製造業
各務原市

スマートファクトリーで木工の未来を切り拓く「豊桑産業株式会社」を訪ねてみた。

スマートファクトリーで木工の未来を切り拓く「豊桑産業株式会社」を訪ねてみた。
TOM
TOM
現代に求められているのは、やっぱりサステナビリティだよね~
SARA
SARA
環境・社会・経済に配慮しながら、持続可能な開発や社会を目指す考え方のことね!
TOM
TOM
ペーパーレス化やDXに取り組んでいる企業も多いよね!ボクは最近SDGsを意識して、フードロスの削減とマイバッグ、マイボトルの持参にトライしてるんだ!
SARA
SARA
・・・無駄に横文字連発する系ね・・・
この記事は約5分で読めます。
各務原市にある「豊桑産業株式会社」をご存じだろうか。

伝統的な職人技と最先端のデジタル技術を融合させ、日本の木工産業に革命を起こし続けている老舗企業である。今回は、代表取締役を務める織田 龍次(おだ りゅうじ)さんにお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • 苦難の時代と、事業転換
  • “一歩先ゆく”スマートファクトリー
  • 持続可能な循環型社会を目指して
  • 未来へつなぐ、伝統とテクノロジー

①苦難の時代と、事業転換

 

日本の風土と文化に深く根ざした素材である「木材」。古くから建築や家具、そして暮らしを彩るあらゆるものに形を変え、人々の生活に寄り添ってきた。しかし、多様な価値観と急速な変化に満ちている現代社会においては、均一的な大量生産はもはや時代にそぐわず、個々のニーズに応える「一点もの」が求められる時代が到来した。

 

こうした潮流の中でも、豊桑産業株式会社は、「一歩先ゆく木工会社」というスローガンを掲げ、伝統的な木工技術と、創業から85年以上にわたり培ってきた先進的なデジタル技術を融合することで、常に進化し続けている。

 

1938年(昭和13年)に『織田木工所』として創業した当初は、木製の窓枠や家具を製造する建具屋だった。その後、建材の主流はアルミへと移行し、織田社長が入社した頃には、人形ケースの製造が事業の主軸となっていた。

 

「人形ケースは、正月や桃の節句など、特定の時期に需要が集中します。そのため、年間を通じての経営は非常に不安定でした。日々資金繰りに苦労している父の姿を見て、『このままではいけない』と思い、建材事業への進出を決めました。」

 

直感を信じた織田社長は、事業の軸を、需要が不安定な人形ケースから、建築部材の製造へと転換した。その道のりは想像以上に険しいものだったが、持ち前の行動力で、顧客の小さな困りごと一つひとつに愚直に応え続けた。

 

その努力は、やがて大きな実を結ぶ。信用を武器に受注を増やし、気がつけば年商は40億円にまで上り、創業から85年を超える老舗企業へと成長を遂げた。

 

②“一歩先ゆく”スマートファクトリー

 

豊桑産業の最大の強みの一つが、製造プロセスのデジタル化とスマートファクトリーの導入だ。この取り組みのきっかけは、過去に発生した大規模なトラブルにあったという。

 

20年ほど前になるのですが、キッチンカウンターを商品化した際、想定外の大量の注文が舞い込んできたんです。当時は注文書をExcelで管理していたのですが、とうとう処理が追い付かなくなり、パンク状態に陥ってしまいました。その時に立て直しに携わったメーカーの担当者から『受注管理システムを導入してみてはどうか』と声をかけていただきました。

 

アドバイスに従い、半信半疑で導入したシステムだったが、「それがぴったり合った」と話す織田社長。この経験を機に、デジタル化の第一歩を踏み出した。

 

その後、ドイツ・HOMAG社製の最新鋭機械を導入。自社システムと連携させることで、顧客からの発注データから資材のオーダー、生産計画、出荷まで、すべての工程をデータで管理。手書きの図面やPDFデータは、ベトナム・フエ市に拠点を構えるCADセンターでデジタルデータに変換する体制を構築した。

 

「加工プログラムや資材情報、納入先情報がすべてバーコードに紐づいているので、読み取るだけで作業が進みます。今ではオペレーターが加工プログラムを間違えるといった人為的なミスは、全くありません。

 

これにより、生産の効率化は飛躍的に向上した。さらに、資材や端材の管理も自動倉庫で行うことで、在庫の可視化と正確な運用を実現。これらの取り組みにより、木工業界では異例の「単品の大量生産」を可能にしたのだ。

 

③持続可能な循環型社会を目指して

 

豊桑産業の強みは、スマートファクトリーだけではない。経営における4つの重要課題を挙げ、持続可能な循環型社会を目指し、環境に配慮した事業を展開している。

 

まず1つ目が、「地球環境に配慮したカーボンニュートラルへの積極的な取り組み」である。地球環境への配慮を重視し、温室効果ガス排出量の削減を目指している。ベトナム工場への太陽光パネル設置や、カーボンオフセットの一環としてのJ-クレジット購入など、具体的な行動を次々と実行に移している。

 

次に、「働きがいのある環境づくりと人財活躍の推進」だ。従業員を大切な「人財」と捉え、生き生きと働ける環境を整備し、一人ひとりの能力を最大限に引き出すことを目指している。

 

そして3つ目が、「ダイバーシティ経営の実践」である。20146月には、就労継続支援A型事業所として『株式会社HOAO』を設立。主にキッチンカウンターなどの木工製品の検品や梱包、同梱具材の梱包や施工書折りなどの軽作業、CADや書類作成などのPC作業を行っている。このように、性別や年齢、国籍や障がいの有無に関わらず、誰もが働きやすい環境の整備に力を入れている。

 

最後に、「コア技術の追求と革新技術の開発による社会価値創造」だ。伝統的な木工技術に加え、最新技術を積極的に取り入れることで、社会に貢献する新たな価値を創造している。

 

このように、「地球環境の保全」と「社会の持続的な発展」を両立させることを目指し、さまざまな活動を推進している。

 

④未来へつなぐ伝統とテクノロジー

 

織田社長は、今後の展望として、OEM(他社ブランドの製造)から自社ブランドへの展開を視野に入れている。すでにベトナム工場では、特注のインテリアや家具を国内向けに製造しており、そのノウハウを日本でも展開していく計画だという。

 

「ベトナムでは完全オーダーメイドの家具やインテリアを扱っていますが、日本では文化や法律が違うので、また違うアプローチが必要になります。これまでの経験を活かして、日本のエンドユーザーに向けた魅力的な商品を展開していきたいですね。」

 

さらに、織田社長のビジョンは業界全体へと向けられている。

 

木工屋業界は、危険な機械を扱い、大変な思いをしながらも、赤字で苦労している会社が多いのが現状です。そういった悩みの多くがデジタル化で改善されるということを知らない会社も少なくありません。私たちが持つノウハウの共有やサポートを通じて、多くの会社が抱える課題を解決し、業界全体の活性化に貢献したいと思っています。」

 

と、力強く意気込みを語ってくれた。

 

「私たちは、協力工場に対して、当社のシステムを使ってもらい、加工プログラムや生産管理をすべて共有することで、お互いのメリットになるような関係を築いています。今後は、そういった共創の関係も増やしていけたらいいなと思っています。」

 

多くの木工会社が後継者不足や設備の老朽化に悩んでいる現状を打破するため、織田社長はこれまでのノウハウを活かしたサポートや協力体制の構築にも意欲を見せている。

 

伝統を重んじつつ、常に進化を続ける姿勢。豊桑産業が成し遂げたのは、単なる事業再生ではない。時代の変遷、そして業界全体の停滞という逆境の中、徹底したデジタル化と顧客第一の理念を貫き、未来を切り拓いたのだ。

 

一歩先ゆく豊桑産業株式会社の挑戦は、これからも私たちの暮らしを豊かにし続けてくれるだろう。

 

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