創業127年!4代にわたる継承企業「有限会社やまに」を訪ねてみた。
創業127年を誇る4代続く伝統のある企業で、暮らしを豊かにする陶器や箸、スプーンなどを扱う問屋卸売業を営む会社である。今回は、代表取締役の小木曽 峻一(こぎそ しゅんいち)さんにお話をうかがった。
- 創業127年!4代続く伝統企業
- 父から引き継ぎ業績をV字回復
- 顧客のニーズのマッチングに注力
- 冷静な課題分析と新たな試み
- 「やまに」の存在価値を高めたい
①創業127年!4代続く伝統企業
「やまに」は1897年創業の、127年の歴史を持つ伝統企業である。創業者は小木曽社長の曽祖父で、当初は登り窯(陶器を焼く窯を山の斜面に沿って配置する形式)の製造業を営んでいた。
その後、社長の祖父が現在の問屋卸売業に転換。父がそれを引き継ぎ、4代目として小木曽社長が社業を受け継いでいる。現在は、陶器をメインに、箸やスプーン、ガラス食器などを扱っている。
「社名の由来は、山と関係がある登り窯を営んでいたことと、曽祖父の名前である福ニ(ふくじ)の漢数字の二を組み合わせて『やまに』としたそうです。また、当時この近隣では、屋号に『やま◯』を付けるしきたりがあったとも聞いています。」
120年以上の歴史を持つ企業ならではの興味深い逸話だ。しかし、小木曽社長は大学卒業後、すぐに家業を継がず、名古屋のWeb制作会社に就職している。
「当時は、家業を継ぐつもりはなく、Web制作の仕事に興味がありました。『やまに』が扱う産業も縮小傾向にあったので、周囲から継ぐことを勧められることもありませんでした。」
その後、25歳の2009年に「やまに」に入社。
「家業の人手が足りなくなったため、父から手伝ってほしいと言われ、戻ることを決めました。」
こうして家族のピンチに駆けつけた小木曽社長は、父と二人三脚で15年間事業を営み、40歳の2024年6月に社長に就任した。
現在、中学生の息子さんがいる小木曽社長。ゲームを一緒に楽しんだり、香港の展示会に同行するなど、仲が良いという。息子さんに「やまに」を継いでもらうことについては、こう語る。
「そのときに家業に価値を感じて継ぎたいと思ってくれれば継いでくれても良いという感じですね。私も前職を経験しましたが、Web業界の方が稼ぎやすい感覚があります。一方で、「やまに」の仕事にはリスクはありますが、自由に生活できる魅力もある。最終的には、本人が一番魅力を感じる道を選んでほしいと思っています。」
今後も「やまに」の社名を大切に守り、受け継いでいくと小木曽社長は話している。
②父から引き継ぎ業績をV字回復
2009年に「やまに」に入社した当時、BtoBの卸売市場は厳しく、人手不足やその他の要因で売上が低迷していた。業績を立て直すために、小木曽社長は以下の3つの大改革と対策を実行したのであった。
大改革と対策
1.BtoB市場からBtoC市場への移行、在庫体制の変更
(少品種大量在庫→多品種小ロット)
2.インターネット通販への参入
3.在庫管理や販売管理のシステムの自作
(効率化とコスト削減)
「楽天市場などのネット通販を利用して、BtoC市場に参入しました。それに伴い、在庫体制が多品種小ロットとなり管理が煩雑になったため、前職で培ったITスキルを活かして、在庫管理や販売管理のシステムを自作。商品の出荷や管理の効率化を図りました。また、自作することでコスト削減にも成功しました。」
これにより「やまに」の業績はV字回復を果たす。
「私が入社した頃は、効率的な出荷体制の構築や、ネット通販の拡大が進んでおり、さまざまな販売サイトでの強化を図りました。結果として、ネット売上の比率は0%から95%にまで上がりました。さらに、最近では陶器の海外需要もあり、売上の半分弱を占めるほどに達しています。」
ネット販売への先見性と、ITスキルを活かしたシステム構築により、時代のニーズに対応した経営を実現したのだ。
また、小木曽社長が入社してから、「陶ざえもん(すえざえもん)」というオリジナルキャラクターを生み出した。
「瑞浪市内に、陶器の陶と書いて、陶町(すえちょう)という地名があるのですが、岡崎のオカザえもんから着想を得て、陶ざえもんを作りました。うちのインスタグラムやマルシェに出展したときに登場させています。」
このキャラクターは、小木曽社長の同級生が結婚式の余興で作ったのがきっかけだという。ユニークでインパクトのあるキャラクターだ。
このように、小木曽社長は柔軟な発想から新たな施策を打ち出し、さらなる売上アップを目指している。
③ニーズのマッチングに価値を見出す
現在「やまに」のメインのお客様は雑貨店である。BtoC市場への進出後、競争が激化したため、これまでに培ったシステム化のノウハウを活かし、再びBtoB市場に戻った。
雑貨店の店主には、陶器が好きな方や生活を楽しみたい方が多い。そのため、陶器の魅力をわかりやすく伝える工夫が重要であると小木曽社長は話す。
「購入する方が利用シーンをイメージしやすいように、自社で写真を撮っています。その写真を使ってニーズがマッチングすれば、仕入元である雑貨店はお客様に提案しやすくなり、結果的にお客様は自分に合った商品と出会いやすくなります。」
このように、「やまに」・「雑貨店」・「お客様」の全てが三方良しとなるため、具体的な商品の使い方を提案する商品資料など、コンテンツ作りに力を入れている。
さらに、在庫管理についても、今の時代のニーズに応じた対応を行っている。
「多品種小ロット販売が雑貨店から求められています。また、お店ごとにニーズが異なるため、同じ商品が複数のお店で売れることはほとんどありません。」
「やまに」の倉庫には2000品目があり、各商品は40個ずつ管理されている。このような細かい対応が求められる中、「やまに」は時代のニーズに応じたサービスを提供し、信頼を得ているのだ。
④冷静な課題分析と新たな試み
時代のニーズに応じ、自社の価値を見出しながら売上アップを目指す小木曽社長。今後はSNSの発信力を強化したいと考えているが、やりたい事が多く、全てをやりきれないのが課題だという。
「何でも自分でやりたいという思いが強くて結局、多くのことが進まず中途半端な状態になってしまいます。これからは、どれをするべきで、どれをしないのかの優先順位を付けて、一つのことに集中して取り組もうと考えています。」
さらに、海外での拡販にも苦戦していると語る。
「直接海外の店舗に出荷できる体制は整っているのですが、そうした要望を持つお客様に出会えていません。そこで、今年から対面営業を増やそうと決め、その一環として香港の展示会に参加しました。」
課題を冷静に分析し、解決策を模索する前向きな姿勢が見られる。こうした挑戦が、今後の「やまに」のさらなる成長につながるのだろう。
⑤「やまに」の存在価値を高めたい
これからの「やまに」のあるべき未来について、小木曽社長にお話をうかがった。
「『暮らしを豊かにすることをたくさんの人に届けたい』というコンセプトのもと、デザインや使いやすさの部分を、私たちの視点で精査したものを届けたいです。さらに、海外展開も強化していきます。」
そのためには、「やまに」のブランディングを強化していく必要があると語る。ただ、雑貨店の立場からすれば、仕入先である「やまに」のブランド力が強すぎても売りにくい面があるため、「ほんの少し」ブランド力が付けば十分だと考えている。
「商品価値だけではなく、発注や出荷を簡単かつスムーズにするなど、業務プロセスの改善も含めて、仕入先のお客様に価値を提供していきたいです。」
小木曽社長は、10年後の50歳になる頃までに、この構想を実現し、「やまに」の存在価値をさらに高めたいと意気込んでいる。
創業127年の歴史を大切に「やまに」は、4代にわたり継承を経て、小木曽社長のもとで新たな挑戦を続けている。時代のニーズに柔軟に対応しながら、自社の強みであるコンテンツ作りで差別化を図り、ニーズのマッチングという付加価値を与えている。
陶器が好きな方、生活を楽しみたい方は、ECサイトから「やまに」が提案する陶器を見てみることをオススメする。暮らしを豊かにする製品があなたを待っているだろう。
詳しい情報はこちら