創業96年!岐阜を愛し変化し続ける「日の丸自動車株式会社」を訪ねてみた。





創業96年を誇る歴史を刻んだ企業で、タクシー事業を中心に、既存の枠に納まらない発想で、岐阜に価値を提供し続けている。今回は、代表取締役副社長 川上 治郎(かわかみ じろう)様にお話をうかがった。
- 創業96年!秘訣は時代に合わせた変化
- 三方良しの理念のもと社内改革
- 社員に会社を好きになってもらいたい
- 変化を求めて成長するスタンスが強み
- 若い世代にビジネス教養を伝えたい
①創業96年!秘訣は時代に合わせた変化
日の丸自動車株式会社は、昭和3年12月(1928年)に「川徳自動車商会」として創業し、96年の歴史を刻んできた企業である。
創業者である川上副社長の曾祖父は、木材会社を営んでいたが、これからは車社会になるだろうという先見性と地域貢献の想いから、現在の名鉄の岐阜駅前でタクシー事業を始めたという。
「昭和12年に『日の丸自動車』に社名変更したそうです。戦前という時代背景もあり、日の丸の国旗をイメージして名付けたと聞いています。」
現在の社長は川上副社長のお兄様で、5代目として経営されている。日の丸自動車は現在、以下の2社を中心としたグループ展開を行っている。
1.車販売、整備部門「日の丸興業」
2.燃料部門「日の丸石油」
「既存に縛られずいろいろと取り入れながら進む方針です。」
変化の激しい現代において、市場に価値を提供し続けるには、企業の柔軟な変化が必要だ。4年後に100周年を迎える「日の丸自動車」の今後に、地元の期待が寄せられている。

②三方良しの理念のもと社内改革
川上副社長は、平成8年(1996年)に日の丸興業に入社し、ボルボの販売営業を行う。数年後に日の丸興業の経営を任され、会社の立て直しに尽力する。
「私はボルボが好きで、売ってみたいと思ったのが入社したきっかけでした。」
日の丸興業の再建後、日の丸石油の経営も任される。
川上副社長は「三方良し」の考えを経営の柱とし、日の丸興業の経営理念にもこれを反映させている。
「お客様と社員と地域の三者の利益を重視する考えです。三方良しの経営理念のもと仕事に取り組もうという考えが、社員にも浸透していたら嬉しい限りです。」
社員が楽しく出社できる職場づくりを目指し、川上副社長は改革への歩みを続けている。
③社員に会社を好きになってもらいたい
川上副社長が会社の改革を始めたきっかけは、社員からの不満も聞いたが、自身も不満があったことだそうだ。
「私が入社した頃は、社員の方が漏らす会社への不満がありました。その不満を聞いて自分が変えていこうと感じたんです。会社が良くなれば、人材にも恵まれる社員の方がより働きやすくなると考え、まずは経営陣の考え方から変えなければと決心したんです。」
当時まだ、29歳だった川上副社長は会社の改革のために80名の社員と向き合う決意を固める。現在では、当時の経験がとっても貴重なことだった振り返る。
日の丸興業での経験は、日の丸自動車での改革にも通じるものがあった。
「私もですが、人は基本的には変わるのが嫌いなものなんです、変えようとすると、最初は拒絶反応を起こすんです。人それぞれ置かれた環境や考え方や違います。なので、きちんと納得してもらえるまで、話をしました。なので、今は理解して共感してくれる社員に囲まれています。逆に私が支えられてると感じることが多いですよ。」
できないことを人のせいにすることなく常にどうしたら良いかを考え行動し続けた結果、川上副社長を支持する方が増えたのであろう。
④変化を求めて成長するスタンスが強み
川上副社長は変化を求めて成長し続けるスタンスで、それがそのまま会社の強みとなっている。
「私は、現状維持の考えが苦手なんです。時代によってお客様のニーズも変わっているので、昔のやり方では通じなくなると考えています。その点を社員にも理解してもらいたいと考えています。」
「今は昔の10年が今の1年に思えるぐらい変化が早いです。当然タクシー業界においてもニーズは変わっていて、会社として変化に素早く応えられるように努めています。」
日の丸自動車は、お客様や市場のニーズに応えるため、以下の2つに特に注力している。
1.接客サービスの向上
2.社員の若返り
「例えばですが、タクシードライバーの中には、乗車する距離が近いと不機嫌になるなど露骨な方もいらっしゃいます。でも本来サービス業ですから、心配りができるなど、質の高いサービスを提供する必要があると伝えています。私たちは岐阜で一番接客が良いタクシー会社を目指しています。」
変化のスピードが速く、市場とお客様のニーズに応える姿勢が日の丸自動車の強みとなっている。96年にわたり岐阜で支持され続けている理由がここにある。

⑤若い世代にビジネス教養を伝えたい
川上副社長には、「岐阜の活性化の一翼を担う」という夢を持つ。これが、日の丸自動車が飲食業などの異業種に進出する理由の一つとなっている。
「個人的に岐阜が大好きなんです。しかし、最近は下火になっている感が否めません。一社では難しいかもしれません。ただ、当社の活動により、同じように岐阜を盛り上げたいと願う人が集まる場所を作れるかもしれない。岐阜やこの会社に恩返しがしたいんです。何かしたい。やり遂げたい。それが今の率直な気持ちです。」
川上副社長の夢であり、日の丸自動車の社会的責任として、自社ができることを岐阜への貢献活動として取り組んでいる。
「『観光』をキーワードに前面に打ち出し、発信しています。例えば、当社のホームページを刷新したり、インスタグラムのような媒体を使って、バスのドライバーがリアルタイムな観光地情報の宣伝などを行っています。」
こうした活動を通じて、日の丸自動車の認知度向上と、岐阜の盛り上げにつなげたいと考えている。
しかし、この活動が直接収益につながることは難しいという。一方で、「日の丸だから安心」というお客様にとっての安心の存在になれればと、想いを込めて活動している。
さらに、川上副社長が若い世代への想いを語る。
「私は、経営について無知だったため、当時は本当に苦労しました。しかし、その苦労から、主体的に学ぶことの大切さを学びました。だから社員にも学ぶことを勧めています。私が感じた学びの大切さや面白さを、若い世代の社員にも知って欲しいと考えています。」
人に与えられるのではなく与えることで、大切な人や社会にポジティブな影響を与えられる。若い世代に誠実に向き合っているからこその想いである。
創業96年を迎える日の丸自動車は、タクシー事業を中心に、地域に根差した事業を続けている。三方良しの理念のもと、時代のニーズに応える柔軟な姿勢と、岐阜の活性化への強い想いが特徴だ。
へそまがりラーメンをはじめとする飲食店は、地域の新たな可能性として注目を集めている。この機会に日の丸自動車のタクシーや観光バスを利用してみてはいかがだろうか。新しい岐阜の魅力に出会えるかもしれない。
