飲食業
大垣市

日本に嫁いだベトナム人女性が作る本場の味「楚々罔象」を訪ねてみた。

日本に嫁いだベトナム人女性が作る本場の味「楚々罔象」を訪ねてみた。
TOM
TOM
ベトナム料理ってどんな味なんだろう?食べてみたいな!
SARA
SARA
日本の関西と関東みたいに、ベトナムの北部と南部で味付けが違うらしいわよ!
TOM
TOM
そうなの?ワシは関西みたいな優しい味付けがええんや!ほな一緒に食べにいこか〜
SARA
SARA
・・・何その突然の鬱陶しいエセ関西弁・・・それなら楚々罔象で食べられるわよ・・・
この記事は約6分で読めます。
大垣市にある「楚々罔象」をご存知だろうか。
水辺と桜並木に囲まれたロケーションで、今までの概念を覆すオシャレなベトナム料理を提供している店だ。今回は、店主の加藤 凛(かとう りん)さんと、代表の加藤 剛(かとう つよし)さんにお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • 「ベトナム料理の普及」がきっかけ
  • 心も体も健康になるご飯のお届け
  • 本場の味や食材、器までこだわり抜く
  • 加藤夫妻の馴れ初め
  • 多文化共生を実現したい

①「ベトナム料理の普及」がきっかけ

 

「楚々罔象(そそみずは)」を創業したきっかけは、日本でベトナム料理を普及させたいという加藤夫妻の想いからであった。

 

加藤夫妻は当初、非営利団体「Banh mi Lab(バインミーラボ)」を立ち上げ、マルシェでベトナムサンドイッチの販売を月1回行っていた。

 

少子高齢化の影響で働き手が少ない日本で、働き手となってくれている外国人労働者。その一部の方々が、不遇な環境に置かれていることを聞かされ、心を痛めた加藤夫妻。

 

バインミーラボは、不遇な環境にあるベトナム人の声を拾う接点となればと考え始めたと、同じベトナム人で店主の凛さんは話す。

 

「ベトナム料理としてに馴染みのあるサンドイッチ『バインミー』の販売を通して、ベトナム人労働者との交流が目的でした。その一方で、日本人のお客様にも好評で、常設を希望する声も多くありました。」

 

ちょうどその頃、お店がある「ennoieミドリバシ」が改修されたことも大きかった。

 

ミドリバシは、「やってみたい!」を実現する地域のレンタルキッチン・スペースである。築70年の古民家を活用し、水辺と桜並木に囲まれた立地で、飲食業の起業支援を展開している。

 

ミドリバシの改修とお客様の声に後押しされる形で、楚々罔象は開店した。

 

「バインミー販売を通して、地域の方に愛してもらったので、本場のベトナム料理を普及させたいと考えています。バインミーラボは非営利団体ですが、楚々罔象は日本人のお客様を対象とした営利団体として、それぞれ煩雑にならないように明確に分けています。」

 

そう語るのは、夫で代表の剛さん。

 

加藤夫妻の社会課題への取り組みから生まれた楚々罔象。日本に嫁いだベトナム人女性が作る本場の味を通じて、新たな食文化の普及が期待される。

 

②心も体も健康になるご飯のお届け

 

凛さんは日本人がイメージしているベトナム料理のイメージを変えたいと意気込んでいる。「ベトナム料理=屋台めし」のイメージが強いが、リアルなベトナム料理は違うという。

 

「実際はオシャレな女性達が、エアコンの効いた店内で、ワインと合わせてベトナム料理を楽しんでいます。日本のワインが美味しく、ベトナム料理とワインとマリアージュを私たちの一つのコンセプトに捉えていんですがリアルなベトナムの姿でもありました。」

 

現代のベトナムでは、地方に伝統的な屋台めし文化が残る一方、都市部では洗練されたレストランやカフェが主流となっている。

 

楚々罔象が打ち出すコンセプトは、「心も体も健康になるご飯のお届け」である。

 

「『お客様に満足をしていただく』を考えた時に、主に女性のお客様を対象に、ミドリバシの良いロケーションを利用して、手間をかけて自然派食材で作った、純真無垢な料理をお届けしたいと考えています。」

 

お客様に正直でいたいという、凛さんの誠実な想いが伝わってくる。

 

楚々罔象を店名とした背景には、地域に根ざしたベトナム料理、という想いを込めて敢えて漢字にしたと、剛さんは話す。

 

「『楚々』は『楚々とした佇まい』という清く美しい女性という意味の大和言葉から引用し、『罔象』は水の神様の意味があるので、水都大垣とミドリバシがある四季の広場のイメージに合わせて命名しました。」

 

地域の方に愛され、後押しされる形で開店した、楚々罔象。ベトナム出身の凛さんが岐阜に根ざし、外国人との共生の新たなモデルケースとなっている。

 

③本場の味や食材、器までこだわり抜く

 

加藤夫婦は、お客様の期待に応えるべく、細部までベトナムを楽しめるよう、こだわりを魅せている。

 

主な特徴は以下の4つだ。

1.本場で修行

 

「ベトナムは縦に長い国で、北部と南部では味付けが違います。北部は薄味で南部は調味料が辛いのが特徴です。私たちは各地に赴き、それぞれの味を学んでいます。また、今でも3〜4か月の頻度でベトナムへ訪問し、フレッシュな情報を仕入れてリアルなベトナムをお伝えしています。」

 

2.自然派食材

 

「食材は無農薬の地産地消にこだわり、パクチーなど一部は自家栽培しています。味付けは無添加無化調を貫き、手間をかけて一皿一皿を丁寧に作っています。」

 

3.本場の器やカトラリーを使用

 

「器は北部のバッチャン焼き、南部のソンベ焼きを現地でオーダーメイドしたものを使っています。手作りならではの不均一な形が、味わいとして楽しめるのも特徴の一つです。」

 

4.好き嫌いが分かれる料理は現地の味を崩さない程度にアレンジ

 

「お客様から本場の味を堪能したいと要望をいただくので、夫に味見をしてもらいながら、細かく味の調整をしています。日本人に寄せすぎないようバランスを保っています。」

 

凛さんのご厚意で「Bún chả Hà Nội (ブンチャーハノイ)」というランチメニューをいただいた。

 

酸味のある特製スープに、スパイスの効いたポークグリルや新鮮なお野菜との相性が良く、とても美味しいつけ麺。ボリューミーだが、あっさり食べやすい味付けなので、あっという間に完食した。麺は米粉で作られており、健康面にも配慮が行き届いている点は秀逸だ。

 

楚々罔象は、単なる満腹ではなく、心の豊かさを求めて、配慮の行き届いた非日常的な空間で、本格的なベトナム料理を体験できる逸店である。

 

④加藤夫妻の馴れ初め

 

凛さんはベトナム出身の生粋のベトナム人で、剛さんと出会ったのはベトナムだった。当時の剛さんは独立前の会社員で、勤務先の現地法人がベトナムにあったことでベトナムに訪問していたという。

 

「私は日本にもともと興味があり、良いイメージの国でした。縁あって夫と出会い、彼の優しさや考え方に共感し、結婚することとなりました。」

 

そう語る凛さんの言葉を受けて、剛さんは続ける。

 

「当時の私は仕事人間だったこともあり晩婚でした。さらに妻は当時18歳でしたので年齢差もあったため、結婚までに苦労がありました。」

 

国際結婚をする上で、様々な手続きが必要だという。剛さんの身元を、ベトナム政府に証明する必要があり、いくつもの手順を踏んで書類を揃え、それを持ってベトナム政府へ提出する。

 

「年齢差もあるので、現地で色々と手続きや証明などを行い、結婚成立まで大変でした。また、日本人の僕が普通だと思っていることが普通じゃないこともあります。文化や慣習、考え方の違いを、お互いに尊重する大切さを日々学んでいます。」

 

そう語る剛さんの言葉に補足するように、凛さんは続ける。

 

「夫婦でコミュニケーションを重ねる中で、単に日本で暮らすだけなく、ベトナム語を話せるメリットを活かして、社会課題に取り組もうということになりました。夫がサポートする形で始まり、それがバインミーラボにつながり、今は楚々罔象の店主になって切り盛りする流れになっています。」

 

異国の地での社会課題への取り組みを、凛さんを主役に、剛さんが支援する形で展開している。バインミーラボから楚々罔象へと発展した加藤夫妻の挑戦は、新たな段階を迎えている。

 

⑤多文化共生を実現したい

 

「まずは食べてもらうこと」が、楚々罔象の直近の目標であり、乗り越えるべき課題だと、凛さんは話す。

 

「ベトナム料理の普及が一番の目的なので、コンセプトに基づいた面白いお店を展開したい想いが強いです。ベトナム料理は馴染みの少ないニッチなジャンルなので、認知度を上げることを優先しています。そのために、素材選びからこだわり、『楚々罔象の料理を食べたい』と思ってもらえる仕掛けをこの1年続けています。」

 

お客様からは、「この安い価格で提供して大丈夫?」とよく心配されるという。「ベトナム料理と店の雰囲気を知っていただく」ことを優先し、あえて利益を抑えた価格設定としている。

 

さらに続けて剛さんが想いを紡ぐ。

 

「私たちの活動は、社会課題に取り組むことが根源です。『多文化共生』、『地域との共生』、『地域と外国人の共生』を実現するための活動が、楚々罔象です。もちろん利益も大切ですが、お客様の心の満足につなげることが最も大切だと考えています。私たちの活動がお客様に伝わっていけば嬉しいです。」

 

多文化共生という理想の実現に向け、「まずは与える」活動に注力して、地域の方々に寄り添っている。

 

楚々罔象は、ベトナム料理を通じて多文化共生を目指す新しい形の飲食店である。

 

店主の凛さんが腕を振るう料理は、本場の味と日本の食材が見事に調和している。無添加・無化調にこだわった健康的な料理は、心も体も満たしてくれる。

 

ミドリバシの水辺に佇む古民家で、本場の器に盛られた美しい料理と一緒に、新感覚のベトナム料理に触れてみてはいかがだろうか。

 

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