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大垣市

大切に枡を作り上げる「枡本舗(有)児玉工業所」を訪ねてみた。

大切に枡を作り上げる「枡本舗(有)児玉工業所」を訪ねてみた。
TOM
TOM
マスって知ってる?良いよね~
SARA
SARA
お米や日本酒に使われるわよね、木の香りがして素敵よね。
TOM
TOM
何言ってるの?塩焼きが美味しいんだよ!
SARA
SARA
枡じゃなかったのね・・・あなたは本当に食いしん坊ね・・・
この記事は約5分で読めます。
大垣市にある「枡本舗(有)児玉工業所」をご存知だろうか。
大垣市の枡文化を大切に継承している企業だ。本日は代表取締役社長の児玉 政重(こだま まさしげ)さんにお話を伺った。
今回のツムギポイント
  • 3代に渡りそれぞれの事業を行う児玉工業所
  • 衣斐量器との出会い
  • 枡づくりの3つのこだわり
  • 今後の展望は?

①3代に渡りそれぞれの事業を行う児玉工業所

 

児玉工業所は、児玉社長に経営が渡る前にはお祖父様とお父様が経営されてきた。しかし、3代に渡ってずっと同じ業界に特化してきたわけではないのだという。経営者が変わるとともに、その事業内容も少しずつ変えてきたのだと児玉社長は語る。

 

「先先代である私の祖父が、ダンボール箱を作る仕事をしていたというのを聞いています。先代にあたる父親はそれを引き継いだという形です。その後、親父の代になってからは今度は祖父とはまったく違う、無機繊維というガラスの繊維を扱ってきました。近くに断熱材を加工する大きな会社があって、そこに収める前工程を最初に取り組んでいた業務です。」

 

しかし、ガラス繊維を取り扱うのは大変な作業だった。ずっとその作業ばかりをしていると皮膚にかゆみが出てきたりと健康面で問題が生じてしまうということで、別の事業を行うようになった。

 

「シャッターを作っている会社が近くにあり、そこの仕事を始めたという流れです。シャッターの一部を加工する工程を担当していました。それが今の仕事の、本当の前の形になりますね。」

 

こうして形を変えながら続いてきた会社なのだそうだ。

 

②衣斐量器との出会い

 

そこからも革新をし続ける児玉工業所。きっかけはリーマンショックだったという。シャッター関連の取引先との契約の形が変化し、新しい事業へ挑戦することを決めた児玉社長。次に挑戦しようと決めたのは「枡」だったのだそうだ。その経緯についてはこのように説明してくれた。

 

「これから何をしていこうという時に、縁があって知り合いを通じて枡の世界を知りました。そこからですね。私の枡に対してのチャレンジが始まったのは。枡作りの老舗”衣斐量器”さんは昔ながらの枡を守ってきたと言っても過言ではないです。当時私は新しいことにチャレンジをしたくて、衣斐量器さんは後継者問題を抱えていたんです。コロナをきっかけに衣斐量器の社長様とお話をして、うちが衣斐量器さんの機材や従業員も引き継いでいくという事になり今の形になりました。」

 

そうして衣斐量器の全てを引き継ぎ、新たに枡の伝統を守っていくこととなった児玉工業所が誕生する。

 

衣斐量器時代の機材もスタッフもまるっと引き継ぐ事には少し複雑な心境もあったというが、児玉社長は強い想いがあってのことだったという。明治創業の老舗企業の意思を大切にし、想いを引き継ぎたかったのだそうだ。同時に児玉社長にとっての大きなチャンスでもあった出来事。

 

「衣斐量器さんと繋がっているお客様もすべて含めて、全部を引き継ぐっていうのはそれなりに責任のあることだと思う。衣斐量器の社長の顔も潰してはいけないと思いました。引き継ぐことへの想いは強かったという感じですかね。従業員の方にも来ていただいたので、真摯に自分の気持ちを伝えて、やりたいことを伝えてやるっていうのは私にとっても本当に大事なことだったんです。」

 

児玉社長は当時を語った。歴史ある企業を背負い、またそこで働かれていた従業員にも来てもらうということは並の覚悟では務まらないと強く感じた。それだけ児玉社長の「枡」に対しての想いは強かったのだろう。

 

③枡づくりの3つのこだわり

 

枡本舗(有)児玉工業所が枡作りにおいて大切にしていることは3つある。その「材料」「天然乾燥」「木殺し(きごろし)」について児玉社長に質問をしたところ、とてもわかりやすい説明をしていただくことができた。

 

まずは材料にこだわりを持つという話についてだ。

 

「本当に材料には苦労してきました。材料によって仕上がりが全然違うんです。その上で、一般のお客様は正直詳しくない方もいれば、違いが分からない方もいらっしゃる。初めて枡を購入されるお客様もいるかもしれない。ただ、見る人が見ればすぐ分かるんですよね。だからこそ枡本舗は、ちゃんとした檜を使っています。どこに卸しても間違いない品を作っています。」

 

本気の覚悟で事業を引き継がれたからこそ、材料一つとっても妥協をしないのだという。また、生命線である材料を大切にするために業者様との関係性も良好に保つために、業者に迷惑をかけない点におかれても配慮は欠かさない。

 

2つ目の天然乾燥については、その後の仕上がりに大きく影響を与える要素なのだそうだ。天然乾燥に力を入れることができるのは、衣斐量器から引き継いだ大きな乾燥スペースとスキルを持っていたことも大きいと児玉社長は語った。

 

「乾燥は、正直乾燥機にかけて乾燥させた方がより乾燥させることができます。通常、乾燥機で乾燥をさせると大体8%ぐらいの数値で乾燥をかけられます。ただうちは、大体15・16%くらいを目安に乾燥させています。乾燥させすぎると、組んだ時に割れちゃったり後工程に影響が出てくるので。」

 

素人の筆者は、乾燥はできるだけさせた方が良いのだろうと思っていたが、あえて木にも”遊び”を持たせる事で融通が効くようにしてあるのだそうだ。最後の木殺し(きごろし)については、誇りにしている部分でもあり、今後の悩みの部分でもあるのだそうだ。

 

「木殺しの作業は、本当にコンマどれだけの世界で行う作業です。職人さんの感覚に任せている部分が大きいです。昔ながらの職人気質な素敵な文化でもあるのですが、同時に悩むべき部分でもあります。若く新しい後継者が入ってきた時に、この感覚的技術を教えるのはやはり難しくて。誰が作業しても均一のクオリティに仕上げる方法を現在は考えています。」

 

そう名残惜しそうに語りつつ、昔ながらの職人さんたちの腕前の素晴らしさを大いに感じている様子も伝えてくれた。

 

「木は本当に生き物なので、感覚っていうのがすごく大事なんです。私自身も正直わからない部分がまだまだありますが、職人さんに任せるっていうのも確かにあるんですよね。」

 

と児玉社長は話してくれた。

 

④今後の展望は?

 

大垣の大切な文化である枡を大切に生産し、伝統を守っている「枡本舗(有)児玉工業所」。

 

実は素敵な試みの進展を2つ、構想しているのだと教えてくれた。

 

「枡蕎麦と言って、枡と蕎麦をセットで発売するということを始めました。蕎麦用の専門の枡を作ったんです。ホームページでも販売していて、写真も添付しています。もうひとつは、お土産物として枡を各所に置いてもらい販売していきたいという願望があります。お土産として定着させたいですね。そのために、箔押しやカラー展開などを色々試しているんです。」

 

現在、空港で大手航空会社さんの枡を販売しており売れ行き好調だという児玉社長は、その傾向も掴みつつお土産としての枡を提唱していきたいのだそうだ。座右の銘を尋ねると「鶏口となるとも牛後となるなかれ」だと即答してくれた児玉社長。自身の夢を追い続けるためにこれからも先陣を切っていかれることだろう。

 

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