大人のお洒落な隠れ家カフェ「SUNDAY MONDAY」を訪ねてみた。
- 12席の小さなお店からスタート
- 食べ歩きの蓄積から生み出された料理
- ネットで絶賛! ドレッシングの秘密
- ドレッシング販売でコロナ禍を乗り切る
- 関市の新しい社交場に
岐阜県関市にあるカフェ「SUNDAY_ MONDAY」をご存知だろうか。カジュアルな空間ながら、本格的な料理を楽しめると話題のカフェだ。今回はオーナーでありシェフでもある、高井聖哲(たかい まさあき)さんにお話を伺った。
①12席の小さなお店からスタート
錆びが良い感じに出た味のある青緑色のドアを開けると、店内にSuchmosの曲が流れていた。オーナーの高井さんは音楽が大好きで、店にはDJブースがあり、DJイベントを開催することもあるという。
壁にはサーフボードや梯子が立てかけられており、スペースの仕切りには金網や鉄格子が用いられている。無骨な雰囲気だが決して古臭さはなく、どこか暖かさや、懐かしさを感じさせる。まるで大人のために用意された、秘密基地のような空間だ。
「SUNDAY MONDAY」がオープンしたのは、2014年。築70年の建物をベースに作られた。
「ここは、もともとは実家だったんです。祖父の代から続く仕事場があったのです。その家業は弟が引き継ぎ、別の場所で事業をすることになったので、ここをお店にしようと考えたんです。」
築70年だったこともあり、リノベーションが必要な箇所もあったが、実家が建築関係だったこともあり、工具は一通り揃っている。
「自分で直せるところは自分で直しました。大掛かりな部分は大工さんにお願いしました。大工さんに入ってもらっている時は絨毯や使用する板を指定するなど、現場監督のように動いていました。」
オープン当時は12席のみ。しかも4人掛けのテーブル席は1つだけ。奥は倉庫になっていて、ダンボールが積み上げられている状態だった。
嬉しいことにお店がお客様でいっぱいになってしまったため、高井さんはリサイクルショップでテーブルと椅子を買って設置した。当初はまだエアコンもない状態だったという。
「最初はお客様に『ダンボール置きっぱなしですが、それでもよければどうぞ』と言って奥の倉庫に通していました。そしたら、なぜか”映える”と人気が出て、予約時に『裏の席がいいのですが』とリクエストされるようになったんです。」
隠れ家的な雰囲気のお店を求めるニーズが、ちょうど合致したということなのだろう。お店の内装は、2020年に高井さんが自身でリニューアルしている。ちょうど緊急事態宣言が発令され、多くの飲食店がお店をクローズせざるを得なかったタイミングだ。
「コロナはいずれ明けるはず。それなら、閉めなきゃいけない今のうちにやってしまおうと思ったんです。」
自分のお店を持ち、自分の手で改装する。はたから見ると楽しそうに見えるが、何度もお店を辞めてしまおうかと考えたという。しかし、口コミから「SUNDAY MONDAY」のファンがどんどん増えた。それが、今の高井さんの支えとなっている。
②食べ歩きの蓄積から生み出された料理
今はホームページを持っている飲食店も多いが、「SUNDAY MONDAY」にはホームページがない。ただ2015年からInstagramを運営しており、フォロワーはなんと5000人を超えている。
そこには、鶏白湯の冷製パスタ茄子のタタキと薬味のせ ・焼きナスとポルチーニ茸のペーストの冷製パスタ・飛騨牛と瑞浪ボーノポークのハンバーグ・牛テールと牛タンのパキスタン風カレーなど投稿を見ているだけで、お腹が空いてくる写真がずらりと並ぶ。冬はオニオングラタンスープもイチオシだ。
決まったジャンルはなく、麻婆豆腐やよだれどりのような、中華料理も作っているのが特徴だ。すべて、高井さんが自身の手で作っている。
しかし驚くことに、高井さんは飲食店で修行した経験がないという。ではどうやって、おいしい料理を作る方法を身に付けたのだろうか?疑問をぶつけてみると、高井さんはこう答えた。
「実は僕、食べ歩きがめちゃくちゃ好きなのですよ。いろんな美味しいものを食べ続けて研究していたら作れるようになったんです。」
高井さんは若い頃から毎週、休みのたびに食べ歩きにでかけ、おいしいご飯を食べてきた。国内のみならず、時には海外にも食べ歩きの旅に出かけている。そこでおいしいと感じたものを自分で作り、お店に出すのだ。誰かに教わっていないからこそ、決まった型に囚われず、料理の垣根を越え、自由な発想で料理を作れるのだろう。
③ネットで絶賛! ドレッシングの秘密
ネット上にある「SUNDAY MONDAY」のレビューで、お客様が口を揃えて言っているのが「サラダのドレッシングがめちゃくちゃおいしい!」というものだ。中には「ドレッシングをなめながらワインを飲める」と絶賛している人もいる。
そしてここにも、高井さんのライフワークであり”ライスワーク”でもある”食べ歩き”が活かされている。
「SUNDAY MONDAYをオープンするずっと前なのですが、20代のころに訪れた、あるお店のサラダにかかっていたドレッシングがすごくおいしかったんです。本当に美味しすぎてしばらくそのお店に通って研究していました。うちのドレッシングは、そのお店のものをイメージして作っています。そこのお店ではキャベツにドレッシングをかけていたのですが、うちはルッコラとか、サニーレタスとか、いろいろな野菜に使っています。」
高井さんが通い詰めたそのお店は東京にあるそうで、今はお店が忙しいためなかなか行けないという高井さん。まだそのお店が残っているかどうかはわからないのだという。
「もしかしたら、僕が今そのお店で、ドレッシングがかかったサラダを食べても『あれ?なんか違う、こんな味だったかな?』と思うかもしれないですね。」
自分が美味しい!と思ったものを再現できる力。そしてそれをそのまま出すのではなく、自分なりの解釈を加えて出すアレンジ力その全てが素晴らしいのだと感じ高井さんに伝えると「そんなことはないですよ」と謙遜するが、高井さんのセンスが「SUNDAY MONDAY」の強みだと言えるのではないかと感じた。
④ドレッシング販売でコロナ禍を乗り切る
コロナ禍のタイミングで「SUNDAY MONDAY」を改装した高井さん。そしてもう一つのチャレンジは、お店のドレッシングを販売することだった。
「お客様が自分の家でサラダを作り、ドレッシングをかければ「SUNDAY MONDAY」のサラダをいつでも食べられるよう、テイクアウトで買えるようにしたんです。」
もともと「SUNDAY MONDAY」には、サラダを予約して持ち帰る常連さんが何人もいた。そのことが、ドレッシング販売のヒントに繋がったのだという。
「ドレッシングを販売してみたら、めちゃくちゃバズったんです。金曜日から日曜日だけ販売していたのですが、200個以上売れていました。水曜日と木曜日は、ドレッシング作りにあてていました。お客様が自分のInstagramで紹介してくれて、一気にフォロワーが1000くらい増えて、すごくありがたかったですね。」
さらに巣ごもり需要に合わせ、ドレッシングだけでなく、一緒に買えるおつまみを用意した。
また、ドレッシングをおいしく活用でき、真似しやすいレシピを、Instagramで紹介。「この材料がなければこれで代用すればいいよ、それもなかったら無しでいいよ」とお客様目線に立ったアドバイスから、高井さんの人柄がにじみ出ていると感じた。
コロナ禍で緊急事態宣言が長引いていた頃、飲食店の中には、これをきっかけに閉めてしまうお店もたくさんあった。しかし「SUNDAY MONDAY」の場合、ドレッシングの販売が好調だった為、まったく閉店は考えなかったという。
「もちろん、これからどうなるのだろうという不安はありましたし、実際かなり大変でした。でも自家製ドレッシングが口コミで広がっていくのを見て、今までやってきて本当によかったと心から思いました。」
未曾有の事態を、知恵と工夫、そして人柄で乗り切ったのだ。現在はコロナ禍の頃のように大量に販売はしていないが、今もお店でドレッシングの販売を続けている。
⑤関市の新しい社交場に
「SUNDAY MONDAY」の客層は幅広い。一番多いのは30代から50代だが、お昼を食べに来る中学生、テスト期間を利用してやってくる高校生、上は60代、70代の方も足を運んでくれるのだという。
夜は予約のみ受け付けている。コースにフリードリンクが用意されており、ほとんどのアルコールが飲み放題なのも嬉しい。VIPルームの用意もあり、有名人がお忍びで来ることもあるのだという。
お店の経営は順調に見えるが、高井さんは今でも不安になることがあるという。
「3日くらい暇な日が続いてしまうと、めちゃくちゃ不安になります。不安は常にあるので、何かを変えていかなければ、という気持ちがあります。ただ、何かを変えることって本当に難しいですよね。ポンポンとアイディアが出てくる人は、天才だなと思います。僕はそういうタイプではないのですが、少しずつ変えていきたいと思っています。」
その1つが、お店の上にある住居スペースの活用だ。しばらくの間は友達家族に貸していたが、今は空いているのだという。一階のお店同様、高井さんが少しずつ手を加え「シェアハウス」にしていきたいという計画があるようだ。
「この建物のポテンシャルを活かして、今後もいろいろやっていきたいですね。」
筆者も現在改装中の住居部分を拝見させていただいた。元々部屋があった場所を減築し、大きなバルコニースペースに改装されていた。また、貸出予定のお部屋を一室覗かせていただいた。こちらのお部屋の家具も高井さんこだわりの物だった。料理やお店のスペースだけならず、シェアハウスも高井さんのセンスが光る空間となっていた。
トレンドの最先端を行っているように見える高井さんだが、本人は「むしろ僕はダサいと思っています。インスタでお洒落な人を見ると落ち込みます」と、とても謙虚。そして将来的にはうどん屋をやりたいのだという。
「うどんとか、うなぎとか、焼肉とか、流行にとらわれないお店を作りたいんです。その分、よりシビアに味を求められます。そこにチャレンジすることが最終的な僕の目標です。」
何度か香川県でうどんの食べ歩きもしており、1日に15件回ったこともあるという。今はお店が忙しくてなかなか食べ歩きには行けないが、それでも間を見つけて友人たちとお酒のイベントに行くなど、研鑽を続けている。
「いつも、お客様を笑顔にするにはどうすればいいかを考えています。居心地良く、笑顔で過ごしてもらえることが一番です。僕も、自分が「SUNDAY MONDAY」にランチに来て、このあと急ぎの用事がなければ、ずっとここでダラダラ過ごしてしまうと思いますね(笑)」
関市の新しい遊び場、社交場になればという想いを持って「SUNDAY MONDAY」を営んでいる高井さん。お店が醸し出す居心地の良い空間に、ぜひ浸ってみてほしい。
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