調理師の父子が紡ぐ四角いパン「ころぱん」を訪ねてみた。





調理師の父子が営むパン屋で、独創的な四角いパンが話題を呼んでいる。今回は、オーナーの藤井 啓輔(ふじい けいすけ)さんにお話をうかがった。
- 父と二人三脚で営む夢のパン屋
- 魚を捌く父親の姿に憧れて料理人へ
- 調理師の技が光るこだわりの絶品パン
- 岐阜を元気に!カギは認知度アップ
- 「ころぱん」というジャンルを作りたい
①父と二人三脚で営む夢のパン屋
ころぱんは、2022年10月20日に開店し、3年目を迎えた。調理師の父子が作るこだわりの四角いパンは、可愛らしい見た目と確かな美味しさで話題を呼んでいる。
「私たちは調理師なので、他のパン屋さんへ追いつく為に日々製パンの勉強しています。その日のパンの出来栄えについて父と意見交換しながら、毎日美味しいパン作りに励んでいます。」
現状に満足せず、試行錯誤を重ね、常により美味しいパンを目指している。藤井さんはパン屋を始める前は、イタリアンレストランや名古屋のホテルで務めていた。
「大学卒業後に2年間イタリアで修行していました。中部から北イタリアにかけて渡り歩きました。帰国後は、イタリア人オーナーのレストランで4年半、ホテルで3年間料理の経験を積ませていただきました。」
イタリアでの修行時代は、前菜やデザートを担当していた。帰国後はさまざまな担当を経験し、イタリア料理全般を作ることができるようになったのだそうだ。その経験がパン作りにも活かされていると話してくれた。
藤井さんのお父様は、結婚式場のシェフとして40年のキャリアを持つベテラン料理人だ。
「父は学生の頃に中華を専攻していて、その後は結婚式場でのシェフとして和洋中すべてに精通しています。会社の取り組みの一環でフレンチのシェフをフランスから招いて勉強会を開き、日々学んでいたそうです。」
シェフ歴40年の経験を持つお父様と一緒に作り上げることが、藤井さんにとって大きな支えとなっている。
そんな藤井父子がパン屋を開くきっかけは、お母様の「四角いパンを引き継いでくれる人を探している」という話だった。
「母が知り合いからお話をいただいたのですが、四角いパン(キューブパン)を販売している方がお店を閉めることになり、受け継いでくれる人を探していたそうなんです。もともと、父と二人で小さいお店をやりたいという私の夢があったので、その話を聞いてとても興味を持ちました。」
「父に『パン作りは未経験だけど挑戦したい』と想いを伝えると、父も一緒にやろうと言ってくれて、パン作りを始めることになりました。」
お母様が話を持ってきて、藤井さんの情熱がお父様に伝わり、父子で営む夢のパン屋ができた。藤井親子の絆の深さを感じるお話だ。
「ころぱん」という店名は、分かりやすく呼びやすい名前にしようと、妹さんを含めた家族四人で相談して決めたのだそう。
「はじめは、さまざまな候補を出しましたが、しっくりくるものがありませんでした。最終的に、看板メニューの四角いパンを連想させる、サイコロのコロと、ころっとした可愛いらしさがマッチングして『ころぱん』になりました。」
お店の物件も前のオーナーから引き継ぎこれで、四角いパンとともにパン屋を継承する準備は整った。
こうして、父と二人三脚で営む夢のパン屋「ころぱん」が誕生したのである。

②魚を捌く父親の姿に憧れて料理人へ
藤井さんが料理人を目指したのは、幼少期に抱いたお父様への憧れがきっかけだった。
「祖母の家に遊びに行ったとき、父が大きな鰤を手早く捌いて、切り身でバラを作りお皿に綺麗に盛り付けをしているその姿を見て『かっこいい』と心から思いました。」
お父様の仕事を目の当たりにし、衝撃を受けると同時に憧れを抱いた瞬間だった。その後、大学在学中に、イタリアンの料理人に興味を持つ出来事があった。
「当時は寮生活で、みんなにパスタを振る舞ったら、全員が美味しいと大好評でした。それを機にイタリアンを作りたいと思いました。大学では外国語学部を専攻しており、もともと海外に興味があったので、イタリアに行く事を決めました。」
鉄は熱いうちに打てというように、藤井さんはすぐにイタリアへ向かった。
「学校のプログラムの一環で渡航費を学校が負担してくれて国際ボランティアでイタリアへ行ける可能性がある事が判明しました。第5まで行きたい国とやりたいボランティアプログラムを選び奨学金の審査を通過したら行けるのですが奨学金の審査は通ったのですが第1〜3候補にイタリアを選択していたのですが全て落選し第4候補のフランスになってしまいました。フランスで3週間のボランティアを行った後に、1週間の自主旅行が可能であった為イタリアへ向かいました。イタリアでは、現地の日本人が通っている調理師学校へアポ無しで訪問して、先輩方の修行の様子を見聞きさせてもらいました。」
藤井さんは、その経験から、イタリアンの料理人になる決意が固まったと振り返る。圧倒的な情熱と行動力によって、自分の夢を見定めることができたのである。
その後大学卒業後イタリアに向かう。イタリアでは、最初に2ヶ月間調理師学校へ通い、午前中にイタリア語の座学、午後から調理実習を5〜6時間行った。その後、現地で働けるお店を自分で探し、交渉して学校の許可を得た上で修行したという。
「自分の道は自らで切り開く」という信念を持ち、過酷な環境での修行を経験した藤井さん。パン作りにおいては「自分の中にある経験を組み合わせ、再構築し形にしていく」スタイルを実践している。
「パンは独学で作っています。この場所と四角いパンというコンセプトを引き継いだので、始めはパンを美味しく作り、美味しさをどう持続させるかの方法を模索していました。最近は、ある程度制作方法が確立されたので、自分たちの得意分野をどうパンに組み込めるかを模索しています。」
日曜日限定でフォカッチャを焼いたり、月に1回イタリアの4種の焼き菓子を提供したりと、少しずつ新しい取り組みを増やしている。
イタリアンからパンへ変化したことで、同じ料理でもさまざまな調整が必要なのだと話してくれた。
「作った料理をパンの具材として入れる場合、具材の水分が多すぎるとうまく包めなかったり、パン生地から漏れ出てしまったりして細かい調整が必要なんです。あとは、パンの味を加味して具材の味を少し濃い目にしたりという調整が必要であったり、手仕込みの具材も多いので、毎日が調整の連続です。」
幼い頃からお父様に憧れ、料理人になった藤井さんだが、自分の道は自らで切り開くという経験をもとに、パン作りという主戦場で一つ一つ挑戦する毎日を過ごしている。
③調理師の技が光るこだわりの絶品パン
ころぱんの特徴といえば、四角いパンである。サイコロのような可愛らしい見た目は、気品があり、思わずフォークとナイフで上品に食べたくなる。
「6個ご購入いただくと綺麗に箱に収まりますので、『お土産』にご利用いただくお客様も多いです。箱に詰めてお客様に確認してもらうタイミングで『わぁ〜かわいい!』「まるでケーキみたい!」と喜ばれるようです。」
他店にはないユニークな形状が、お客様の興味を一層惹きつけている。特に30〜50代の女性に人気だ。藤井さんは、「見た目は大切に」というお父様の教えを常に意識して作っているという。
「父は結婚式場のシェフだったこともあり盛り付けのセンスに長けているので、よく指導されます。私は味を美味しく作る自信はありますが、見せ方に関してはまだまだ父に遠く及ばないので、常に教わる姿勢で聞いています。父と私が調理師だからこそ、『味も見た目もこだわり抜いたパンを提供する』ことが、ころぱんの強みです。」
ころぱんは、他店では見逃しがちな工程にも、手間を惜しまず作り上げている。それが他店と一線を画すオリジナルの味を実現しているという。
「製パン用の具材を使用しているパン屋さんが同じ商品を使っている場合、このパン食べたことがある味と感じることも多いと思います。しかしうちでは、チョコパン一つ取っても、チョコと生クリームを合わせてガナッシュを作り、さらにホイップクリームを加えるという、手間をかけています。だから、唯一無二の味を提供できるのです。」
これは、ころぱんの圧倒的な強みである。その他の4つの特徴を紹介する。
1.惣菜パンから甘いパンまで30種類を用意
創業当初は10数種類だったが、たくさんの種類の中からお客様が選ぶ楽しさを感じて欲しいと言う思いから種類を増やしている。
2.毎週木曜日に新作パンの販売
昨年1月から始めている。味見は、藤井さんとお父様が互いに食べて、二人がOKであれば合格。新作販売のスパンが短いため、日々研究の繰り返しだという。
3.自家製梅ジュースの販売
パンの他に、自家製梅ジュースを販売している。藤井さんは、梅ジュース作りが好きで、毎年梅を漬けているのだそう。夏はアイスで冬はホットで通年楽しめるように工夫しているそうだ。
4.看板メニューは「ティラミスパン」
生地にコーヒーを挽いたものを混ぜて焼き、中に自家製のコーヒーの餡と自家製のマスカルポーネクリームが入っているパンである。
「イタリアでの経験を活かし、なおかつ和の要素を取り込んだ当店人気ナンバー1のパンです。」
筆者もその場で6種類のパンをいただいた。筆者のお気に入りは、「4種のチーズパン」である。生地はふわふわ、中のチーズはぎっしりで濃厚で美味しかった。パン一つで十分満たされるボリューム感で、幸福度が高かった。ぜひ、皆様も調理師の技が光るこだわりの絶品パン、ご賞味いただきたい。

④岐阜を元気に!カギは認知度アップ
藤井さんは、創業3年目を迎えてみて、まだまだ認知度が足りないことが課題であると考えている。
「GoogleマップのMEO対策を行ったり、デザイナーの妹にロゴを任せたり、SEの後輩にホームページをお願いしたりしています。」
最近は、インスタグラムの運用にも力を入れていると、藤井さんは話す。
「投稿はすべて私が行っています。カメラ経験も無いので、最初は理由もわからず投稿していたのですが、なかなか効果が出ませんでした。そこで、Webマーケティングの友人に相談して、アドバイスを受けて実践しています。」
インスタグラムを見てみると、女性に刺さりそうなおしゃれな写真が多い。成果が出たのか、最近ではインスタグラムを見て来店される方も増えてきたという。
インターネットでの宣伝活動以外に、マルシェへの積極的な出店でも、認知度向上に努めている。
「先月3箇所へ出店しました。今後も、カラフルタウンや岐阜市の福祉施設など、いろいろなマルシェに出店予定です。インスタグラムなどを利用されないお客様にもころぱんを知っていただくきっかけになれば嬉しいです。」
最終的には、「美味しい」をキーワードに、数珠つなぎのように、人から人へ広がってほしいという。
藤井さんの地元は一宮で、今も毎日一宮から通っている。外から見ることができるからこそ、岐阜市の良さがよく分かるという。
「岐阜市は、金華山などの名所があったり、老舗のお店もたくさんあったりと、魅力のある都市です。だから、名古屋から白川郷や高山に行くときの、通過地点となるのが惜しいです。微力ながら、私たちも『岐阜市を盛り上げるお手伝い』ができればと考えています。」
ころぱんでは、残ってしまったパンを聖徳学園のラグビー部やこども食堂に譲る取り組みをしている。
藤井さんとしては、ころぱんを通じて岐阜を盛り上げるための活動がまだ足りないという。パン作り同様、妥協せずこだわる姿は、今後注目を集めるだろう。
ころぱんの認知度アップとともに岐阜への想いが形になる日が楽しみである。
⑤「ころぱん」というジャンルを作りたい
藤井さんが考える今後の展望は、「ころぱん」を有名にしていくことだという。
「『フランスパン』のように、『ころぱん』というジャンルを作りたいです。そうなれば、他の店舗との差別化ができますし、ころぱんのパン作りへの想いが、お客様にご理解いただけた証になるからです。」
これが現在の最大の目標である。さらに、その先の構想も藤井さんは語る。
「ゆくゆくは全国のお客様にうちのパンを届けたいです。一緒にイタリアで修行した友人やお世話になった方が全国にいるので、そういった方にも届けたいんです。」
現状は、まだ出来たての美味しさを保ったまま配送ができない。技術革新により全国に届けられるようになれば、時間や経験を共有した仲間への感謝を伝えられるわけである。
もちろん、全国のお客様にころぱんを知っていただける絶好の機会となる。夢は無限大に広がるばかりだ。
調理師の父子が営む「ころぱん」は、独創的な四角いパンと確かな技術で、創業3年目にして多くのお客様を魅了している。
イタリアンシェフの経験を活かしたオリジナリティあふれる商品と、手間を惜しまない情熱で作る唯一無二の味わいは必食だ。岐阜でしか味わえない「ころぱん」を、ぜひ体験してみることをおすすめする。

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