農業・林業
揖斐川町

珍しい野菜との出会い、収穫が体験できる農園「コービーファーム」を訪ねてみた。

珍しい野菜との出会い、収穫が体験できる農園「コービーファーム」を訪ねてみた。
TOM
TOM
ピーマンを克服するために、自分で育ててみたんだ!
SARA
SARA
すごいわね!すごく美味しそう!もう収穫できるんじゃない?
TOM
TOM
うん!収穫し・・・やっぱり怖いよ!なんか目が合った気がする!
SARA
SARA
・・・ピーマンの目って何かしら・・・
この記事は約7分で読めます。
揖斐郡揖斐川町にある「コービーファーム」をご存知だろうか。
150種類以上の野菜を栽培しており、収穫体験を通じて野菜を購入できる農園だ。今回は、代表の粟野 和也(あわの かずや)さん(以下コービーさん)にお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • 妻のカフェから始まった農園物語
  • 自分で収穫!野菜が紡ぐ食育型農園
  • 農園の枠を超えた!新しい遊び場を提案
  • 未来を拓く!お抱え農家の提案
  • 自然と人が循環する村を作りたい!

①妻のカフェから始まった農園物語

 

コービーファームは2017年に開業した農園である。「人との繋がりを大切にする」をモットーに、お客様と近い距離で野菜を生産している。コービーさんが農業を始めたきっかけは、奥様のオーガニックカフェの開業だった。

 

「妻がカフェを始めるにあたって、オーガニック食材をどのように仕入れるかを考えた時に、私が農業を始めて妻に提供するのが最善の方法だと考えました。もともと父が兼業農家で、家の目の前に土地があるという恵まれた環境だったこともあり、農業を始めることを決断しました。」

 

当時コービーさんはハワイのコーディネーターや通訳の仕事に従事していたが、時代の変化に伴い、将来に向けたキャリアプランを模索していた時期でもあった。

 

「オーガニック野菜をカフェに提供することで妻のサポートとなり、さらに自分の新たな事業にもなる。いろいろなタイミングが重なりました。きっかけは妻の影響が大きく、とても感謝しています。

 

コービーさんは現在47歳。20代前半の頃は、英語や国際経済を学ぶために留学していた。最初は語学学校に通い、その後大学へも進学し、仕事も始めた。アメリカの音楽やカルチャー、スポーツにも興味があり、憧れがあったと当時を振り返る。コービーファームの名前の由来も、コービーさんのアメリカ留学時代のエピソードが影響している。

 

「私はバスケが好きで、留学中もストリートコートでプレイしていたのですが、プレイスタイルがNBAのスター選手であったコービー・ブライアント選手に似ているとのことで、『コービー』と呼ばれていたんです。それが嬉しくて気に入っていたので、この名前に決めました。お客様からも『コービーさん』と呼ばれることが多いです。

 

お客様はもちろん、お客様のお子さんからも親しみやすさを込めて『コービーさん』と呼ばれているという。お客様との距離の近さや多くの人から慕われているコービーさんのお人柄がうかがえる。

 

また、「◯◯農園」ではなく「◯◯ファーム」と名づけたのは、留学中に経験したファームステイの思い出が影響している。

 

当時通っていた学校は2〜3ヶ月の休みがあったので、その間、実際に農家に滞在して、農業を学ぶファームステイを経験しました。当時は農業を仕事にしようとは考えませんでしたが、あの時の経験がずっと心に残っていて、農業を始める後押しになったのかもしれません。

 

奥様のオーガニックカフェ開業をきっかけに、農業へと転身。父から受け継いだ農地とアメリカでのファームステイ経験を活かし、独自の魅力溢れる農園を生み出した。

 

②自分で収穫!野菜が紡ぐ食育型農園

 

コービーさんは誰もまだ挑戦していない新しいことが好きな性格で、「人が知らない、作らない野菜」を生産することに注力している。

 

農業に関わらず、事業において人と同じことをしていては突き抜けられないと考えています。そのためには、何かに特化する必要があり、その結果の良し悪しはお客様に判断してもらえば良いと考えています。

 

コービーファームでは、一般的な野菜からスーパーフードと呼ばれる珍しい野菜まで、150種類以上の多彩な野菜を生産している。

 

「大根だけでも、普通の大根から赤い大根、紫大根や黒大根、紅芯大根など複数種生産しています。『コービーファームに行けば珍しい野菜がある』というイメージを8年かけて定着させたので、県内外から珍しい野菜を求めてお客様がいらっしゃいます。」

 

コービーファームでは無農薬で野菜を生産しているが、農薬を使用する農家を否定する意図はなく、それぞれの農家の考え方を尊重したいという。

 

「単純に、農薬を使った方がいいか、使わない方がいいか、と問われると、大半の人が無農薬を選ぶと思うんです。うちは無農薬で生産するスタイルで営んでいますが、農薬を使わざるを得ない方や伝統として続けている方もいらっしゃいます。正解は無く、それぞれのスタイルがあって良いと思います。

 

コービーさんは「お客様と近い距離で農業をしたいという信念のもと、お客様自身が畑で野菜を収穫できる、体験型のユニークな販売方法を打ち出している。

 

欲しい野菜はお客様自ら収穫できるので農業体験に繋がっています。特に子どもたちにとっては農業体験が食育にもなります。苦手であった野菜も、自分で収穫してその場で食べることでイメージが変わり、美味しさに気付いたり、野菜好きになったりするお子さんも多いです。

 

子どもたちが直接野菜に触れ「興味を持って体験する」ことが大切で、野菜の収穫体験は良い影響を与えていると、コービーさんは語る。コービーファームのロゴは、野菜と野菜の間に揖斐の水が表現され、その中に顔が向き合う様子が描かれている。これは、直接対面して農家と消費者が売り買いする様子を表現しているという。

150種類以上の野菜の生産と収穫体験を通じて、野菜の魅力を伝えるコービーファーム。子どもたちの食育の場として、新しい農園の形を提案している。

 

③農園の枠を超えた!新しい遊び場を提案

 

コービーさんはコービーファームのコンセプトとして「触れる」を掲げている。

 

自然に触れる、野菜に触れる、草に触れる、土に触れる、『触れる』ことで人の感性が磨かれ、それが『楽しい』に繋がると考えています。だから、畑に来て欲しいんです。それがコービーファームで野菜を買う付加価値です。」

 

コービーさんはコンセプトに合わせて、様々なイベントを企画・開催している。草が生い茂る場所でのソムリエによる「ワイン会」や、焚き火を囲んで語り合う「焚き火会」、大学生と子どもたちが裸足で走り回る「泥んこ遊び」や、無農薬のよもぎを使って入浴剤やお茶作る「薬草イベント」など、多岐にわたる。

 

「個人的には土に触れるイベントをやりたいです。『アーシング』と言って、素足で土に触れることで身体のバランスを整える効果も期待されるらしく、興味を持っています。」

 

農家はやることがたくさんあるが、その分できることも無限にあるので、どんどんみんなを巻き込んで一緒にやりたいと、コービーさんは意気込みを語る。

 

「私は自分の儲けにこだわらず、みんなが集まることで起きる化学反応を期待しています。そこから生まれる人との繋がりを大切にしたいんです。」

 

コービーさんは、農家であっても個を主張して良い時代だと、持論を展開する。

 

温故知新の言葉の通り、やり方や生き方を古きから学びつつ、新しいものを生み出すのが私が理想とする考えです。様々なイベントを通じて、コービーファームは農園という枠にとらわれない楽しい畑だと感じてもらいたいです。」

 

「触れる」をコンセプトに、人との繋がりを大切にしながら、ワイン会や焚き火会など従来の農園の枠を超えたイベントを展開。自然と共存した新しい遊び場として進化を続けている。

 

④未来を拓く!お抱え農家の提案

 

農業を営む上での課題についてうかがってみた。

 

野菜の価格改定です。野菜は生産された全体量に対しての価格が決まるので、その年の天候によって、価格が変動するのは仕方ない事情があります。ただ、世間の反応は想像以上に厳しく許容されにくい側面があるんです。うちは据え置き価格で留まっていますが、どこかのタイミングで値上げせざるを得ない状況になると思っています。その時に、お客様の理解を得て、受け入れられるかが課題です。

 

コービーさんは、今の日本の農業生産者の状況を踏まえて、将来に向けて「お抱え農家」を提案した。

 

農業生産者は60〜70代がメインのため、その層の人口が減れば食料自給率はさらに急速に低下する恐れがあり、野菜や米不足が懸念されます。消費者はスーパーで食材が買えないことを防ぐためにも、安定的な供給を直接受けられる『お抱え農家』を作ることをおすすめしたいです。

 

お抱え農家の構想は、消費者が安定して食材を確保できるメリットだけでなく、農家にとっても多くのメリットがある、お互いにとって有益な構想だと、コービーさんは語る。

 

「お抱え農家として選んでいただくためにも、農家もお客様との信頼関係構築を意識して取り組むことが大切だと考えています。

 

野菜の価格改定という課題に直面する中、コービーさんはお抱え農家という新たな提案を行う。消費者と農家の直接取引で、お互いに利益をもたらす未来型の農業の形を目指す。

 

⑤自然と人が循環する村を作りたい!

 

コービーさんが思い描く今後の展望は2つ。

 

1.コービーファームの畑一帯を中心に、人が集う村を作る
村には子どもからお年寄りまで老若男女が集まり、子どもたちが楽しく生きやすい環境を提供したり、独居高齢者に対してみんなでサポートできる環境を構築したいと語る。

 

「自治体が全てをサポートするには限界があるので、個人で貢献できることに特化した展望です。『あそこに行けば何かある、誰かいる、アイデアが生まれる』というコミュニティ作りを理想としています。」

 

2.地元の恵みを有効活用して揖斐川町を活性化させる
揖斐川町の竹林は、日本三大美竹林の一つとして有名。竹林には資源となる可能性が秘められている。竹の「曲がる」という特性を活かした家づくりや、「竹の粉末」による土壌改良、「竹炭」としての消臭効果など、竹には無数の可能性があると、コービーさんは話す。

 

「『パーマカルチャー』という、人間と自然が共存し永続的な暮らしをする考え方があります。自然の摂理に従って、竹林という恵みを無駄なく再利用して、街に様々な循環を生みたいと考えています。」

 

コービーファームは、農家へと転身したコービーさんが、独自の視点で創り上げた体験型農園である。一般的な野菜からしい野菜まで150種類以上の野菜の栽培、収穫体験による食育、そして様々なイベントを通じて、農業の新しい可能性を提案している。コービーファームの畑は単なる生産の場ではなく、人が集い、学び、楽しむコミュニティの場となっているのだ。

 

自然に触れ、野菜を収穫し、土の温もりを感じられる場所として、コービーファームはみなさんを待っている。温故知新の如く、新しい発見があるだろう。

 

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