主婦の日常に寄り添い、知恵を届ける「ダイニング小椋さん」を訪ねてみた。





「なるべく健康に、なるべく簡単に」をコンセプトに、発酵調味料を使った時短と健康の知恵を伝えるワークショップを開催している。今回は、「ダイニング小椋さん」として活動を行う小椋 朋子(おぐら ともこ)様にお話をうかがった。
- ひらめきから生まれた活動名
- 発酵調味料との出会いと新しい道
- 「楽して健康に」を実現するワークショップ
- 家族の笑顔が生む次への一歩
- 人と人をつなぐ場として育む未来への想い
①ひらめきから生まれた活動名
「ダイニング小椋さん」という印象的で耳に残る屋号には、心温まる誕生秘話がある。ヨガ講師として活動していた小椋さんが、発酵調味料のワークショップを始めて一年ほど経った頃の出来事だった。
「私はもともとヨガ講師をしていました。何かのイベントで久しぶりにヨガつながりの仲間に再会して、ゆっくり話す機会があったんです。ちょうどこの仕事を始めて一年くらい経った頃だったと思います。」
当時の小椋さんは、ヨガやよもぎ蒸しにも取り組んでいたが、発酵調味料のワークショップが次第に人気を集め、参加者も増えてきた時期だった。そんな話をしているうちに、自然と「活動名をどうしようか」という相談に話題が移っていった。
「そろそろ活動名が欲しいなと思っていたんです。以前、『名前をつけるなら、Dから始まる言葉がいいよ』って言われたことがあったので、いろいろ考えてはみたんですが、なかなか気に入るのが思い浮かばなくて、みんなに相談しました。」
Dから始まる名前を考えていた小椋さんの頭には、ヨガの教えに由来する「ダルマ」という言葉が浮かんだという。しかし、それでは活動の雰囲気に合わず、少し堅苦しく感じ悩んでいた。そんな時、同席していたヨガ仲間にふと直感的なひらめきが舞い降りた。
「彼女は直感力が鋭くて、一瞬でひらめく人なんです。『ダイニング小椋さん』って口にした時、私は正直『なんだかちょっと恥ずかしいな』と思ったんです。でも少しずつ使ってみると、周りの人たちが自然にそう呼んでくれて。気づけば定着していました。」
何気ない会話の中で生まれた名前だったが、親しみやすい響きが多くの人の心をつかんだ。今ではその名は、小椋さんの活動を象徴する存在として、多くの人に愛され続けている。

②発酵調味料との出会いと新しい道
小椋さんと発酵調味料の出会いは、ヨガを始めた時期とちょうど重なっている。専業主婦生活10年目という節目の年、ヨガ講師を志し始めた頃のことだった。
発酵調味料との最初の出会いは、ある料理教室での一皿だった。その味は強く印象に残り、小椋さんの心を大きく動かした。
「初めて食べさせてもらった時に『なんて美味しいんだろう。こんなものがあるんだ』と思って。そこから『発酵調味料って何?』と興味が湧いたんです。料理教室で出てきた一皿をきっかけに、いつの間にか自分でも使いこなすようになっていて、少しずつバリエーションを広げていくようになりました。」
その後は独学で発酵調味料を学び、家庭で日々の料理に取り入れていった。専業主婦として家族の食事を作り続ける中で、発酵調味料が持つ味の深みや体へのやさしさを強く実感するようになった。
「私にとっては調味料もヨガも生活に必要な存在だとすぐに分かりました。ただ、お料理を仕事にしようなんて思ったことは一度もなくて、まずはヨガ講師としてやっていこうと考えていたんです。でもある時、『料理も仕事としてやってみようかな』という気持ちが急に芽生えてきたんです。」
やると決めたら何事にも挑戦する性格だという小椋さん。この旺盛な好奇心と行動力が、やがてワークショップという形で多くの人へと広がっていく。家庭での実践を通じて培われた知恵は、同じように家族の食事を担う主婦たちにとって、共感できる説得力ある学びとなっていった。


③「楽して健康に」を実現するワークショップ
小椋さんが開いているワークショップは、一般的な料理教室とは大きく異なるスタイルを持っている。参加者は一緒に調理をするのではなく、まず座学で学び、続いてデモンストレーションを見て理解を深め、最後に小椋さんが用意したランチをゆっくり味わう。学びと食事を組み合わせたユニークな時間が特徴だ。
「だから私が開いているのは、料理教室ではないんです。参加されるのは女性が多くて、普段から家事や仕事で忙しく、日々料理を頑張っている方ばかりです。もちろんレシピも知りたいと思って来られますが、それ以上に息抜きとして足を運んでくださる方が多いのをすごく感じます。」
その根底にあるコンセプトは「楽をして健康になる」という考え方だ。無理をするのではなく、自然に続けられる方法で体を整えていく。
「自分はもちろん、誰かを健康にすることが好きなんです。でも、そのために無理をするのは嫌なんです。だから、何事もバランスをとって両立できるように気をつけています。生活の中で、なるべく健康に良く、なるべく簡単に、そしてなるべく自由に。そういう姿勢をとても大切にしています。」
その実践的な方法の中心にあるのが、発酵調味料の力だ。
「例えば買ってきたお肉を一気に下処理して、いろんな発酵調味料に漬け込んで保存しておくんです。発酵調味料には酵素の働きや、栄養価を高めて分解してくれる力があるので、体に吸収しやすい状態にまで整えてくれるんです。普通なら3日しか持たないお肉が、1週間から2週間は日持ちするようになるんですよ。」
この工夫によって、忙しい主婦でも無理なく健康的な食生活を続けることができる。まな板を何度も汚す必要はなく、味付けに悩むこともなく、食材を余らせて無駄にしてしまうこともない。まさに「武器を持って、いかに楽をするか」を伝える、生活に直結した実践的な知恵なのだ。


④家族の笑顔が生む次への一歩
小椋さんのワークショップには、県外からも多くの参加者が訪れている。その割合は全体の約半分にも達するというから驚きだ。
「お客さんは基本的に県外の方が半分ぐらいです。対面で来られるのは兵庫や奈良、京都、大阪の方が多いですね。どうしても通うのが難しい関東圏の方などは、オンラインで参加してくださっています。」
なぜこれほど遠方からも人が集まるのか。その理由は、家庭での実感が何よりの証拠となっている。
「受講者さんの旦那さまやお子さまからの評判がすごく良いんです。私自身もそうなんですけど、やっぱり家族からの『美味しい』の一言ですごく頑張れるんですよね。」
ワークショップで学んだ知識や技を家庭で活かすと、家族からは「どうしたの?」「すごく美味しい」「また作って」といった声が返ってくる。その反応を見た夫から「また行ってきなよ」と背中を押される人も少なくない。家族の笑顔が、次の学びへの一歩を後押ししているのだ。
年間の受講者数は200名を超える。リピート率も高く、内容への満足度が、数字にもはっきりと表れている。
「やっぱりご縁がどんどんつながっていくんですよね。お友達を連れてきてくださる方も多いです。」
こうして口コミで広がる温かなつながりこそが、小椋さんのワークショップ最大の魅力であり、人を引き寄せ続ける大きな力となっている。


⑤人と人をつなぐ場として育む未来への想い
小椋さんのワークショップは、単なる学びの場にとどまらず、人と人をつなぐ温かなコミュニティとして機能している。毎回の開催が新しい出会いの場となり、参加者の間で自然に交流が生まれているのだ。
「毎回、まるで女子会みたいになるんです。誰も示し合わせていないのに、『前に別の教室で会ったよね』『ここでも会ったね』といったやり取りが自然に生まれて、だんだんつながりが広がっていく。完全に初対面というよりは、どこかで誰かとつながっていた、ということもよくあるんです。」
こうした参加者同士のつながりから、思いがけない交流の広がりが生まれることも少なくない。
「例えば私が身につけているイヤリングを見て、『それ誰が作ったの?』と聞かれて、『ここにこういう子がいるから紹介するね』という感じで、人から人へつながっていくんです。そうやって人の輪が広がっていく様子を見ているのが本当に楽しいんです。」
さらに現在は、発酵調味料を教えられる人を育てるための養成講座も開催している。そこからはすでに6名ほどが活動を始めており、それぞれが自分らしいスタイルで発酵調味料の魅力を伝えているという。
「私だけじゃなく、来てくださった人同士でつながって活動を広げていってくれるのが嬉しいんです。フリーランスの方も多いので、お互いに協力し合ったり、応援し合ったりしている姿を見ると、この場を作ってよかったなと思います。」
小椋さんが目指しているのは、単に発酵調味料を教えることにとどまらない。人々が心豊かに暮らせるような場を提供し、そこから新しい出会いや学びが生まれることだ。
「何屋さんであるかはあまりこだわっていないんです。ここが誰かの居場所になったり、人と人がつながる場になったりすることを大切にしています。そして、発酵調味料を通して誰かのおウチごはんが変わるきっかけになると嬉しいなって思っています。」
忙しい日々の中で、家族の健康を気遣いながら料理に向き合う主婦の方々は、ぜひダイニング小椋さんのワークショップを訪れてみてほしい。楽をしながら健康になれる知恵と、人と人とが自然につながる温かな空気が、きっと毎日の暮らしに新しい彩りを添えてくれるだろう。

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