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岐阜市

まごころ込めて和綿を届ける「株式会社マインド松井」を訪ねてみた。

まごころ込めて和綿を届ける「株式会社マインド松井」を訪ねてみた。
TOM
TOM
食べ物がたくさん実って、景色も秋らしく綺麗になってきたね!
SARA
SARA
まさに豊穣の秋ね。最近立派に実ったものを見た?
TOM
TOM
うーん、サラのお腹かな!
SARA
SARA
・・・(デリカシーの欠片もないわね)・・・
この記事は約7分で読めます。
岐阜市古市場にある「株式会社マインド松井」をご存知だろうか。
洋服の製造だけでなくその素材まで生産している企業だ。
今回のツムギポイント
  • 本物のオーガニックを目指して
  • 綿宝「わたから」
  • 和綿で地球とつながる
  • 株式会社マインド松井の今後の展望は?

①本物のオーガニックを目指して

 

岐阜市で和綿を栽培し、洋服などの製品へ加工をしている株式会社マインド松井。本日は代表取締役を務める井上美穂(いのうえ みほ)さんにお話を伺った。

 

「マインド松井は1972年に現会長である私の父が設立をしました。元は婦人服の製造業を行っていましたが、2010年から和綿の栽培も開始しました。和綿の栽培を始めたのは、ある女性に父が出会ったことがきっかけだったと聞いています。」

 

婦人服製造業を行う会社が和綿の栽培にまで事業を広げた理由について、美穂さんはこう語る。

 

「昔、父が目の手術のために入院をしたのですが、その入院時に出会った患者さんがいたんです。その方はひどいアトピーをお持ちの方で、化学繊維の服ではかぶれてしまい、普段から身に付けるものにとても困っていたそうです。その方はオーガニックコットンの衣料品なら肌がかぶれることなく身につける事ができていると教えてくれたそうです。その話を聞いた父は”衣料を医療としたものづくりをする”をコンセプトに科学繊維に抵抗のある方や肌が弱い方でも気兼ねなく身につけることができる衣料品を作ろうと考えたそうです。本当に必要としてくれる人たちに体にいいものを届けたいというコンセプトからオーガニックの和綿の製造を自ら始めたそうです。」

 

「はじめはオーガニックコットンを仕入れて洋服に仕立て上げていましたが、ある時にお客さんから”このオーガニックコットンの産地はどこですか?”と尋ねられたそうです。私たちはもちろん仕入先の人も、そのオーガニックコットンの栽培地や製造場所を知らなかったために質問に答えることができなかったそうです。そのことから、ただオーガニックコットンと書いているだけではなくて、どこでどのように作られたコットンであるかをきちんと説明できるようにしたいと考えた結果、それならば、自分で作るしかないんだなという気持ちになり和綿の栽培を始めたんだそうです。」

 

今の事業の形になったのは、化学繊維が着られない方々へのあまりにも深い思いやりの念からだったと言う。偶然知り合った人を助けてあげたいと言う思いから、ここまで大きく行動することができると言うのは、創業者である美穂さんのお父様のご人徳によるものではないだろうかと感じた。

 

お父様の事業に美穂さんが参加された経緯についてもお尋ねしてみた。

 

「学校を卒業してアパレルで型紙を作成したりデザインを手がける仕事をやっていたんですが、なんとなく私がやりたい事ではないような気がしていたんです。私はミシンでものを作ることが好きでもっとしたいなって感じていました。実家ではなく別の縫製工場なのですが、縫製について学びました。その後に実家に戻って、サンプル事業部を自分で一人で立ち上げました。サンプル事業というのはいわゆる1点もの、1枚縫いのものを作る仕事です。家業は婦人服の大量生産がメインだったんですけどサンプル事業をやり始めたら結構需要があったんです。婦人服自体が昔と比べると衰退の方向にあるし、和綿を栽培して糸にするってこともできるようになってきたので、指定農家さんからオーガニックコットンを仕入れてはいましたが、岐阜で自分たちで綿を育てて、本当に喜んでもらえるものを作ろうと思い岐阜で栽培を始めたんです。今はサンプル事業とオーガニック事業の2本立てでやってまいす。」

 

将来家業を継ぐために他の会社を見て学びたかったのだと教えてくれた。美穂さんは家業ではなくあえて別の縫製工場で修行をされたそうだ。自分で和綿を育てより良い物を作ろうとするその姿に驚かされたが、美穂さんのお話を伺い心から応援したいと感じた。

 

②綿宝「わたから」

 

オーガニックコットンの製造を行う美穂さんは、和綿がきっかけで舞い込む出会いを綿の宝という意味を込めてご自身で立ち上げたこの事業に”わたから”と名付けられている。

 

「私達は綿からできるものや、綿から繋がるご縁を「綿宝~わたから~」と呼び、様々なことにチャレンジしています。和綿栽培を通して、人と人を、人とものを、過去と未来を、つなげる活動をしています。綿から様々なもの、様々なことにつながるという思いを込めて名付けました。」

 

秋には地域の子供達を招いて綿摘みを企画していると話してくれた。実際に綿の収穫を体験する事で自分たちが当たり前に身につけている衣料品がどのようにできているのか興味を持ってもらいたいと考え綿の収穫体験を企画したようだ。今回特別に、美穂さんに実際に実っている和綿を見させていただいた。

 

「ふわふわとして、本当に可愛いです。ずっと触ってられるんですよ。花が咲いて実になって、パカッと開くと中に白い綿が入ってるんです。そしてこの和綿が製品になるまでには、すごくたくさんの人の手を通っているんですね。まず綿繰りっていって種を取り出す作業があって、次に糸車で糸にする。そして機織り機で布にします。今はファストファッションの時代で、服がものすごく安く購入できますよね、毎年使い捨てをしてしまうような服が多く販売さてれいるんです。そんな服しか売れない時代になってしまってるんですけど、こんなに手がかかる服を使い捨てにしちゃっていいの?っていう疑問を持ってもらいたいなと思っています。」

 

実際に栽培している畑を見学させていただき、お話を伺ったが和綿のお話をしている時の美穂さんはずっとワクワクされた様子だった。それだけ和綿に対しての愛情が深いことの証だろう。

 

③和綿で地球とつながる

 

自分の手元で和綿を栽培し、本当に喜んでもらえる製品として届けることを重視されている美穂さん。人にやさしい和綿とは、地球にやさしい和綿でもあるのだということがよくわかるエピソードを語ってくださったので紹介したい。

 

「ここで育てた綿から作った生地で使い終わった物を土に返すという実験をしてみたんです。そしたら土になったんです。米ぬかとか、納豆とか、発酵する菌を一緒に混ぜたんですけど、2ヶ月で完全にサラサラの土になったんです。土に完全に還ってくれたことに力を得て、今後は絶対ここの場所で全部循環させようと決意しましたね。」

 

オーガニックの安全なコットンを作るというのは簡単なことではなく、とても難しいものなのだという。綿の製造の世界的な状況についても美穂さんは教えてくれた。

 

「先ほど収穫したばかりの、うちの和綿を素手で触ってもらいましたけど、ファストファッションなどで使われるようなコットンの中には農薬をたっぷり使って育てているようなものも多くあるのが現実です。そういうコットンは収穫直後に素手で触れないし、畑に入るのも危険な状態なんです。子どもたちが裸足で入っても安全なコットン畑というのはほんとうに少ないんですよ。やっぱり土って汚れると元の綺麗な状態に戻すのにすごく時間がかかるし、とても難しいんですよ。なので、地球を大事に使わないといけないと感じるんです。皆さんにも実感してわかってもらえたら嬉しいです。」

 

「食べ物も全部含めた世界中の農場の中で、コットンを栽培している農園はほんの少しなんです。そのほんの少しのコットン畑に、世界で使われている農薬の2割が使われています。口に入らないからってたくさんの農薬を使って作っている状態です。その安い綿製品や使い捨ての服がもたらす現状ですね。実際に安い綿を製造している地域の農家さんたちは危険にさらされ、とても苦しんでいます。皆さんがきちんとした値段で買った服を、大事に使わなきゃいけないなって思ってくれることによって、そういう農家さんの生活も改善されると思うんです。生産者も最終的にはハッピーになれるはずだって考えています。」

 

美穂さんが岐阜だけではなく、世界や地球の未来を考えて和綿製造を行なわれているのだと感じた。私たちが日々買うものや身につけるものに対する取捨選択の責任を改めて感じさせてくれるお話だった。

 

④株式会社マインド松井の今後の展望は?

 

和綿製造事業のブランド名でもある綿宝。無農薬で安全に製造した和綿を国内で製品化する美穂さんは、株式会社マインド松井が目指す今後についてこう語る。

 

「私たちが無農薬で安全に製造した和綿を国内で製品化していたとしても皆さんに買ってもらわないと次に繋げることが出来ません。たくさんの人の手がかかって、値段もそれなりにはかかってしまいますけれど、それをなるべく手に取っていただきやすい価格で提供して、それを買ってもらってまた次に繋げたい。日本国内でもちゃんとフェアな取引をしていきたい。それが課題だと思っています。」

 

「現在和綿の体験教室を開いていますが、将来的にはカフェもやってみたいなと思っています。マインド松井の綿宝の拠点地は地元の有志ボランティアの方の手で今も改装工事中です。他にも、ここで導入している和綿を糸にする機械に工業高校の生徒さんがモーターを取り付けてくれて、片手で作業ができるようにしてくれました。こうやって、本当に地域のみなさんに助けてもらってできている活動です。それを知ってもらうためにも、もっと売れる商品を作っていかなくちゃいけないなと使命感を感じています。」

 

人と人との繋がりを重視して、やさしく正しい商品について考えている美穂さんの活動を、ぜひもっと多くの人に知っていただきたいと思った。

 

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