父の想いを受け継ぐ「家族愛」から生まれた居酒屋「導」を訪ねてみた。





2025年3月にオープンしたばかりで、未経験から居酒屋の世界に飛び込んだマスターとママが、お客様との「ご縁」を何より大切にしながら営んでいる。今回は店主の尾関 美憂(おぜきみゆ)さんに、お店に込められた想いや、開業までの道のり、そして今後の夢について伺った。
- 亡き父への想いから生まれた店名「導」
- 未経験から始まった挑戦
- 日々変わるメニューへのこだわり
- BBQもできる!充実した設備
- 有言実行で広がる未来の展望
①亡き父への想いから生まれた店名「導」
西可児駅の近くにある居酒屋「導」。その店名には、深い家族愛が込められている。
「うちのマスターのお父さんが2024年の9月に他界してしまったのですが、お父さんの法名に導の文字があるんです。字画も良かったし、お父さんが導いてくれたんだってことで、『導』にしました。」
そう語るのは、お店のママを務める尾関さん。実は、このお店の原点は、マスターのお父様の夢にある。
「マスターのお父さんは、居酒屋を開くのが夢だったそうです。でも、その夢を叶えることなく、亡くなられてしまったんです。」
亡くなったお父様の夢を引き継ぎ、一人になってしまったお母様を支えたい。そんな想いが、マスターを居酒屋経営へと駆り立てたのだ。そして尾関さんは、そんなマスターの決意を支えることを決めたのだ。
「今までいろいろな仕事を経験しました。接客業は経験しましたが飲食業や居酒屋の経験はなかったんです。でも、マスターの話を聞いて彼の夢を一緒に応援しようって思ったんです。」
マスターの想いに触れ、彼ひとりの夢ではなく、お父様の夢でもあることを感じた。だからこそ、ふたりの夢を一緒に形にしていきたいと考えたのだろう。尾関さんの想いが感じられるお話だった。
②未経験から始まった挑戦
2024年3月10日、居酒屋「導」は正式オープンを迎えた。プレオープンは2月15日。準備期間はわずか2ヶ月という短期間での開業だった。
決め手となったのは、理想的な物件との出会いだったそうだ。
「ここは駅も近いですし、駐車場もあります。条件的にもちょうど良かったので、即決しました。」
しかし、マスターもママも飲食業は完全に未経験。不安はなかったのだろうか。
「経営自体初めてだったのでめちゃくちゃ不安はありました。でもやってみるとすごく楽しかったんです。でも、正直苦労はしました。」
特に開業当初は苦労の連続だったという。
「プレオープンは正直、思い描いていたようにはいきませんでした。料理の経験はありましたが、誰かに提供するための料理という視点が欠けていたことに気づかされました。当初はオペレーションも不十分で、仕組みとしてもまだ未完成でしたが、少しずつ改善を重ねて形になってきたと感じています。お客様からいただいたご意見を参考にしながら、YouTubeやTikTokなども活用し、アイデアを練って、日々メニューの幅を広げています。」
尾関さんは持ち前の向上心で、日々勉強を重ねていった。


③日々変わるメニューへのこだわり
居酒屋「導」の魅力は、心を込めて作られる手作り料理だ。焼き鳥は、一本一本丁寧に手串しで仕上げられる。特筆すべきは、日々変わるおすすめメニューだ。
Instagramをチェックしてみると、まぐたく、チョレギサラダ、穴子の煮付け、鮎の塩焼き、揚げだし豆腐、米ナスの田楽、イカうに丼、よだれチキン、あさりの酒蒸し、ささみの霜降り……など、毎日でも通いたくなるメニューがずらりと並ぶ。
「メニューは少しずつ変えています。ローテーションで入れ替えるようにしているんです。同じ内容が続くと、やはり飽きてしまいますからね。ありがたいことに、お客様からは『美味しい』と言っていただけることがほとんどです。」
情報収集して「これ美味しそう」と思ったら、まず、作ってみる。そして改良を加えてお客様に提供する。そんなチャレンジ精神が、充実したメニューにつながっている。
「私は居酒屋の経験がないからこそ、素直に周りから取り入れることができるのが強みだと感じています。」
お客様が釣った魚を持参してもらい、それを調理してみんなで食べるなど、まさに、お客様と一緒にお店を作り上げているのだ。そして居酒屋「導」のもう一つの大きな魅力は、心のこもった接客だ。
「やはり一番は人との繋がりやご縁を大事にしています。」
尾関さんが目指すのは、導がお客様にとって「家」のような存在になることだ。
「お客様の落ち着く場所になっていきたいです。そこが最終的な目標です。肩肘張らずに、ありのままで飲んでほしいというのが私の想いです。ありがたいことに、今では地元の方のたまり場のように使ってもらえています。」
来店されるお客様の層は広く50代、60代や、20代の若いお客様や家族連れも多く訪れる。お客様との交流は、マスターや尾関さんにとって大きな活力源だ。
「元気がないときでも、お客様と話しているうちに、自然と元気をもらえるんです。外で落ち込むことがあっても、ここに来てお客様と接していると、不思議と前向きな気持ちになれるんですよ。先日もマスターと口論になって、お店を休もうかと思ったんですが、お客様と話しているうちに気持ちがほぐれて、最終的にはマスターと2人で『あれ?何で喧嘩してたんだっけ?』って笑ってしまいました。」
ここは、ただの居酒屋ではなく、人と人とが心を通わせる場所。どんな日でも、ここに来れば自然と笑顔になれる。笑いの絶えない空間づくりを、尾関さんはいつも大切にしている。「導」は、そんな尾関さんの想いがまっすぐに伝わる場所だ。


④BBQもできる!充実した設備
居酒屋「導」の大きな特徴の一つが、充実した設備だ。店内は非常に広く、奥にはバーベキューができるスペースも完備されている。
「うちは珍しいんですが、外でバーベキューができるようになっているんです。先日も20〜30人でバーベキューをしました。」
広いバーベキュースペースを持つ居酒屋は、かなり珍しいのではないだろうか。宴会や特別なイベントにも対応できるのだそうだ。居酒屋の営業は17時からだが、BBQに関してはお昼の利用がOKなのもうれしい。職場やPTAの集まり、気の置けない仲間たちとのイベントなどでも活躍しそうだ。
また、現在は夜の営業のみだが、今後の展望として昼間の時間帯の活用も考えているという。
「営業時間をもう少し長くしていきたいし、お昼の時間も活用したいと考えているんです。決定ではないのですが、おにぎり屋とか卵焼き屋とかやってみたいなと考えています。」
おにぎり屋などはまだ構想段階ではあるものの、「導」という場所は、これからもっと自由に、もっと楽しくなっていくに違いない。そんな予感がした。

⑤有言実行で広がる未来の展望
尾関さんの大切にしている事を伺ってみた。即座に「即行動」「有言実行」と返ってきた。
「思いついたら即行動です。悩むこともありますけど、何事もやってみなきゃわからないですからね。」
この姿勢は、お店を始めてから特に強くなったという。
「このお店をやりだしてから、もっといろいろチャレンジしたいって思うようになりました。初めての業界に飛び込んでから、毎日が楽しくて仕方ないんです!」
居酒屋「導」は、多くの人の支えによって成り立っている。そう、尾関さんは語る。
「このお店は、たくさんの人に手を貸してもらいながら、言葉にした想いを一つずつ形にしてきた場所です。今でも、多くのお客様と「あれをやってみよう」「これも面白そう」と話し合いながら、それを本当に実現してきました。これからも、みんなと一緒に声を上げ、形にしていく。そんな“有言実行”のお店であり続けたいと思っています。」
ときには経営の厳しさを感じることもあるが、お客様からの愛情を感じることで頑張る力をもらっている。
亡きお父様の想いを受け継ぎ、家族愛から始まった居酒屋「導」。マスターとママの温かい人柄と、お客様を家族のように迎える心のこもった接客で、地域に愛されるお店として着実に歩みを進めている。誕生日会やBBQ、釣った魚を持ち込んでの食事会など、単なる飲食店を超えた交流の場として、多くの人の心の拠り所となっている。
居酒屋未経験から始まった挑戦は、今では毎日が楽しいと語れるほどの充実した日々に変わった。実は中学生のお子さんがいるという尾関さん。子育てが一段落し、有言実行の精神で次々と新しい挑戦を続ける尾関さんの姿に勇気をもらえる人はきっと多いはず。お腹も心も満たしてくれる居酒屋「導」で、あなたも温かい時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

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