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瑞穂市

子どもたちの自己肯定感を育むダンスインストラクター「TAEKO」を訪ねてみた。

子どもたちの自己肯定感を育むダンスインストラクター「TAEKO」を訪ねてみた。
TOM
TOM
ダンス教室に通えば、自己肯定感がぐんぐん上がるんだって!
SARA
SARA
そうね、『できた』って思える経験はすごく大事よ。
TOM
TOM
じゃあ僕も『天才!』って言われるために通おうかな〜。
SARA
SARA
・・・ダンスを覚えたいのか、褒めてもらいたいのか、どっちかしら・・・
この記事は約6分で読めます。
瑞穂市、岐阜市のダンス教室で子どもたちの指導にあたる、「TAEKO」をご存知だろうか。
今回は、子どもたちが自分らしく輝けるよう、一人ひとりに寄り添いながらダンスを通じて心を育むダンスインストラクター「TAEKO」こと、小川 たえこ(おがわ たえこ)さんにお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • 大学で出会ったダンスが教えてくれた楽しさ
  • 幼稚園から始まった、想いが広がる市民活動
  • 「一人ひとりに合わせた伝え方」想いを込めた指導
  • 教え子とのつながりが生む循環
  • 地域に根ざした新しい挑戦

①大学で出会ったダンスが教えてくれた楽しさ

 

小川さんとダンスの出会いは、大学時代の偶然から始まった。それまで新体操や体操に親しんでいた彼女の目に飛び込んできたのは、先輩たちが舞台の上で踊る姿だった。

 

「大学に入った時に、新入生歓迎会のような場で部活紹介があって、そこで先輩たちがダンスを踊っていたんです。すごくかっこよくて、『私もやってみたい』って思ったのが最初のきっかけでした。」

 

その瞬間の胸の高鳴りは、彼女の人生を静かに、しかし確実に変えていった。部活動では振付から演出まですべてを自分たちで試行錯誤し、3年間を夢中で駆け抜けた。

 

「正直、最初は何もわからない状態でした。でも仲間と一緒に一から作り上げていくのが面白くて、気がついたらのめり込んでいました。」

 

名古屋芸術創造センターの舞台で500人ほどの観客を前にパフォーマンスを披露した時の感動は、今も鮮明に残っているという。

 

「あの時の景色は忘れられません。緊張もあったけど、それ以上に達成感と楽しさが大きかったですね。」

 

シンプルに「楽しかった」という言葉で語るが、その裏にはダンスへの純粋な愛がにじんでいる。大学卒業後は一般企業に就職したが、心の奥に残る情熱は消えることがなかった。

 

「会社員をしながらも、仕事が終わると岐阜のダンススクールに通っていました。『いつかダンスの仕事ができたらいいな』って、そんなささやかな夢を抱いていました。」

 

結婚や出産を経て生活が変わっていく中でも、彼女の中でダンスはずっと特別な存在だった。

 

「子育てに追われている時期は少し距離を置いていたんですが、ひと段落したタイミングで『やっぱり自分はダンスが好きなんだ』って気持ちが湧き上がってきたんです。本当にやりたいことに、もう一度向き合いたいって思いました。」

 

その言葉は、彼女が胸の奥で大切に温め続けてきた夢の再始動を物語っていた。

 

②幼稚園から始まった、想いが広がる市民活動

 

ダンスへの想いが再燃した小川さんに、人生を変える出会いが訪れた。それは、子どもが通う幼稚園での何気ない会話から始まった。

 

「どうしてもダンスをやりたい気持ちが抑えられなくて、子どもと一緒に家で踊ったりしていたんです。幼稚園で『一緒に踊らない?』って話をしたら、『私もやりたい!』って言ってくれる方がいて。そこから自然と人が集まって、大きくなっていきました。」

 

最初は数人の子どもたちと始めた小さな活動が、気づけば50~60人もの子どもたちが集まる大きなコミュニティへと成長していった。

 

活動は大垣市の市民活動として9年間続き、地域に温かなつながりを育んでいった。市のイベントにも積極的に参加し、子どもたちは舞台に立つ機会を増やしていった。

 

「去年は、ピアニストのはらみちゃんのコンサートに、キッズダンサーとして出演することができたんです。子どもたちにとっても、私にとっても、本当に貴重な経験でした。」

 

振り返る小川さんの言葉には、驚きと同時に深い感謝の気持ちが込められている。

 

「自分が子どもと踊りたくて始めた小さなことが、ここまで大きくなるなんて思ってもみなかったです。たくさんの人の支えとつながりに恵まれて、感謝しかありません。」

 

こう語る小川さんの活動は、単なるダンス教室にとどまらず、地域の親子や仲間をつなぐ温かな場へと育っていった。ダンスの楽しさが、人と人を結び、まち全体に広がっていく――その姿は、暮らしに根ざした市民活動の大切さを物語っている。

 

③「一人ひとりに合わせた伝え方」想いを込めた指導

 

13年間のインストラクター経験を通じて、小川さんが大切にし続けているのは「子ども一人ひとりに合わせた伝え方」だ。その姿勢が、多くの保護者や子どもたちからの厚い信頼につながっている。

 

「指導者として言わなければいけないことはあります。でも、その時にどうしたら子どもたちに伝わるのかを考えることが大切なんです。私は一人ひとりの性格を知り、コミュニケーションを取りながら、その子に合った言葉で伝えるようにしています。」

 

できるまで寄り添い、時間をかけて向き合う。その姿勢が子どもたちの安心と信頼を育み、技術の習得以上に大切な心の成長を支えている。

 

「私が一番願っているのは、自己肯定感を高めてほしいということです。怒られたりすると子どもは気持ちが沈んでしまい、挑戦する意欲をなくしてしまう。だからこそ『できた』『やれた』という経験を少しずつ積み重ねてほしいんです。」

 

また、小川さんが伝えたいのはダンスの技術だけではない。仲間を思う気持ち、達成感、幸福感を味わうことも同じくらい大切にしている。

 

「できない自分を卑下するのではなく、自分を受け入れて、仲間の良さも認めていけるようになってほしい。仲間と共に高め合い、成長していける、そんな人になってほしいと願っています。」

 

そして小川さん自身にとっても、ダンスは人生を支える力になっている。

 

「どんなに暗い気持ちでも、つらいことがあっても、ダンスを踊ると私は楽しくなれるんです。その楽しさを他の人にも感じてもらいたいし、子どもたちにも届けたい。それが一番大きな原動力ですね。」

 

さらに、人前で踊ることが子どもたちの成長に欠かせないと考えている。

 

「人前で踊るって、本当に度胸がいることなんです。緊張もあるけど、その経験を通してメンタルが強くなる。だから私は、子どもたちに力強く生きてほしい、心の強さをつけてほしいっていう願いを込めて指導しています。」

 

小川さんの言葉の一つひとつには、子どもたちが自分らしく輝いてほしいという深い愛情が流れていた。

 

④教え子とのつながりが生む循環

 

小川さんの教室には、心温まる物語がある。幼稚園の年長から教えていた生徒が、今ではサブの先生として教室を支えているのだ。

 

「最近クラスが増えて、一人では抱えきれなくなってしまったので、お願いしてサブの先生をやってもらっています。頼もしい存在ですね。」

 

長年そばで見てきたその生徒は、小川さんにとってまるで娘のような存在だという。

 

「もうほとんど娘みたいです。本当にかわいくて、仕草も性格もすごく愛らしい子なんです。それに技術やセンスもすごく良いので、私から見てもとても頼もしいですね。」

 

さらに、ご縁があって出会ったもう一人の存在も大きい。幼少期からダンスに夢中になり、「将来はダンスを仕事にしたい」と願う高校生だ。今では1クラスを任され、しっかりと責任を果たしている。

 

「とてもしっかりしていて、かわいらしい子なんです。ダンスに対して真摯に取り組んでいて、踊りは綺麗で迫力もある。これからの活躍が本当に楽しみです。」

 

若い世代と共に活動する中で、小川さん自身も学びを得ることが多いという。

 

「毎回気づきをもらったり、学ばせていただけることが本当に多いんです。感謝の気持ちでいっぱいですし、その刺激を受けてスクールをもっと良くしていきたいと思っています。」

 

そして何より感動するのは、自分が育ててきた子どもが今度は次の世代を導く立場へと成長していく瞬間だ。

 

「自分が教えてきた子が、今度は新しい子を教える立場に立つ。それを見ていると本当に感動します。舞台で成功した時なんて、もう涙が出るくらい嬉しいです。それだけで私は幸せです。」

 

こうした温かな循環こそが、小川さんの教室にとってかけがえのない財産になっている。

 

その流れをさらに大きく広げる挑戦として、発表会の企画も進んでいる。

 

「10月25日に岐阜市で発表会を企画しているんです。500席の会場で、複数の教室の生徒を集めて開催する予定です。初めての試みなのでドキドキしますけど、みんなの力を合わせて成功させたいです。」

 

子どもたちの成長を見守りながら、育てた生徒と共に新しい挑戦を重ねていく。この温かな循環こそが、小川さんの教室にとってかけがえのない財産になっている。

 

⑤地域に根ざした新しい挑戦

 

現在は瑞穂市、岐阜市の教室で指導を行っている小川さんだが、心の中には大切にしている夢がある。それは、大垣での教室開設だ。

 

「市民活動を終えてから、今は大垣で教えられていないんです。だから、何かしらの形で大垣でも教室を開けたらいいなって思っています。地域の人たちともっと関わっていきたい、そんな夢を持っているんです。」

 

かつて市民活動を通して地域とつながった経験を活かし、再び大垣市と連携したイベント開催も視野に入れている。

 

「市のイベントで子どもたちが踊る姿は、地域全体に元気を与えてくれるんです。だからまた大垣でも、そういう機会をつくれたらいいなと思っています。」

 

さらに指導面では、これまでの「教える」スタイルから一歩踏み込み、子どもたち自身が創造する時間を大切にしたいという想いも抱いている。

 

「子どもたちが自分で振りを作るとか、そういうことをやらせてあげたいんです。今はどうしても先生が振りを与えて、それを覚えて踊るっていう形になりがちなんですけど、そればっかりだと受け身になってしまう。だからこそ、自分から考えて、表現していけるようにしたいですね。」

 

その想いは、小川さんが大切にしてきた「子どもたちの自己肯定感を高める」という理念と深くつながっている。

 

「自分で考えて生み出したものをみんなの前で発表できたら、それはものすごい自信になると思います。技術だけじゃなくて、心の力を育てることが本当に大事なんですよ。」

 

小川さんの教室で過ごす時間は、ダンスの技術を学ぶ場であると同時に、子どもたちが自分らしく輝く力を育む場所になっている。

 

ダンスを通じて子どもたちの心を大切に育みたいと考える保護者の方は、ぜひ小川さんの教室を訪れてみてほしい。温かい眼差しと確かな指導で、きっと子どもたちが生き生きと踊る姿を見ることができるだろう。

 

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