完成の先まで寄り添う家づくり「株式会社OHKENハウス」を訪ねてみた。
創業から23年、「感動する家創り」をコンセプトに、地域に根ざした家づくりを続けている注文住宅の会社だ。今回は代表取締役の大久保 堅司(おおくぼ けんじ)様に、会社を立ち上げたきっかけや、独自の経営哲学、そして未来への展望などを伺った。
- お客様と喜びを分かち合うという原点
- 完成から始まる信頼のつながり
- 個性を活かす、ボトムアップの組織
- 次の時代を見据えた挑戦
- 信頼を積み重ねて、次の世代へ
①お客様と喜びを分かち合うという原点
OHKENハウスでは、専門の建築家と連携し、高いデザイン性と優れた住宅性能を両立させた住まいづくりを行っている。
元自動車工場を再生した、カフェ併設型のモデルルームも特徴のひとつだ。無垢材やタイルなど、本物の素材感を五感で体験できる空間となっており、家づくりを検討する人にとって、完成後の暮らしを具体的にイメージしやすい環境が整えられている。
大久保さんが会社を立ち上げたのは32歳の時。それまで大手ハウスメーカーで8年間、営業として経験を積んできた。
「私が社会に出た頃は、いわゆる就職氷河期の時代でした。業界を選ぶ余裕はほとんどなく、とにかく就職できることが最優先という空気でしたね。」
そうした時代背景の中で、建築業界に飛び込んだ大久保さん。右も左も分からない状態から、必死に仕事を覚えていったという。
「専門的な知識を持たずに建築の世界に入りましたが、今振り返ると、それが良かったのかもしれません。変な先入観がなかった分、白紙の状態でいろいろなことを吸収できました。」
ハウスメーカーでは主任を任され、課長職への昇進も約束されていた。しかし、仕事を続ける中で、次第に違和感を覚えるようになっていく。
「大きな会社になると、営業は契約を取ったら次へ、という流れになりがちです。契約後はお客様との関わりが薄くなってしまう。そのやり方に、だんだん疑問を感じるようになりました。」
大久保さんが大切にしたかったのは、契約そのものではなく、その先にある家づくりの時間だった。
「もっとお客様と一緒に家づくりをしたい、という気持ちが強かったんです。契約の瞬間に自分が喜ぶのではなく、完成した時にお客様と一緒に喜びたい。そういう会社をつくりたいと思いました。」
その想いから、28歳頃には独立を具体的に意識し始め、30歳で退職。2年間の準備期間を経て、32歳でOHKENハウスを設立した。
創業当時から変わらないコンセプトは、「お客様と一緒に喜ぶ家づくり」、そして「スタッフに喜んでもらえる会社づくり」。その考え方は、現在のOHKENハウスの在り方にも、しっかりと受け継がれている。
②完成から始まる信頼のつながり
OHKENハウスの家づくりを語る上で欠かせないのが、「出口」を大切にする姿勢だ。多くの住宅会社が集客などの入口対策に力を入れる一方で、同社が重視しているのは、家が完成した瞬間の体験だという。
その考えを象徴するのが、引き渡しの際に行われるイベントだ。家づくりを振り返る手紙をお客様に書いてもらい、それを読み上げる時間を設けている。
「家づくりは長い時間を一緒に過ごします。その中では、本当にいろいろな出来事があります。最後に手紙を読んでもらうと、これまでのことが一気に思い出されて、涙されるお客様も、スタッフも少なくありません。」
その様子は、どこか結婚式にも似ているという。家が完成する瞬間は、新しい家族の形が生まれる節目でもある。
「自分たちで建てた家が完成するというのは、人生の中でも特別な瞬間です。その時間を、しっかり共有したいと思っています。」
こうした積み重ねが、現在のOHKENハウスを支える既存のお客様からの紹介に繋がっているのだ。
「紹介には本当に助けられています。家づくりを通して築いた信頼関係が、世代を超えて続いていると感じることも多いですね。会社を立ち上げた当初に家を建ててくださったお客様のお子さんが、自分の家を建てたいと訪れてくださることもあります。次の世代にも選んでもらえるのは、本当にありがたいことです。」
完成の喜びを共有する家づくり。その積み重ねが、人と人とのつながりを生み、次の縁へと広がっている。
③個性を活かす、ボトムアップの組織
大久保さんの経営で、もう一つ大きな特徴となっているのが、ボトムアップ型の組織づくりだ。
「トップダウンの組織には、その良さもあると思っています。ただ、僕はビジョンと予算だけを提示して、あとはみんなに考えてもらうスタイルを取っています。実際、95%はスタッフに任せていますね。」
この考え方は、社内の空間づくりにも表れている。カフェをつくる際にも、予算だけを伝え、具体的な内容はスタッフに委ねた。
「スタッフがいろいろな案を考えてくれて、結果的にとても良い空間になりました。」
大久保さんが何より大切にしているのは、スタッフ一人ひとりの個性を見極めることだ。
「自分はこうやって成功したから、と自分の成功体験を押し付ける上司は多いと思います。でも、人それぞれ性格も生き方も違います。同じことができるわけがないんですよね。」
その考えを、大久保さんは分かりやすい例えで説明してくれた。
「例えば、上司が鳩だとして、部下に『飛べ』と言ったとします。でも、もし部下がペンギンだったら、飛べませんよね。ペンギンは泳ぐのが得意なんですから、その強みを活かす方法を考えないといけないと思うんです。」
実際、建築の経験がない状態で入社したスタッフもいるが、それぞれの得意分野に合わせて仕事を任せることで、着実に成長しているという。
「その人の得意なことや才能を活かせる場所を見つけてあげるのが、マネジメントの仕事だと思っています。人に合わせて仕事をつくれるのは、中小企業ならではの強みですね。」
こうした姿勢が、スタッフの定着率の高さにもつながっている。
④次の時代を見据えた挑戦
現在、OHKENハウスは建築事業に加え、カフェやピラティスジムの運営にも力を入れている。その背景には、建築業界の将来を見据えた強い危機感がある。
国土交通省が2025年1月に発表した建築着工統計によると、2024年の新設住宅着工戸数は80万戸を下回り、今後は60万戸程度まで減少するという予測もある。
「この業界だけで成長し続けるのは、正直難しいと感じています。だからこそ、他にも事業の柱をつくる必要があると考えました。」
そこで目を向けたのが、飲食やフィットネスといった分野だ。
「美や健康に対する意識が高い方は多く、そこには需要があると感じています。」
カフェ「Elefans’ Cafe&BAL」は、モデルルームに併設する形で運営されており、家づくりと同様に“居心地”を大切にした場づくりがなされている。
なかでも人気を集めているのが、手作りパンのモーニング。毎朝店内で焼き上げられるパンは、素朴でやさしい味わいがあり、幅広い世代に親しまれている。日常の中でふらりと立ち寄れる存在として、地域に根づいた場所になりつつある。
このカフェ事業は、単なる事業の多角化にとどまらず、社員の可能性を広げる場としての役割も担っている。
建築という非日常の仕事だけでなく、飲食という日常に近い接点を持つことで、人との関わり方や働き方の幅を広げていく。その姿勢は、OHKENハウスが大切にしてきた「人との関係を積み重ねる」という考え方とも重なっている。
また、大久保さんは、60歳を迎えるタイミングで、社長を退任する予定だという。社長退任後の話になると、大久保さんは少し笑いながら、こう続けた。
「経営からは完全に引くつもりです。趣味でカフェで提供するパンを焼いたり、ラテアートをつくったりはするかもしれませんけどね。」
後継者は親族ではなく、社員の中から選ぶ考えだ。
「社長としての資質がある人に託したいと思っています。時代の変化に対応できる経営が必要ですから。」
これまで築いてきた想いやコンセプトは受け継ぎながらも、その先は次の世代が、自分たちのやり方で切り拓いていく。その未来を見据えた準備が、すでに始まっている。
⑤信頼を積み重ねて、次の世代へ
大久保さんが、日頃からスタッフに伝えていることは、大きく二つあるという。
一つ目は、コミュニケーションをしっかり取ること。もう一つは、お客様に対して全力でサポートできる体制をつくることだ。
「当社では、お客様との打ち合わせの時間をとても大切にしています。家づくりは、一方的に進めるものではありません。不安や疑問をその都度解消でき、安心して家づくりを進めていただけると考えています。」
工事が始まってからも、現場での打ち合わせを欠かさない。変更があれば、すぐに共有し、スピーディーに対応できる体制を整えている。
もう一つ、仕事をする上で大久保さんが大切にしている考え方が、「やらないことを増やす」という姿勢だ。
「とにかく忙しくしなきゃいけないと思って、自分で仕事を増やしてしまう人は多いと思います。でも、余計な仕事ばかりしていると、考える時間がなくなってしまうんですよね。」
最後に、会社経営の中で大切にしていることを尋ねると、迷いなくこう答えてくれた。
「やはり、コミュニケーションを取ることですね。そして、嫌なことこそ、率先してやることです。社長が嫌なことから逃げていたら、誰もついてきませんから。」
この姿勢こそが、スタッフからの信頼につながっている。
お客様と真摯に向き合い、スタッフ一人ひとりの働き方にも目を配る。株式会社OHKENハウスは、そんな誠実な積み重ねによって、これからも地域に根ざした家づくりを続けていくだろう。
マイホームを考えている人は、一度足を運んでみてほしい。家づくりに対する見方が、きっと変わるはずだ。
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