新鮮で美味しいものを提供しています。」

 

そんな手作りの料理を提供していると、何より嬉しいのはお客様からの言葉だと話してくれた。

 

「お客様にほんとに喜んでもらえるんですよ。年配のお客様は懐かしいねえって言ってくださるし、若い方はこんなに美味しいの食べたことない!って。そんなふうに喜んでもらえるのが、僕も含めみんなにいちばんの励みになってます。」

 

ここで食べる料理は、どこか懐かしくて、あたたかくて、そして地域の記憶をそのまま味わえるような、そんな一皿。ここでしか味わえない味と空間を楽しめるのだ。

 

⑤世代を超えて続く店を目指して

 

古民家への移転に際して実施したクラウドファンディングでは、目標を大きく上回る支援が集まった。

 

「正直、ここまで応援していただけるとは思ってもいませんでした。クラウドファンディングを通して初めて、こんなにたくさんの方に愛されていたんだなって実感したんです。この古民家でもみなさんの期待に応えられるよう、良い場所づくりを続けていきます。」

 

しかし、課題もある。最も大きいのは世代交代だと話してくれた。

 

「課題はやはり世代交代できるような仕組みづくりですね。それが一番必要なことでもあり一番難しいことでもありますね。」

 

現在のスタッフの中には70代、80代の方もいる。若い世代にこの想いを理解してもらい受け継いでいってもらう。これはどこの業界でも難しい課題である。価値観を共有できる人材を見つけることは容易ではない。

 

「今いるスタッフから、大切な想いを受け継いでもらって今後も昔ながらの味を未来に残して行きたいんですが、この地区に若い世代の方が少ないのもあり、めちゃくちゃハードルが高いです()。もし今のスタッフの方達が卒業したとしても、ご飯を食べに来てくれたり、会話を楽しんでもらえる場所として残して行きたいですね。」

 

山口さんの願いは、この場所が世代を超えて受け継がれていくことだ。最後に、山口代表に今後のビジョンを聞いてみた。

 

「これからもスタッフが笑顔で料理を作っていたり、ここに来ることを楽しみにしてくれているだけで十分なんです。今後もこの場所をみんなで大切にして、後継者にバトンタッチしていけたらと思います。」

 

廃校から生まれた「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」は、地域の人々の想いが詰まった特別な場所だ。おばあちゃんたちの手料理には、この土地で受け継がれてきた味と、温かい心が込められている。

 

都会の喧騒を離れ、山里の優しい時間を過ごしたい方は、ぜひ一度訪れてみてはいかがだろうか。「おんせぇよぉ~」の言葉通り、きっと温かく迎えてくれるはずだ。

 

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