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オーガニックで世界とつながるグロサリー「Bueno Verde」を訪ねてみた。

オーガニックで世界とつながるグロサリー「Bueno Verde」を訪ねてみた。
TOM
TOM
グロサリーって初めて来たけど、おいしそうなものがたくさんあるね!
SARA
SARA
世界からオーナーが厳選した商品で、安心して買えるわね。
TOM
TOM
じゃあ僕の手作りハチミツも、頼んだら置いてもらえるかなぁ♡
SARA
SARA
仕上げに砂糖をワサワサ投入しなければ置いてもらえるかもね……。
この記事は約8分で読めます。
岐阜市金園町にある「Bueno Verde(ブエノヴェルデ)」をご存知だろうか。
フェアトレードのコーヒー、オーガニックソープ、手作りジャム、環境に優しいクリーニング用品など、さまざまな商品を提供している「グロサリー」だ。今回はオーナーの大橋 純(おおはし じゅん)さんにお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • いつもの暮らしに世界の「いいもの」を
  • コロナ禍も無理せず自然体で楽しむ
  • オーガニックを「特別」から「当たり前」に
  • たとえ小さくても、届けたい人たちのために

①いつもの暮らしに世界の「いいもの」を

 

「Bueno Verde」の商品は、オーガニックや自然派志向、伝統的な製法にこだわったグロサリーだ。地域特有の特産品を中心に構成されており、健康や環境に配慮したラインナップが特徴だ。

 

カンボジアの胡椒、イビザ島の塩、リトアニアのてんさい糖、シチリア島のチョコレート……さまざまな国や地域の商品が店内に並び、商品を眺めているだけで、自分の世界が少し広がったような感覚になる。料理が好きな人なら、なおさら楽しいだろう。

 

オーナーの大橋さんが厳選した商品は、パッケージもパッと目を惹くおしゃれなものが多い。​自分で使うのはもちろん、大切な人へのプレゼントとしても喜ばれるだろう。実際に、送別会などのプレゼントで「Bueno Verde」の商品が選ばれることも多いという。

 

なお「グロサリー」とは、食料品・生活雑貨・日用品を扱うお店のこと。日本ではなじみの薄い言葉だが、英語圏では日常的に使われている。

 

オーナーの大橋さんに、まずは「Bueno Verde」の由来についてうかがってみた。

 

「Bueno(ブエノ)は良い、Verde(ヴォルデ)は緑を意味するスペイン語です。オーガニック系の食品を扱っているので、緑色を連想して付けました。もともと食品系のお店にも興味があって、コロナで時間があった2021年にオープンしました。」

 

「Bueno Verde」は、シェアスペース「KANAZONO KOLLEKTIV」の中にある。そして大橋さんは「KANAZONO KOLLEKTIV」自体のオーナーでもある。

 

「良い物件を探していて、見つけたのがこの「KANAZONO KOLLEKTIV」の建物だったんです。ただ、こんなに広くなくてもよかったので、一緒にやれる人はいないかなと探して声をかけたら見つかったので、1棟まるまる借りました。3階は結構ボロボロで、雨漏りとかもしていました。もともと借りるときに、3階は物置ぐらいしか使えないという条件付きだったんです。直すんだったら使ってもいいけどという感じでしたね。」

 

そんな大橋さんは、学校を卒業後、ライブハウスに就職した。その後2013年に、愛知県一宮市でカフェ&バーとレコードショップを併設した「slow room」をオープンさせる。ワールドミュージックを中心に幅広いジャンルの音楽を扱うお店だ。

 

「もともと自分でライブハウスをやりたいと考えていて、そこに就職しました。店長をしていたのですが、途中からライブハウスをやるよりも、こじんまりと音楽をかける店をやりたいという気持ちに変わっていったんです。そしてたまたま一宮で知っているバーの人が辞めるという話を聞いて、それをそのまま引き継ぐような形で譲ってもらったんです。」

 

「slow room」は数年後、岐阜市に移転。現在も営業を続けている。カフェ&バーの経営だけでも大変だと思うが、なぜ新たにグロサリーを始めようと思ったのだろうか?

 

「もともと、カフェ&バーを始めたのは、ベジタリアンのためのお店を作りたかったからです。当時はお肉を排除して、野菜中心の生活をしていました。今はゆるくなりましたが。当時は若かったので、人と違うことをやりたいという気持ちがあったんです。その頃からすでに、世界各地から調味料などをを取り寄せていました。それをしっかりグロサリーとしてやりたいなと思ったんです。仕入れは同じなので、グロサリーとカフェ&バーで循環できますからね。」

 

もともと音楽に興味があって「slow room」を訪れたお客さんが、オーガニックに関心を持つ……そんな相乗効果も期待できそうだ。

 

②コロナ禍も無理せず自然体で楽しむ

 

「Bueno Verde」がオープンした2021年は、まだコロナ禍が続いていて、今後どうなるかがわからなかった。そのような状況でお店をオープンさせることに、不安はなかったのだろうか?

 

「特になかったですね。そんなに大きなことをやっているわけではないですし、失敗したとしても大したことではありません。借金してまでやっているお店ではないので。これまで、一度も借金をしたことがないんですよ。」

 

すでに「slow room」「Bueno Verde」そして「KANAZONO KOLLEKTIV」の3つを経営していて、借金をしていないのは驚きだ。

 

「逆に、僕はコロナの時期を結構楽しんでいました。確かに飲食の方は厳しかったですが、その分、レコードが通販ですごく売れたので。普段とは全然違う動きができましたね。ただ、レコードの売上が増えた分、本来受けられる支援が受けられず、しんどい部分もありましたけどね(笑)。」

 

確かに「巣ごもり」と音楽は相性が良い。コロナ禍をきっかけに、インターネットを通じて新たな音楽に触れた人も多いのではないだろうか。

 

「実は岐阜に移転して、1年くらいでコロナ禍になったんですよ。もともと移転後の1年は、売上を出す前の種まきの時期のつもりでいました。売上げが下がったとか、そういう状況でなかったというのもあるかもしれませんね。」

 

決して無理せず、あくまで自然体。大橋さんのスタイルは、まるでこのお店に並ぶ食品や日用品たちのようでもある。

 

③オーガニックを「特別」から「当たり前」に

 

「Bueno Verde」の強みといえば、やはり世界中から取り寄せられた自然派食品のラインナップではないだろうか。

 

「うーん、強みというか、戦いに行っていないですね。ハマる人がいればいいなという気持ちです。」

 

「戦っていない」と語る大橋さん。SNSも、そこまで積極的ではない。

 

「いったん発信しだすと、ずっと発信し続けなければいけませんよね。それにSNSのトレンドで情報を得る人って長く続かないイメージがあります。それよりも「見つけてもらいたい」という想いがあります。」

 

たくさんの人に広く浅く……よりも「Bueno Verde」に並ぶ商品を本当に必要とする人に届けたい、という価値観なのだ。

 

自然食品というと、何となく日本産にこだわったり地元の素材を使うようなイメージがある。しかし「Bueno Verde」は世界各国から、大橋さんが良いと感じるものを取り寄せているのが特徴だ。

 

「正直に言って、僕は日本のオーガニックはまだまだこれからだと考えています。もちろん全てがそうだとは言いません。しかし全体的に見るとやはり遅れています。他の国では普通にやっていることが、未だに浸透していないと感じています。「日本でも当たり前にオーガニックや自然なものが選べれるようになってほしい」という想いを込めて、このお店を経営しています。」

 

もちろん、日本にも素晴らしいオーガニック製品はある。「Bueno Verde」では日本のオーガニック商品も多数取り揃えている。

 

店内には常に50種前後の商品が並んでいる。人気の定番商品だけでなく、夏には虫よけ、バレンタインの時期にはチョコレートなど季節に合わせたラインナップがあるのもうれしい。

 

ただ、世界の円安や物価高の影響もあり、なかなか大変な面もある。

 

「年に2、3回値上げした会社もあります。ただ、お客様は値段で判断しない人も多いので、あまり気にしていません。値段を気にするような人は、今は続かないかもしれませんね。」

 

届けたいターゲットは、やはり「本当にオーガニック商品が欲しくて来てくれる人」だろうか?

 

「そうですね。しかしまったくオーガニックに興味がなかった人に『1回試してみたら?』という気持ちもあります。経済状況は人それぞれ違うのはわかりますので、無理には勧めません。ただ僕はお金のない時期からオーガニックは意識していました。」

 

「Bueno Verde」には、数百円から試せる商品もいろいろある。まずはそこから入ってみるのもよいかもしれない。

 

「オーガニックはどうしても「意識が高い人がするもの」というイメージがあります。しかし実際はもっと身近なもんです。僕は自分で実践することで、情報に惑わされず、自分で信じられるものを手にしていく癖がつきました。もし、もっと身体のことを大事にしたいと考えているのであれば、ぜひ試してみて欲しいですね。」

 

店舗には、そう語る大橋さんが誠実に選んだ商品たちが、丁寧に並べられている。まずは手にとってみてほしい。

 

④たとえ小さくても、届けたい人たちのために

 

大橋さんの今後の展望についてうかがってみた。多店舗展開を望んでいる感じではなさそうだが……。

 

「そうですね。「Bueno Verde」自体を増やすことは多分ないと思います。でもここがうまくいって、お金が貯まったら。また新しいことをやってみたいです。」

 

たとえばどのようなことをやってみたいのだろうか?

 

「やってみたいことはたくさんあります。実は昨年、名古屋の今池にある僕の好きな映画館が閉館してしまいました。若い頃は毎月、何を上映しているかを知らずにふらっと行っていたような、自分を育ててもらった映画館でした。そこが閉まっちゃったんです。もし、自分がお金持ちだったら……と痛感しましたね。」

 

自分に財力があれば・・・その気持ちは痛いほどよくわかる。確かに映画館も、昨今は大型ショッピングモールに併設された大きな映画館の影響を受けるなどして、閉館するところが多い。

 

「小さくて良いものが、大きなものに負けてしまうのは悲しいですね。自分を育ててくれたものに対して、何とか恩返しをしたいと考えています。」

 

最後に大橋さんの好きな言葉をうかがってみた。

 

「二兎を追うものにしか二兎を得られない、です。欲しいものを手に入れるために、何かを切り捨てるのは馬鹿げています。欲しいものは全て求めたらいいし、やりたいことは全てやったらいい、僕はそう思います。もちろん途中で『やっぱりやめた!』となるのもありです。ただ、無理をするのは不自然ですし、自分の気持ちに常に正直にありたい、自分を制限したくないといつも考えています。」

 

ちなみに、このインタビューをしたときはまだオープンしていなかったのだが、2024年3月、今池にあった「名古屋シネマテーク」の跡地に、新たなミニシアター「ナゴヤキネマ・ノイ」がオープンした。「名古屋シネマテーク」の元スタッフが関わった映画館で、新たな映画好きの聖地になりそうだ。

 

小さなお店が大きなお店に淘汰されてしまう流れは、残念ながら今後も止まらないだろう。しかし本当に良いものであれば、何度でも芽を出し、蘇る。そして本当にそれを必要としている人たちの元に届くはずだ。音楽や映画などのカルチャーに造詣の深い大橋さんが、この岐阜で次にどんなことをしようとしているのか、とても楽しみだ。

 

「KANAZONO KOLLEKTIV」には、「Bueno Verde」以外にもslow roomのレコード、セレクトショップ「Argile(アージル)」や帽子と包丁を扱う「vagrants」が入っている。きっとそこには、新たな出会いが待っているはず。

 

また、「Bueno Verde」2024年2月からはアルコール類の販売も開始。ナチュールワインやクラフトビールなど、ここでしかない商品に巡り会えそうだ。「日常に少しスパイスがほしい」と感じたら、ぜひ一度訪れてみてほしい。

 

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