地域のつながりが支える変わらぬ味「MOKA COFFEE」を訪ねてみた。
創業から48年を迎える老舗の喫茶店で、薪窯で焼く本格ピザとモーニングサービスで地域に愛され続けている。今回は、遠嶋 智恵(とおじま ともえ)様にお話をうかがった。
- コーヒー豆の名前から生まれた店名
- ピザをきっかけに継がれた想い
- 地域のつながりが支える価格とサービス
- 三世代にわたって愛される憩いの場
- 変わらぬ味と温かさを未来へ
①コーヒー豆の名前から生まれた店名
MOKA COFFEEという店名は、コーヒー豆の名前が由来となっている。
「この名前はコーヒー豆の名前から来ているんです。昔から仕入れ先でお世話になっているエム・ジーコーヒーの前会長さんが、コーヒー豆の名前から選んで決めたと聞いています。」
創業は昭和52年、1977年。遠嶋さんのお父様とエム・ジーコーヒーの前会長様が一緒に始めたお店だった。当時、愛知県一宮市に店舗を構え、「サンドイッチショップモカコーヒー」として、4店舗から5店舗を展開していたという。
幼い頃、遠嶋さんはお父様と離れて暮らしていたが、小学生の頃、家族が一緒に住むために店舗を大垣に移転し、現在の場所で店を始めた。
創業前、お父様は東京で学び、さまざまな経験を積んでいた。特に飲食業の勉強に力を入れ、エム・ジーコーヒーの前会長様と共に東京でさまざまなことを学んだという。
「お店を始める前、父は東京で飲食業の勉強をしていたんです。その際、最初のメニューやTシャツも東京のデザイナーさんに依頼して作ったんですよ。ロゴデザインは今も変わらず使っています。」
東京で学んだ知識と経験を活かし、地元で愛される店を作りたい――そんな想いが、MOKA COFFEEの始まりだった。
②ピザをきっかけに継がれた想い
当初、MOKA COFFEEはサンドイッチがメインの店だった。しかし、ある時点でピザ窯を導入することに決めた。
「最初はサンドイッチショップだったんです。ピザは途中から取り入れたんですよ。」
ピザ窯を導入する際、遠嶋さんのお父様は1から焼き方を勉強したという。
当時、遠嶋さんのお姉様も店で働いていたが、ピザ窯が馴染むまでは多くの苦労があったという。しかし、まさにこのピザが遠嶋さんがこの店を継ぐきっかけとなったのだ。
「結婚して家を出ていた私がここに戻ってきた理由は、まさにこのピザです。主人がここのトマトバジルピザに惚れ込んでしまって。」
遠嶋さんの旦那様は、もともとトラックの運転手をしており、料理の経験はほとんどなかった。にもかかわらず、このピザに魅了され、店を継ぐ決意を固めた。
しかし、全く異なる業種からの転身は簡単ではなかった。
「父からも後押しされて、トラック運転手を辞めて店を手伝うことになりましたが、最初は本当に大変でした。」
遠嶋さん自身も子育てをしながらだったため、旦那様がメインで修行を積み、店の運営に取り組んでいった。
いよいよお父様から店を受け継ぐ時が訪れたが、遠嶋さんはその決断に不安を感じていた。
「何十年も続いているお店を継ぐって、すごくプレッシャーもありました。頑張ってやっていかなきゃいけないって想いが強くて。父に『正直、自信がないよ』って伝えた時に、『やってみないとわからんだろう』って言われて、思い切って交代しました。」
店を受け継いでから19年。今でも、MOKA COFFEEは地域にとって欠かせない存在として、多くの人々に愛され続けている。
③地域のつながりが支える価格とサービス
MOKA COFFEEの大きな特徴は、なんと言っても本格的な薪窯で焼くピザだ。しかし、薪の調達には工夫が必要だ。
「材木屋さんから捨てるような廃材をもらって、薪として使っているんです。もし市販の薪を使うとなると、メニューの価格は維持できません。」
地域の協力があってこそ、この価格で提供できるのだ。地域のお客様も積極的に協力してくれる。
「それを知っているお客様が『木を切ったからもらってくれないか』と声をかけてくれたりします。田舎ならではのコミュニティの支えです。」
木材だけでなく、野菜も地域の方からいただくことが多い。モーニングサービスで提供する野菜の一部は、地元の方からもらったものだ。
「今だと市場に出せないかぼちゃをもらったり、さつまいもを余分に取ったからといただくこともあります。そういった野菜をサンドイッチに挟んだり、一品料理にしたりして、モーニングサービスなどで提供しています。」
都会ではなかなかできない、地域のつながりを活かした支え合いが、MOKA COFFEEのサービスを作っているのだ。
「この場所じゃなかったら、こんなサービスはできなかっただろうなと思います。特に最近はどんどん物価が高くなってきているので、普通の値段で買っていたら、この価格帯では提供できません。」
また、人気のトマトバジルピザに使うトマトは、高山市清見町から仕入れている。こだわり抜いたこのトマトも、先代が見つけた縁だ。
「ここのトマトは特に美味しいんです。そのトマトを仕入れられる時期は本当にトマトバジルのピザがおすすめで、常連のお客様も楽しみにしてくれています。」
地域とのつながり、生産者との繋がりが、MOKA COFFEEの味を支えている。
④三世代にわたって愛される憩いの場
創業から48年。MOKA COFFEEは長い歴史を持ち、地域のお客様との深いつながりがある。
「本当に昔から来てくれているお客様が多いんです。長い間続けてきて、お客様との関係ができているからこそ、今もこうして続けていられるんだと思っています。」
中には、三世代にわたって通ってくれる家族もいるという。
「昔、子どもだった子が今はお母さんになって、子どもを連れて来てくれるんです。あの頃はまだ子供だったのに、今ではお母さんになっているなんて本当に不思議な気持ちになります。世代を超えて足を運んでくれることが嬉しくて、そこにもやりがいを感じます。」
お客様からは、「ここに来たらホッとする」という声をよくいただく。遠嶋さんにとって、それが一番嬉しいことだ。
「常連のお客様が新しいお客様を連れてきてくれて、どんどんつながりが広がっていく。そういったつながりが、やっぱり大事だと思っています。」
週末には県外からも多くのお客様が訪れ、SNSを見て来店する若い世代も増えているという。
「SNSで知って来てくれる若い方も増えてきました。こうして新しい世代にも知ってもらえることは、すごく嬉しいですね。」
MOKA COFFEEは、世代を超えて愛され続ける場所となっている。
⑤変わらぬ味と温かさを未来へ
今後の展望を尋ねると、遠嶋さんは迷わず答えた。
「私、今のまま続けていくのが一番いいんだと思っています。宣伝に何万円もかけるよりも、口コミで広がっていく方が大事だと思うんです。」
MOKA COFFEEが目指すのは、変わらぬ味と温かさを守り続けることだ。コロナ禍では、お客様が激減し、続けられるか不安だった時期もあった。
「本当にあの時はお客様が激減しました。どうなるかと思いましたが、何とか乗り越えて今があります。」
物価高騰など課題はあるが、遠嶋さんは前向きだ。
「悩みを悩みにしないで、なんとかなるんじゃないかと思っています。何も考えずに素で行こうという気持ちで、前に進んでいます。」
値上げの話が出ても、「それもしょうがない」と受け止め、安い材料を探して自分たちの足で走り求める。
営業を続ける中で、お客様から元気をもらうことが多いという。
「大変だなと思う時もありますが、お店を開けると元気が出てきます。お客様と会話をすることで元気をもらい、また笑顔で帰っていってくれることが一番のやりがいです。」
地域に根付いた老舗の喫茶店。変わらぬ味と温かい人柄を求めている人、ホッとできる場所を探している人は、ぜひMOKA COFFEEを訪れてみてほしい。
薪窯で焼かれた本格ピザと、遠嶋さんの笑顔が、きっと心を満たしてくれることだろう。
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