植物のちからで、日々を整えるハーブティー専門店「HERBOSTHÉ」を訪ねてみた。





40種類以上ものハーブティーの量り売りや、オリジナルブレンドティーが展開され、多彩な香りと味わいが楽しめるハーブティー専門店だ。今回は、店主の西口 久美子(にしぐち くみこ)さんに、その魅力とハーブへの深い思いを伺った。
- HERBOSTHÉが提案するハーブが導く豊かな暮らし
- アパレルからパティシエ、そしてハーブティー専門店の開業へ
- あなただけの「お守りブレンド」を
- ハーブを「知る」「学ぶ」「楽しむ」場所へ
①HERBOSTHÉが提案するハーブが導く豊かな暮らし
岐阜市の閑静な住宅街にひっそりと佇む、ハーブティー専門店「HERBOSTHÉ」。まるで絵本の中から飛び出してきたような小さな店内には、やさしい香りに包まれた色とりどりのハーブが並び、訪れる人々の心と身体に穏やかな時間を届けている。
棚に並ぶハーブは、エコサート認証を受けたフランス産のものを中心に、常時40種類以上を揃える。これらをベースにしたオリジナルブレンドも豊富で、体調や気分、ライフスタイルに寄り添った提案が人気を集めている。
開業のきっかけには、店主・西口さんがかつて暮らしたフランス・パリでの経験が大きく影響している。日々の暮らしにさりげなくハーブが溶け込み、体調を整えたり、心を穏やかにする文化。そんな“日常の中の特別”に魅了されたことが、今の店づくりにつながっている。
店名の「HERBOSTHÉ」もまた、フランス語から着想を得た造語だ。「ハーブ」を意味する“herb(エルブ)”と「お茶」を意味する“thé(テ)”、そしてその間に「気分を押し上げる・高める」という意味をもつ英単語“boost(ブースト)”を掛け合わせて生まれた。
「ハーブとお茶で、気分や体調を少しでも上向きにしてもらえたらと思って。そんな願いを込めて、boostという言葉を加えました。」
シンプルでありながら想いのこもった店名には、「毎日をほんの少し、特別なものにしたい」というメッセージがそっと込められている。暮らしの中でそっと寄り添う一杯。HERBOSTHÉは、そんな時間を届けてくれる場所だ。


②アパレルからパティシエ、そしてハーブティー専門店の開業へ
元々は大阪で服飾関係の仕事に就いていた西口さん。しかし、昔からお菓子作りが好きだったこと、そして大学でフランス語を学んでいた経験が重なり、「せっかくならフランスで製菓の勉強がしたい」と思い立ち、渡仏。現地でパティシエとしての修行に励んだ。
帰国後は地元・奈良の菓子店でパティシエとして勤務。その後、フランスで知り合った友人からの誘いを受け、2016年に岐阜へ移住し、パティシエの仕事を続けてきた。しかし、現在は製菓の仕事からは一線を引いている。
「小麦や乳製品のアレルギーが出てしまって、続けるのが難しくなってしまったんです。でも今でもお菓子作りは大好きなので、バレンタインや母の日などのイベント時には、外部の工房を借りて試作・販売を行っています。」
パリでの生活の中で、「Herboristerie(エルボリストリー)」と呼ばれるハーブ薬局が非常に身近な存在であることに驚いたという。スーパーでも多種多様なハーブティーやドライハーブが手に入り、現地の人々が日常的にハーブティーを取り入れている光景に触れた。
「日本ではハーブティーが雑貨品として扱われることも多く、なかなか美味しいものに出会える機会が少ないと感じていました。私自身も、フランスで初めてハーブティーの美味しさに気づいたんです。パリでは、紅茶と同じようにハーブティーが日常的に親しまれていました。いわば“植物療法”として自然に取り入れられていて、日本でもそんな風に楽しめるお店があったらいいなと思ったんです。」
西口さん自身も、アレルギーをケアする中でハーブを生活に取り入れるようになり、植物療法への興味を深めていった。こうした経験を経て、「岐阜市でハーブティーを気軽に楽しめる場所をつくりたい」という思いが高まり、HERBOSTHÉの開店へとつながった。
「今はフランスから輸入しているハーブが中心ですが、日本や岐阜にも良いハーブや薬草がたくさんあります。そういったものも紹介できるようになっていきたいです。」
日本の風土に根ざしたハーブや、古くから伝わる薬草の知恵を取り入れることで、より多様な人々の暮らしに寄り添うハーブティーを届けていく。西口さんの静かな情熱が、HERBOSTHÉの未来を丁寧に描いている。

③あなただけの「お守りブレンド」を
HERBOSTHÉの最大の魅力は、その「品質」と「専門性」にある。店頭では、植物療法士である西口さんが、お客様の体調や悩み、好みに丁寧に耳を傾け、一人ひとりに合わせて最適なハーブを厳選・ブレンドしてくれる。
取り扱うハーブは、単にオーガニックであることにとどまらず、本来の効能を最大限に引き出せる品質であること、そして「美味しい」と感じられる味であることにこだわって選ばれている。この「美味しさ」への徹底した追求は、西口さんが長年パティシエとして磨いてきた感覚が、ハーブの組み合わせや味のバランスに活かされているからこそ実現している。
ハーブに関する知識がない人でも、西口さんが専門知識と豊富な経験に基づいて適切にアドバイスしてくれるため、安心して相談することができる。こうした丁寧なカウンセリングによって生まれるハーブティーは、単なる飲み物ではなく、まるで「お守り」のようにその人の心と体に寄り添う存在となる。
また、HERBOSTHÉでは「チョコレートと相性の良い“にっこりブレンド”」や、「花粉症や黄砂によるムズムズを和らげる“すっきりブレンド”」など、特定のテーマに合わせたユニークなオリジナルブレンドティーも展開。ハーブティーの新たな楽しみ方を提案しており、こうした遊び心も大きな魅力のひとつだ。
現在はハーブティーの販売を中心に展開しているが、将来的にはパティシエ経験を活かした新たなチャレンジにも意欲を見せている。
「植物療法を続けながら体調を整えて、いずれはアレルギー対応のお菓子を販売したり、ハーブティーと一緒に楽しめるカフェを開けたらと考えています。」
お客様一人ひとりに丁寧に向き合い、じっくりと説明しながら提案する今のHERBOSTHÉの温かな雰囲気はそのままに、西口さんの歩みはこれからも着実に広がっていくことだろう。


④ハーブを「知る」「学ぶ」「楽しむ」場所へ
日々の忙しさやストレスにより、心や身体のバランスを崩してしまう人が少なくない現代。「なんとなく不調を感じる」「ストレスがたまっている」「なかなか寝つけない」といった、病気とは言えない小さな不調に対して、HERBOSTHÉは丁寧に寄り添い、豊富なハーブの中から最適な組み合わせを提案している。ハーブティーを通じて、自分の心と身体に目を向け、健やかな日々を送るためのサポートを行っているのだ。
「美味しいハーブを探している方、ちょっとお疲れ気味の方、ストレスとの付き合い方を知りたい方、なんとなく不調を感じている方、健康になりたいすべての方に飲んでいただきたいですね。」
西口さんが目指すのは、ハーブティーを「特別なもの」ではなく、「日々の暮らしに自然と溶け込む存在」とすること。少しハードルが高いと感じがちな植物療法を、ハーブティーという親しみやすい形で提案することで、より多くの人にその恩恵を届けたいという強い想いが込められている。
また、HERBOSTHÉでは、ハーブティーをより気軽に学べるワークショップやミニセミナーを定期的に開催。ハーブの基本的な知識から、自宅で楽しめる美味しい淹れ方まで、一つひとつ丁寧に教えてくれる。実際に香りや味を試しながら学べるため、初心者でもハーブの魅力をしっかり感じることができる内容となっている。
ハーブティー専門店として、地域にしっかりと根を張りながらファンを増やし続けるHERBOSTHÉ。人々の心と身体を癒し、日々の生活に彩りを添えるだけでなく、ハーブの奥深さを伝える学びの場でもある。西口さんのハーブへの深い愛情と、お客様へのあたたかな心配りが、このお店を唯一無二の場所にしているのだろう。
忙しさに追われ、つい自分の心や身体に目を向けることを忘れがちな今だからこそ、ふと立ち止まって、自分を労わる時間がなによりも大切になる。HERBOSTHÉのハーブティーは、そんな時間をそっと後押ししてくれる存在だ。
温かな一杯がもたらす安らぎと、植物の力が与えてくれる癒し。HERBOSTHÉでそのひとときを味わってみてはいかがだろう。きっと、あなたの暮らしをやさしく整え、日々に静かな豊かさを添えてくれるに違いない。

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