人生の師匠が淹れる一杯が味わえる「銀座珈琲」を訪ねてみた。





築40年以上の建物からはレトロな雰囲気が感じられ、こだわりのコーヒーとマスターの人柄に惹かれて、地域の方が集まる居心地の良い喫茶店である。今回は、マスターの日比さんにお話をうかがった。
- 50歳で喫茶店開業!20代で青写真
- マスターの経験が詰まったレトロ喫茶
- とにかくすべからくGo!
- CDを自主制作!英隼「珈琲の香り」
- 課題はすぐに取り組みなさい
①50歳で喫茶店開業!20代で青写真
銀座珈琲は、安八町に根付いて今年で8年目を迎える。もともとは愛知で店舗を構えていたが、「岐阜の喫茶店を応援してほしい」という知人の声掛けもあり、岐阜で喫茶店を営むこととなった。これまで2度の移転を経ているが、喫茶店経営は合わせて18年の実績を誇る。
「最初の一宮で5年、各務原で5年、この場所で8年営業しています。今の場所に決めた理由は木の床の建物だったこと。それに惹かれて決めました。」
築40年以上のこの建物は、もともと喫茶店として使用されていたが、物件を探している頃は閉店し、電球だけの倉庫になっていたという。日比さんは、自身が目指す喫茶店のイメージに「木の床」があり、それが決め手となって移転を決めた。
日比さんは、もともと会社員として勤めていたが、20代の頃から「50歳で喫茶店を始める」と決めていたと話す。
「実際には、世間の流れも考慮して早めに始めましたが、昔から決めていたことなので予定通りの人生ですね。好きな音楽や調度品に囲まれて、美味しいコーヒーを飲みながらタバコが吸える。そんな喫茶店を老後にできたらと、20代から考えていました。」
自分の喫茶店を持つことを「男のロマン」と表現する日比さんは、誰もが老後の居場所を求めているのではないかと話してくれた。20代にして第二の人生を真剣に考えていた日比さんから、夢や将来像を持つことの大切さが伝わってくる。
店名の「銀座珈琲」は、長い期間悩んだ末に、あるテレビ番組からヒントを得て名付けた。
「日本で初めてコーヒーを提供した、銀座の喫茶店を紹介する番組でした。当時は文化人が集まる場所で、そのお店で飲むことを『銀ブラ』と呼び、ステータスとされていたという内容でした。その様子が、自分の目指す喫茶店のイメージそのものだったので『銀座珈琲』と名付けました。」
日比さんが思い描く居心地の良い空間は、明治から大正時代に親しまれた、ゆったりとした場所で美味しいコーヒーを楽しむ雰囲気だ。そのため、喫茶店を始めるならレトロな雰囲気にしたい、自分が通いたいと思える店を目指したいと、当時の思いを振り返る。
長年の夢と理想の喫茶店像を追求した結果、「銀座珈琲」という店名が浮かんだ。日比さんの第二の人生の幕開けとなった瞬間である。
②マスターの経験が詰まったレトロ喫茶
日比さんは、自分にとっての居心地の良さを常に追求しており、それを銀座珈琲に表現している。
「調度品を一つ選ぶにも、見ていて自分が落ち着くかを一つの指標にして探します。以前、シャンデリアがあればもっと映えるのでは?とひらめいたんですが、何とかイメージに合うものを入手していざ飾ってみたら、この空間にピッタリだったんです。なので、居心地が良いと感じるかどうかという自分の感覚を頼りに追求し続けています。」
日比さんは、デザインの学校を卒業しており、焼き物にも見識があるなど、芸術に関する幅広い知見を持っている。一方で、自分の感覚を養うまでには、さまざまな先輩方の意見も大切にしてきたと話す。
「若い頃にさまざまなことを教えていただきました。『本物を見なさい。本物を食べなさい。』など、直接足を運んで五感で体験する大切さを教えていただきました。そうして培った経験を一つ一つ集めてきて、店舗に残しています。」
日比さんは、その方々を「師匠」と呼んでいる。若い時はわからないことばかりだったので、信頼できる「師匠」に意見を聞いたり相談していたという。
「人生の師匠に意見を聞いた上で、自分の引き出しとして蓄積しました。そうすることで、自分の見る目が養われていくのです。私の場合は、約20年の歳月をかけて自分の感覚を確立させました。」
「師匠が言っていたことはこういうことだったのか」という体験を重ねることで、自分のものにできたと語る。
銀座珈琲は、日比さんの経験が詰まった喫茶店だ。日比さんと人生の師匠たちが紡いだ、唯一無二の雰囲気を醸し出している。


③とにかくすべからくGo!
日比さんは今年で69歳になる。心掛けていることは
・緊張感を持つ
・人に会う
・後ろを振り返らない
この3つを意識して時間を過ごしている。同年代の方の多くが昔のアルバムを見たり、昔の友人に会って懐かしむが、日比さんの場合は、まだ振り返るには早い段階だと語る。
「私にとって今は『第二の現役』の時間なんです。だから、今は前だけを見ています。振り返るとしたら、100歳を過ぎてからだと思っています。」
いくつになっても現役であり続けるという強い意志が感じられ、常にポジティブでいることの大切さが伝わる。
そんな日比さんは、「自分で突き詰めてみないとわからない」という信念のもと、これまでさまざまなことに取り組んできた。銀座珈琲を始めるにあたっても、この信念にもとづき、徹底的にこだわって築き上げてきたという。
「私はもともとコーヒーが好きだったので、突き詰めるのも苦になりませんでした。最初はとにかく本を熟読しました。その後は、できることを全て実践しました。焙煎の仕方に関しても、顕微鏡で分析したり、機械にかけてみたり、フライパンで試してみたりと、試行錯誤の繰り返しでした。」
最終的に、焙煎はフライパンで良いという結論に至ったが、大切なのは突き詰めなければそれがわからなかったことだと、日比さんは語る。
「自分の中で何点を合格点とするかが重要です。私の中では、『他では飲めないコーヒーを作る』という目標があったので、その目標に適した合格点を設定し、それに向かって努力し続けました。」
また、やり続けたからこそ、「喫茶店を始めても生き残れる」という自信にもつながったという。
「若い時は、『とにかくすべからくGo!』です。行動する中で、失敗や悔し涙を流したりさまざまな経験をするかもしれませんが、その経験が全て自分の引き出しになります。大切なのは、『とにかくすべからくGo!』という姿勢です。」
自身の経験をもとに、まずは「夢」と「希望」と「自分の設計図を描くこと」が大切だと話す日比さん。「とにかくすべからくGo!」という言葉に、日比さんの生き方が表れており、周囲を元気にする魅力を感じさせる。
④CDを自主制作!英隼「珈琲の香り」
日比さんは多彩な才能を持っており、その一つが音楽である。「英 隼(はなぶさ はやと)」という芸名でCDを自主制作し、「珈琲の香り」という曲をYouTubeにも公開するなど、精力的に活動している。
「喫茶店を始めて10年が経ち、慣れてきた頃に自主制作しました。『還暦までにCDを一曲作りたい』という夢が膨らんだのがきっかけです。今でもボランティアとして、即興でギターを弾いて歌っています。」
やりたいことを次々と形にしていく日比さん。音楽に関しても、幼少期から密接に関わってきており、愛着があるという。社会人になってからは、仕事に集中するため、音楽とは一定の距離を置いていた。
「小学校と中学校ではトランペットを吹いており、高校から20代にかけてサックスを演奏していました。若い頃はよく音楽仲間と集まって、様々な場所で演奏していましたね。ビッグジャズやスイングジャズ、コンボジャズまでジャンルを問わず、音楽を楽しんでいました。」
7年前からは、相棒と共に二人で演奏している。この地に移転後、たまたま店外で演奏していた時に、たまたま通りかかったお客様から「一緒に演奏しよう」と声を掛けられ、その場でセッションしたのが始まりだ。
「コロナ前は年4回、店内で有料コンサートを開催していました。今年もクリスマスコンサートを予定しています。」
「英 隼」としての夢は、「珈琲の香り」で紅白歌合戦に出場することだと、笑顔で語る日比さん。銀座珈琲で直接応援するのも、YouTubeで視聴するのも良いだろう。
「英 隼」の今後の音楽活動から目が離せない。

⑤課題はすぐに取り組みなさい
第二の現役を過ごす日比さんに、今後の展望についてうかがった。
「銀座珈琲のワンコインデイサービス構想です。自分で店に来られる方が、ワンコインを握りしめて集まり、世間話を交えて様々な情報交換をする。それが自然とデイサービスになる、そんな場所になったらいいなと考えています。これは私自身にも当てはまる話で、この場所にいながらお客様からデイサービスを受けることにもなるんです。」
介護が必要な方は介護サービスのデイケアがあるが、介護を必要としない元気な方が集える場所にしたいというもので、いつもお客様と笑顔でこの話をするという。
人と会って交流することで、精神的なバランスを保ち、それが健やかな第二の人生につながると、日比さんは考えている。
最後に、商売を通じた悩みについて尋ねたが、「悩みはない」という。この言葉の真意についてうかがった。
「課題があれば悩むのではなく、すぐに取り組めばいいと考えています。私は、今日できることを今日中に行うことを徹底してきました。嫌なことは後回しにせず先に行うのが大切で、課題があればその都度取り組んで解決するんです。なので、悩む暇も無いですね。」
課題がないのではなく、すぐに課題に取り組んで解決するから、今はないのである。まさに、師匠の金言であり、多くの方の気づきにつながるだろう。
銀座珈琲は、マスターが追求した居心地の良いレトロな雰囲気と、こだわりの本格コーヒーが魅力の喫茶店である。
20代から描いていた夢を形にした日比さんの「男のロマン」であり、音楽や交流の場としても親しまれている。
レトロな喫茶店が好きな方や悩みがある方は、ぜひ一度訪れてみてはどうだろうか。人生の師匠である日比さんの人柄に触れることで新たな気づきが生まれるはずである。

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