キッチンカー文化を街へ提案する「株式会社メルカート」を訪ねてみた。
キッチンカーオーナーと出店先を繋ぐほか、キッチンカー全般の業務を担う企業だ。本日は代表取締役を務める森智彦(もり ともひこ)さんにお話を伺った。
- 青空市場のように賑わうキッチンカーを目指して
- オーナーと出店先にともにメリットをもたらす
- 23歳でキッチンカーを買う
- キッチンカーの可能性を追求して
- 今後の展望は?
①青空市場のように賑わうキッチンカーを目指して
まずは森さんに社名の由来をお尋ねした。
「メルカートっていうのは、ヨーロッパの青空市場のことです。キッチンカーは晴れていた方が元気に商売ができると思ったので、晴れと賑わいをイメージされる青空市場”メルカート”と名付けました。キッチンカーはつまりカートでもあるので、語呂もいいですよね。メルカートの、カート、の部分です。」
賑わいを作っていきたいという想いをこめて、メルカートと名付けたのだという。
「弊社はキッチンカーに関わる事業を専門に行っている会社なんです。一番メインの事業が派遣事業です。キッチンカーのオーナーさんと出店先をつないでいく仕事です。あとは弊社でキッチンカーを持っておりますので直営で運営をしたりとか、キッチンカー車両の製作を手掛けたり、看板作ったりとかをやっているんですけど、そのすべてがキッチンカーに関わることですね。」
「キッチンカーのオーナーさんって、キッチンカーを買ってきて、メニューを考えて、料理の試作してみて。で、いざって時に、よし、あれ?出店先がないぞっていう壁に当たってしまうんですね。キッチンカーで出店する準備が整っても出店をする場所がない。キッチンカーのオーナーさんが最初に困るっていうことを知っているので、キッチンカーオーナーと出店先をつないで派遣をしてあげる仕事があると円滑に回るんじゃないかなと考え、派遣事業をしています。」
キッチンカーのオーナーにとても寄り添ったお話だった。
②オーナーと出店先にともにメリットをもたらす
キッチンカーの運営や営業について、森さんにもう少し詳しく伺う。実は森さんが寄り添っているのはキッチンカーのオーナーだけではないという。派遣で繋ぐ両者にとって嬉しいポイントを提供している事業なのだそうだ。
まずはオーナーさん側にとってのメリットを聞かせてもらった。
「キッチンカーのオーナーさんに登録をしてもらって派遣を行うことのメリットは何かというと、キッチンカーオーナーさんが自分で探してきた出店先にプラスアルファとしていろんな情報がうちから流れていきます。今度何月何日、どこどこでイベントがあるので出店募集しています、のような情報を随時お伝えできるんです。あとは大学とかオフィスへのランチ派遣もやっています。中には大手の企業さんや大型イベントもありますので、始めたばかりのオーナーさんにもチャンスをお渡しすることができます。」
さらに主催者側のメリットもこう語る。
「逆にですね、主催者さんの方からすると、キッチンカーオーナーさん一人ひとりの事ってなかなかわからないじゃないですか。出店時にオーナーさんの面接をするわけにもいかないし。それで、どこか頼める所はないかなということで、うちに頼んでもらってます。メルカートが間に入ることによって1枚フィルターをかまして、安心をしてもらい紹介させていただくという形です。」
「あとはオーナーさんたちには営業許可や保険には必ず入ってもらうようにしているので、主催者さんには安心してもらえるような状態を作っています。まず、安心して入れられるというところと、あとはキッチンカーの偏りを防ぐことができますね。イベントによってもちろん違ってくるんですけど、例えば主食が半分いるよね。あと、軽食がいるよね。あとデザートとコーヒーがいるよね、みたいな。基本的にはこういう比率で入れていくといいよねっていうのが決まっています。例えば、唐揚げやさんばっかりの価格競争の場、みたいなことを防ぐことができるんです。」
キッチンカーの派遣を行う専門の業者が間に入ることによって、様々なことが円滑に進むようだ。キッチンカーオーナー、主催者、さらには来場するお客様まで楽しくキッチンカーで買い物ができるように計らいをしているという。
③23歳でキッチンカーを買う
キッチンカーの派遣会社という珍しい業界で起業をされたのは、森さん自身の経験が大きなきっかけとなっているという。森さんは23歳の時に自らキッチンカーを購入し事業を行った経験があるそうだ。
「僕も23歳の時に、1台キッチンカーを買って事業を始めてみたんです。きっかけは何か商売をしたいなっていう思いでした。たまたま友達みんなで遊びに行ったところに、キッチンカーが出てたんですよ。それで、そのオーナーさんと話していろんな話を聞かせてもらって面白い仕事だなと思ったんです。僕にもキッチンカーで事業がきるんじゃないかなっていう思いで、固定店舗じゃなくてキッチンカーの方が自由度も高いし、ワクワクするし、楽しそうだし、やれるんじゃないかなって考えて購入しました。」
期待に満ち溢れたキッチンカー事業。しかし現実は出店場所探しで大いに苦労をされたそうだ。
「できると思ってキッチンカーを始めたんですけど、上手くいかなかったんです。車でいろいろ回ってここの場所ならやれるかなと思って出店を頼んでみる、断られる。場所を探す、断られる。の繰り返しで、全然出店できる場所が見つからないんです。出店ができるところが限られているので、ここの地域のお客様とちょっと相性悪いよなって思っても選択肢がない。というところもあって、やっぱり”場所を紹介してくれる場所がある”ってすごい大事なことだよねって気がついて。まあ場所を紹介するような仕事を作っていこうっていうところで本当にスロースタートで始めましたよ。」
森さんが当時した遠回りをせずに、キッチンカーオーナーをサポートしていきたいという思いのもと、今もお仕事をされているそうだ。
④キッチンカーの可能性を追求して
キッチンカーが大好きだという森さん。キッチンカーのすごいところや可能性をたくさん聞かせてくれた。まずは東日本大震災で気が付いたというエピソードを話してくれた。
「東日本大震災の時に、キッチンカーオーナーさんからたくさん問い合わせが入ったんですよ。ボランティアでもなんでもいいから被災地に行って支援したいんだけど、なんとか音頭をとってくれないかって。実際に災害が起きた時っていうのは何が起こるかというと、恐らく避難所に来てくださいとなって、備蓄されたお米とかお水とかを受け取ることができると思うんです。その日のお昼ご飯も夜ご飯も、次の日もきっとありがたいことに食べるものをもらうことができますよね。災害に遭われた方に話を聞くと、そういう食事はだんだんと喉を通らなくなるそうです。そんな時にキッチンカーにできるのはなにかというと、食事を提供してお腹を満たしてあげるのと同時に心を満たしてあげるというか、どちらかというと精神衛生的なフォローができるのがキッチンカーのいいところかなって思っています。」
森さんもオーナーさんも当時、ボランティアで被災者の助けになりたいという素晴らしい思いを抱えていらっしゃったという。実際には時間がかかってしまったが、困難の末、現地の人たちに温かい食事を届ける事ができたのだそうだ。震災を期に被災地への温かい食事の提供がいかに必要なのかを思い知らされたのだと話してくれた。
復興後、森さんは助けが必要な場所へできるだけスピーディーに出向くことができるようさまざまな方面とも協定を結んでいる。
「人が作ったもの、温かいものを人の手で直接お渡しできるところがキッチンカーの良いところです。そういったものを提供することで、ちょっと安心してもらえる。今日を明日を頑張ろうって思ってもらえる活力になればいいかな、というふうな思いで、こういった活動もさせていただいています。」
さらに女性の社会進出や若者の起業支援にもキッチンカーは可能性を秘めているのだという。
「被災支援だけではなく、キッチンカーは社会的にもっと役に立っていける存在だと思います。女性の社会進出とか若者の起業支援、地域のにぎわい創出とか。テント屋台よりもキッチンカーの方が設備も整えられるので、提供できるメニューが多いんです。キッチンカーは営業許可の許可範囲が広がります。車から重たい器具を積み下ろしせず、備え付けなので到着してすぐ営業することができ負担が少ないんです。それで女性のキッチンカーオーナーさんもどんどん増えてきているんですね。開業資金の面でも、固定店舗と比べると安いんです。車が必要なのでテント屋台よりは高くなってしまうけれど、固定店舗はもっと資金が必要なんですよ。お店の範囲が広くなるし、厨房機器にかかるお金も多い。敷金礼金が必要だったりとか、お客様にイートインのテーブル、椅子を用意したりとかいろんなところにお金がかかってきます。それと比べるとキッチンカーは安く開業できるというところがあって、若者でも開業しやすいんです。」
キッチンカーの楽しさや利便性など、たくさんのお話を聞かせていただくことができた。
⑤今後の展望は?
株式会社メルカートと森さんは、どのような未来を見つめているのだろう。最後に森さんが大切にしている考えについて質問をした。
「どうしたらできるかを考える、ということを大切にしています。やりたいことがあるのなら、できる方法を考える。試行錯誤する。あとはなんとかなるんですよ!」「メルカートはキッチンカーでできることをまだまだ探していきながら実現していくというような会社です。キッチンカーにはこれだけの可能性があるので、そこの可能性を信じて、実現する。しっかり努力していいものを提供することがちゃんと報われてやっていけるような土壌づくりだけはしておきたいなと思っています。」
かつてご自身もキッチンカーオーナーだった経験から、新しく誕生するキッチンカーオーナーがちゃんと報われてやっていけるような土壌づくりをしたいのだという、熱い思いを聞かせてもらうことができた。森さんは今後もキッチンカーの可能性を追求して、試行錯誤をし続けるのだろう。ますますキッチンカーオーナーに寄り添った企業となるに違いないと感じるお話だった。
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