カヌレ愛とアンティーク愛を大切にしている「カヌレの店saco」を訪ねてみた。
心落ち着くアンティーク空間でこだわりの手作りカヌレを販売しているお菓子屋さんだ。今回はsacoの店主である岩佐 幸子(いわさ ゆきこ)さんにお話を伺った。
- 誕生秘話と店名の由来について
- カヌレのお店を持ってから
- カヌレだけじゃない!カヌレの店sacoのラインナップ
- カヌレ作りへのこだわり
- 感謝を大切に
①誕生秘話と店名の由来について
sacoというお店の名前は、店主である岩佐さんの旧姓に由来するのだという。
「私の旧姓が佐光(さこう)っていう苗字だったんですよ。私のあだ名なんですよ。」
ホームページなどにはカヌレの店sacoと記載することもあるようだが、お店の名前は「saco」とアルファベット4文字で表記するのだそうだ。
sacoをオープンするよりも前からカヌレ作りをしていたのだという。2010年からカヌレを作っている岩佐さんは、ご自身がカヌレが大好きでカヌレ作りを始めたのだそうだ。
「当初は自分や家族・友人と楽しむために作っていました。カヌレブームがあった時になかなか手に入らなくなり買えなくなっちゃったんです。どこもみなさんカヌレの販売を辞められちゃって。じゃあ自分で作ろうと思ったのがきっかけです。」
カヌレ好きがこうじて素敵なお店sacoを構えることになったのだという岩佐さん。カヌレを作り始めた当初は、ご自分や、家族や友達にプレゼントをして楽しんでいたのだそうだ。未来のカヌレ屋さんとなる人の手作りカヌレのお裾分けを受け取っていた周囲の皆さんがとても羨ましく感じるエピソードだ。
「仲間内で、家族や友達に出来上がったカヌレを配って、みたいな感じでした。おやつ作りは好きなんですけど、なんかすごい偏ってて、自分が食べたいものしか作らないんです。今までも自分がこれ食べたいなと思ったり、好きだなっていうものは、誰かに振る舞ったり、自分で食べる用としての色々作っています。」
好きなものがたくさんあり、それらを美味しくいただくだけではなくて、作るところから楽しまれているというライススタイルを感じることができた。
②カヌレのお店を持ってから
実際に岩佐さんがカヌレのお店をもつ2018年までの8年間は、そのようにカヌレ作りをしていたのだそうだ。途中でとあるアンティークショップとのご縁があったという。
「あるアンティークショップさんが私が作ったカヌレを気に入ってくれて、出してほしいって言われたんです。お店の販売用としてカヌレをぜひって。すごく気に入ってくれて、店主もカヌレがすごい好きだったので、お客様にも出したいということで。それが最初ですね。」
そのアンティークショップでカヌレを販売するようになり1,2年経った頃に、自分の工房が欲しいと思うようになったという岩佐さん。現在のお店の前に営業をしていた、現在のsacoから1キロほど離れたところにある店舗をその頃見つけたのだそうだ。
「初めは、夫がやっている家具工房の一部を借りてできたらいいなと思って話をしたら、やるならちゃんとやった方がいいっていう風に夫に背中を押されたんです。それで物件も見つかってっていう感じです。」
新しい場所を構えることについて岩佐さんは、
「最初はすごく戸惑いました。ちょっとそれは・・・っていうのは、あったんで。」
と話したものの、その昔話をどこか懐かしそうに語ってくれた。その1店舗目を経て、取材をした2023年12月にsacoは開店半年を迎えている。
とてもかわいらしい店内は、「夫が家具屋なので、好みの物を家具工房で作ってもらいました。」と語る岩佐さん。
「前のお店もすごい気に入ってたので、そのイメージをそのまま今の店舗に持ってきました。カヌレが伝統菓子で400年くらい前からあるので、それに合うアンティークな感じで。」
もともとこの物件を見た時にいいなと思った場所は、あえて手を加えていないという。窓の形や、タイルなど、お気に入りの箇所をさまざま紹介してくれた岩佐さん。sacoへカヌレをお求めの際はぜひ店内も眺めてみていただきたい。
③カヌレだけじゃない!カヌレの店sacoのラインナップ
岩佐さんが大切にしているのは、プロ意識のある品物をお客様に提供しつつ、できるだけ食品ロスを出さないようにすることだそうだ。
「カヌレは卵白が結構余っちゃうので、卵白を廃棄しないようにクロッカンというお菓子と、ムラングというお菓子も作って置いています。あとはちょっと焼き損じてしまったカヌレをラスクにしたものや、カヌレに合う紅茶も販売しています。」
岩佐さんご自身が紅茶も大好きなのだという。カヌレと紅茶のティータイムをお求めのお客さんは、カヌレに合うおすすめ紅茶を教えてもらうことができるだろう。
④カヌレ作りへのこだわり
ここからは本格的なカヌレ作りについてお話を伺った。sacoではその日に焼いたものしか販売しないという決まりをつくっているそうだ。
「前もって焼いて、冷凍するとか、そういうことはやってないですよ。今日売っている分は今日作ったものを販売しています。」
カヌレは焼いた日と、2日目や3日目では食感が異なることで有名なお菓子だ。その中でsacoでは、焼きたての「パリッ」とした食感を楽しむことができるカヌレだけにこだわって販売しているという。sacoで、焼き上がった当日限定のカヌレの表情をぜひお楽しみいただきたい。
「フレーバーのバリエーションの増え方は結構ゆっくりな方だと思います。試行錯誤しているうちに結構な時間が経ってしまいます。あまり急がずにじっくり作っていこうかなと思ってるんです。半端なこれ何味だ?っていうものは嫌なので、ひとつの味を作り込む様にしています。それを継続的に食べてもらえた方が嬉しいかなという考えなんです。」
焼き上げるのもまた、知識や技術が十分に発揮される工程だ。オーブンの中の位置によってどうしても焼きムラは出てしまいやすいものであり、食感にもこだわれば販売できないカヌレも出てくるのだという。
「季節によっても焼き上がりに大きな違いができます。焼きムラが出てしまった場合は、カヌレとしてではなく、ラスクにしています。オーブンの中のちょっとした変化でも色や焼き加減にムラが出るので常に試行錯誤していますね。」
岩佐さんはこのように話してくれた。筆者を含めてお客様からすれば、きっと違いの差がわからないほどの具合なのだろう。しかし、そこで妥協をするのではなく完璧にご自身が納得したカヌレしか販売しないというのだから驚きだ。このプロ意識とカヌレへの愛情こそが人気店の秘訣なのだろう。
⑤感謝を大切に
最後に岩佐さんが大切にしている言葉を聞いた。
「私は”感謝”ですね。もうそれに限ります。本当に色々な方に支えてもらっているので。本当に。スタッフがいないとお店を回せないですし、お店の改装に携わってくれた業者さんも本当に皆様の手が加わっているので。仕入れ先の業者さん、皆様の力をいただいて初めてカヌレも出来るので。常に思っていますし、その気持ちは忘れない様にしています。何より、わざわざ雨の日でも足を運んでくださるお客様もいらっしゃるので。本当に感謝しかないです。」
カヌレ屋さんとして特別なプロ意識を持ちつつ、どんな人にとっても重要な感謝の気持ちを忘れずに今日もカヌレを焼いているという岩佐さん。近所のカフェと提携をしたりと、これからも感謝を忘れず、活躍の場を広げていかれることだろう。
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