瑞穂市の未来のために奮闘する「株式会社丸島工務店」を訪ねてみた。
- 継承
- これからの方針
- 人生の転換期
- 巻き込む力
- 叶えたい夢
岐阜県瑞穂市にある「株式会社丸島工務店」をご存知だろうか。
穂積町だった時代から土木工事業に長年携わって来た企業である。土木工事が主な事業だが社名は工務店。その由来なども気になりながら訪問した。
①継承
この丸島工務店は創業35年と歴史のある会社だ。会社のこれまでの歩みについて聞いてみた。
「僕は二代目なんですよ。世代交代したのは二年前くらいですね。会社は昭和に創業して。先代の父親はいま会長として手伝ってくれています。」
会社を継がれて二代目だと話してくれた。島戸さんの学生時代には丸島工務店を個人事業でお父様がやってみえたのだという。12年前に事業展開する際に今の事務所を構えたということも教えてくれた。島戸さんにとってはずっと間近で見てきた会社なのだ。
継承について詳しく尋ねてみた。
「元々自分の家業を継ごうとは考えていませんでした。建設会社へ入ったのは偶然ですね。」「高校を卒業して8年程、建設会社に勤めていました。25歳の時に親の会社を手伝うようになりました。」
建設業界に飛び込んだのは偶然だったと教えてくれた。会長であるお父様も”継いで欲しい”とは特に言われ無かったと話してくれた。自分で道を選べた上で、家業を継ぐにまで至ったのである。
「父親が病を患ったんです。父親が大切にしていた会社がなくなってしまうのは寂しいので自分が守っていこうと思ったんです。」会社を継ぐ決断をされたきっかけを話してくれた。
島戸さんの強く優しい想いと、長年一緒に仕事をしてより深まった親子の信頼関係を感じられる。とてもあたたかいエピソードだ。
ここで気になっていた社名について触れてみる。
工務店と聞くと建築業のイメージが強い。どういう経緯で丸島工務店になったのか、社名の由来を尋ねてみた。
「昔は建築業は丸って言葉をつけるのが多かったから。うちは土木建設の会社なので建築業ではないですが、建築業にも手を広げていきたいという展望があったのかもしれません。」
現段階で建築業に手を広げようとは考えていないとも話してくれた。
昔は社名に縁起のいい言葉をつける風習があったそうだ。”丸島工務店”の由来はなかなか興味深いものであった。
②これからの方針
島戸さんは社長に就任した時点で丸島工務店に19年、その前は同業他社に8年努めていた。社長に就任して2年がたった今、これからの丸島工務店について聞いてみた。現在は土木工事業と不動産業が主軸とのことだ。
「土木事業では毎年、瑞穂市から官公庁のお仕事を落札させていただいています。20年以上前の穂積町の時代から携わっています。」行政ともお仕事をしていると話してくれた。
瑞穂市にまだ統合されていない時代からのお父様が積み上げてきた信用・信頼があるとのことだ。先代の努力を二代目として受け繋いでいく。継承した途端にそれまでの積み上げが崩れることも少なくない。島戸さんの努力が垣間見えたエピソードだった。
「不動産業については自社で土地を買って、そこを宅地化して販売するということを行っています。」
丸島工務店では造成工事等を行い宅地化を行っている。その際に自社のノウハウを活かしていると教えてくれた。
「うちは工事もできるので、土地を買って綺麗にして宅地として提供できるのがうちの強みです。」
「他社さんだと建設会社が一枚噛んで単価が上がっちゃうんですけど、うちは自社で一貫して行っているので他社よりも早くお値打ちに行えます。今後はどんどんやっていきたいなってのはあります。」
元々やっている土木工事を活かした強みなのだと話してくれた。
質を落とさずコストを下げる。いわゆるワンストップ化を実現しているのだ。この不動産業がきっかけで新たな土木工事の仕事を生み出している。仕組みとして理想的で、これこそ「三方良し」と言い切れるビジネスモデルではないだろうか。この不動産業は、今後の展開も楽しみである。
そんな丸島工務店の強みを尋ねてみた。
「若手が多いっていうのが強みですね。業界的に人手不足なので珍しいんです。」「休みをしっかり作ってます。天候に左右される仕事なので、雨続きだと工事が進まない事もあるから時々つらいんだけど(笑)」
経営者として葛藤はあるようだ。しかし、”進みが遅いくらいなら休んだ方が逆に効率があがる”と考えているとも話してくれた。”働く人”のことを考え休みを充実させていることに感銘を受けた。しかし、このお話で疑問に思ったのだが、建設業は納期に厳しい印象が強いのだ。その辺をどうしているのか尋ねてみた。
「うちは元請けが多いので、コントロールが出来ることが多いですね。」これまでのお話が実現しているのもこれで合点が行く。
建設業はゼネコンとよく耳にするが、元請けから二次請け・三次請けと下請けがピラミッド状に仕事が分配される仕組みが多い。その下請けの場合は予算も納期も厳しいが、自社が元請けで自社施工となればそのレールから外れるのだ。長年積み上げてきた信頼と、自社で仕事を生み出す仕組みを確立しているからこそ、元請けを実現しているのである。
③人生の転換期
島戸さんと話していると、会話がとても上手く雰囲気も落ち着いており、既に長年経営者をしていた人のような印象を受ける。どうしたら社長就任2年目でこれほどになれるのだろうか?と疑問に思いながらその価値観に触れてみる。
「元々現場で作業をしていたんですけど、やっぱ現場に出て作業をして、ゼロから作り上げていくっていうのが1番楽しいですね。」「月並みですが、いつも綺麗な仕事をしてくれてありがとうと言ってもらえることが1番嬉しいです。」
お仕事でやりがいを感じることを話してくれた。
作り手として楽しめて、完成後の達成感があるということは非常に大切である。現在は社長業で営業などに出向くため、現場に出る機会は少なくなったのだという。
「今は営業に力を入れてます。営業っていっても正直何をすれば良いのかよくわかっていないんですよ(笑)。」
「紹介してもらったり、趣味のゴルフで繋がりを広げていったりとかが1番多いですね。」
「やっぱり大切なのは人との繋がりですね。たとえ、仕事に繋がらなくてもその人から学べることがたくさんあるので縁は大事にしています。」
笑いながらそう話してくれた。
島戸さんには人を引き込む魅力がある。昔から話すのが得意だったのか尋ねてみた。
「元々人と関わるのは苦手でした。10年前に僕が変わるきっかけをくれた人がいて、その人と出会って人の前に出るようになりました。」
とあるキーマンの方が島戸さんの人生を変えてくれたのだという。今の島戸さんからは想像がつかない。そのキーマンの方とはどんな人なのかを聞いてみた。
「有名な会社の社長をしていた方です。当時その方のブログを読んで話してみたいってずっと思っていたんです。そうしたら、妻に声かけてみたら?って後押しされてメッセージを送ったんです。」
そのキーマンの方は、当時コンサル会社を立ち上げていたが、お仕事を依頼したわけではなかったのだという。人生が変わるほどの的確なアドバイスが出来るのはコンサル会社の社長として説得力がある。それもそうだが、お仕事以外でそんなアドバイスをしたくなってしまう、島戸さんの熱意とお人柄がすごいと分かるエピソードだった。
また、奥様の後押しがあってこそ今があるとも言える。島戸さんは奥様と仲が良く、色々な面でサポートしてくれる良きパートナーであると話してくれた。島戸さんの人生が変わったきっかけは、そのキーマンだけではなく島戸さんを支えてくれる周りの人達あってこそではないだろうか。”人とのつながりは大切”この言葉がしっくり来るエピソードだ。
「時々、仲のいい社長さんを招いて異業種交流会みたいなことも行っています。」
「僕が純粋にそういうのをやるのが好きで、自分が主催で声かけて会場も押さえたりします。」
参加人数は30人以上になると聞きとても驚きだ。島戸さんだからこそそれだけの人数が集まってくれるのであろう。
なぜそんな会を開くのか聞いてみると「人とのご縁を繋ぐ場を設けたいから」と話してくれた。
これには驚かされた。島戸さん自身が何かを得る為に開催している訳では無く、誰かの為に開催しているのだという。”誰かの為に提供する”という姿勢なのだ。島戸さんが支えられているのと同じように、島戸さんご自身が周りを支えている面も大きいのではないだろうか。無意識のうちにギブアンドテイクが成立しているのかもしれない。無意識であるほうが、変な感情が入らないため理想的である。島戸さんのそういったお人柄は是非真似したいと感じた。
④巻き込む力
長年住んでいる瑞穂市について、どう思うのか尋ねてみた。
「駅があって国道21号線もある。アクセスがすごく良と思います。しかし、なにか特徴があるかといえばそうでもないんです。ベッドタウンなのでもったいないなという気がする。もっと瑞穂市を盛り上げていきたいんです。」「実は地域活性化の為に、”未来がある ミズホズミ”っていう団体を立ち上げたんですよ。」
瑞穂市を盛り上げて行きたいと思って団体を立ち上げたのだという。本当に凄い行動力だ。
団体について聞いてみた。
「仲のいい会社の社長さんに声をかけて話しをして、一緒にやろう!ってなりました(笑)」「瑞穂市にもっと定住して貰うためのまちづくりを発信していく団体です。」
瑞穂市の島戸さんとお付き合いのある社長が集まっている団体なのだ。周りを巻き込むほどの行動力と、賛同してもらえる島戸さんのお人柄はやはり凄い。
「自分達に何が出来るかはこれから決めていきます。今できることとして月一で清掃活動は行っています。」
もう既に行動を始めている。規模ではなく、まずは自分達に出来ることからやるという点でも本気度を感じる。
「将来的にはイベントを開催したいです。でも、わからないことばかりなので、まずはボランティアで手伝わせてもらって勉強させてもらってます(笑)」
また穂積駅で行われている、夜市ではボランティアとしてサポートに入るとも話してくれた。
“やるからには最高のイベントにしたい”という想いが感じられる。周りを巻き込んで団体を作るなど、なかなかやろうとしても出来ることではない。島戸さんの行動力には本当に驚かされる。
⑤叶えたい夢
島戸さんに将来の目標を尋ねてみた。
「会社の従業員は倍ぐらいにはしたい。あとは、55歳で自社事務所を建てたいんです。」「仲のいい設計士さんに頼んで自社事務所を建てるっていうのが僕の夢ですね。」
繋がりのある人とみんなで作りたいとも話してくれた。
みんなで作るということは、島戸さんのお知り合い同士が繋がることになるだろう。島戸さん個人の人脈が、1つのコミュニティーになる日も遠くはなさそうだ。ぜひ実現して事務所が出来た時には、改めてお話をお聞きしたい。
「地域活性化に取り組みたいです。周囲から議員になれって言われるんですけど、僕は議員にはなるつもりないです(笑)」
とは言いつつも「数年後にはなっているかも知れない」とも話してくれた。
無責任なことはあまり言えないが、もし島戸さんのような人がなってくれたら、多くの人を巻き込んで地域活性化をやり遂げてくれるのかもしれないと期待してしまうのだ。今後の動きに注目したい。
今回お話を聞いて、社長に就任して2年がたった今でも歴史ある丸島工務店の良さはそのまま活かされており、強みを生かした新しい仕組みが確立している。
地域活性化も、島戸さんの行動力とお人柄があってこそであり、これからどんどん大きくなりそうだ。その裏では支えてくれる人がたくさんいる。
島戸さんの巻き起こす風で、丸島工務店と瑞穂市が今後どうなっていくのか、目が離せない。
詳しい情報はこちら