漢方と対話で心と体を整える「花凜堂薬局」を訪ねてみた。





西洋医学と漢方の知見を併せ持ち、患者様の心の声に耳を傾ける漢方専門薬局である。今回は、薬剤師の石橋 奈緒子(いしばし なおこ)様にお話をうかがった。
- 家族の健康を想う気持ちで漢方薬局の道へ
- 母として決断!漢方薬を新たな選択肢に
- 西洋も東洋も知る女性に寄り添う薬局
- 患者様の心と体に寄り添う「対話」を重視
- 漢方薬の魅力を多くの人に届けたい
①家族の健康を想う気持ちで漢方薬局の道へ
花凜堂薬局は2023年6月に創業、もうすぐ2周年を迎える。
漢方との出会いは、家族の健康を考えたことがきっかけだった。大学卒業後、石橋さんは薬剤師として製薬会社や大学病院に勤務していた。結婚後は、調剤薬局に勤め、薬剤師としての経験を重ねていたが、漢方に関しては国家試験のための知識程度しか持ち合わせていなかった。
転機は約10年前。まだ小さかった子どもたちの「食の安全」を意識しはじめ、体を冷やす・温めるといった視点を持つ薬膳に出会う。
「カルチャースクールの薬膳教室を受ける中で、『薬剤師の知見を活かして、もっと専門的な漢方薬に関する知識を学べるのでは?』と考えるようになったんです。」
さらに、タイミングは重なる。大学の同窓会にて再会した同級生が、学生時代から夢見ていた漢方薬局を開業したことを知ったのだ。その同級生の紹介で、名古屋で行われている勉強会に参加し、漢方の面白さに強く引き込まれる。
その後も「東海漢方協議会」に所属し、精力的に学習。2人の子どもたちが成長して手が離れたタイミングで、漢方薬局での勤務経験を積むため名古屋まで通い、現場のノウハウを吸収した。コロナ禍では、オンラインを活用して全国の専門家の知識をより深く学び、漢方薬局開業への気持ちが高まっていった。
「不安もありましたが、『今やらなければいつやるのだろうか?』という想いが強まり、2人の子どもが成人したのを機に、漢方薬局を開業する決意を固めました。」
「花凜」という店名は、石橋さんが花が好きで、凛とした人物になりたいという想いから名付けた。ちなみに、石橋さんには生け花歴27年という経歴もあり、薬局の営業時間外には同じ建物で華道教室も開催しており、伝統的な生け花の精神と表現法を紹介している。
家族の健康への想いがきっかけとなり、偶然の出会いや学びの機会が重なって、漢方の道へ。石橋さんは経験とタイミングを活かし、人生の新たな一歩として開業した。


②母として決断!漢方薬を新たな選択肢に
石橋さんが漢方に対する考えを改めたのは、「家族の健康」と「西洋薬以外の選択肢」を実感したからだったという。最初のきっかけは、娘さんのかかった病気に抗生剤が効かなかったことだった。
「抗生剤は大抵の人には効きますが、娘には効かなかったようでした。私の見解ですが、耐性菌(抗生物質が効きにくい細菌のこと)の問題もあったのではないかと考えています。」
これらの経験から、人によっては西洋薬だけでは不十分なケースがあり、将来を見据えた根本的な治療には、新たな選択肢も必要であると感じたという。さらに、ご主人が尿管結石を患ったことを機に、家庭全体の食生活を見直す必要性を痛感。薬だけでなく、食事や体質改善も重要だと考えるようになった。
「それまでは、たくさん食べて大きくなってくれれば良いと考えていたので、産地や添加物など食の安全については気にしていましたが、肉類中心の偏った食生活でした。今はバランスよく適量にすることを心がけています。」
当時、薬膳や料理教室を通じて、体を温める・冷やすなどの視点を学んでいたため、自然と漢方や薬膳への興味が深まっていった。料理が得意でない石橋さんにとっても、実践するうちに楽しさや意義を見出せるようになり、次第に専門的な学びへの意欲が芽生えたのだった。
③西洋も東洋も知る女性に寄り添う薬局
花凜堂薬局の強みは、主に二つである。
1.女性薬剤師ならではの寄り添いと理解
「一番の強みは、女性薬剤師が対応することによる安心感です。女性には女性特有の体調の悩みや、男性には話しづらいデリケートな問題があります。例えば、思春期の心と体のお悩みや、その後の赤ちゃんができにくい体質、更年期の不調など、ライフステージごとの悩みには微妙なニュアンスが伴います。」
石橋さん自身もこれらの悩みを抱えてきた当事者であり、自らの経験に基づいたアドバイスができる点が、多くの女性から支持されている理由である。
2.西洋医学と漢方をバランスよく提案できる「ハイブリッド型薬剤師」
石橋さんは、西洋医学と漢方の両方を理解したハイブリッド型の薬剤師だ。
「例えば、病院での検査が必要と思われる場合や西洋薬が有効なケースでは、病院の受診を勧めます。一方で、冷え症やホルモンバランスによるものなど『なんとなく体調が悪い』といった西洋薬では対応しきれない症状には、漢方薬を提案します。患者様の状態に応じて、最適な提案を行えるのが、当薬局の強みです。」
年齢を重ねたことで現れる体の不調は、自身や周囲の女性たちのリアルな実感でもあり、それに対する理解と対応力が備わっている。また、漢方が苦手な人にも、無理に勧めることはせず、「こういう選択肢もある」という形で紹介し、一人ひとりに寄り添った提案を心がけている。
花凜堂薬局は、女性目線の細やかな配慮と、西洋医学と漢方を柔軟に使い分ける知識と経験を兼ね備えた、心強い存在だ。単なる薬の提供ではなく、ライフスタイル全体を見守る安心感があり、特に女性から高い支持を集めている。
④患者様の心と体に寄り添う「対話」を重視
花凜堂薬局では、薬だけでなく心に寄り添う対話を大切にしている。そのこだわりは、服装から接客、提案まで、あらゆる場面に細かく表れている。
1.白衣を着ないスタイルで「話しやすさ」を大切に
薬局で働く薬剤師といえば、白衣を着ている姿が一般的だが、花凜堂薬局の石橋さんは普段、あえて白衣を着ないようにしている。理由は、医療機関での緊張から起こる「白衣性高血圧」という言葉があるように、白衣を着た人の前では本音を話しにくくなる人もいるためである。
「特に初めて来た方には、薬剤師というよりも『身近なおばさん』とおしゃべりする感覚で、接してほしいという想いがあります。」
もちろん、衛生面が求められる調剤業務などでは白衣を着用するが、相談の場面では、患者様が構えることなく悩みを打ち明けられる雰囲気作りを重視している。
2.対話の質を高めるために心理カウンセラーの資格を取得
石橋さんは、ただ薬を渡すだけでなく、「どうしたら患者様の本音を引き出せるか」を模索する中で、心理カウンセラーの資格も取得した。一般的に、薬局では処方箋に基づく事務的なやりとりだけで終わるケースが多く、薬剤師自身が患者様と深く関わる機会はあまり多くはない。
「以前からそういった状況に違和感を覚えていたので、『心の声を話してもらえる場所にしたい』という強い想いがありました。」
3.処方ではなく「提案型」の漢方紹介スタイル
花凜堂薬局では、「薬を処方する」のではなく、薬剤師の立場からできる「提案」にこだわっている。薬剤師は医師ではないため、治療や処方という表現は口にできない。そのため、「こういう漢方薬がありますよ」と紹介し、患者様が納得した上で選べるスタイルを重視している。
「患者様が気になる症状について相談した際には、患者様の体調や体質、季節的なことも加味し、『この漢方とこの漢方の組み合わせが良いかもしれません』といった形で、複数の選択肢を提示しています。」
石橋さんは、患者様が納得し、自分で選んで使っていくプロセスを大切にしている。「話しやすさ」から始まる医療の形。それが花凜堂薬局が持つ、こだわりである。


⑤漢方薬の魅力を多くの人に届けたい
石橋さんは、漢方薬を試したことがない人にも、気軽に試してもらいたいと考えている。
「ドラッグストアなどで販売されている市販の漢方薬は、生薬の配合量が少なく、病院で処方されるものの半分程度しか含まれていないケースが多いです。低用量の漢方薬を飲んで『効かない』と感じ、服薬をやめてしまうのはもったいないです。ぜひ一度お越しいただき、本来の十分な生薬量の漢方薬で効果を試してほしいです。」
花凜堂薬局では、飲む漢方薬だけでなく、漢方の塗り薬や保湿ケア製品も取り扱っている。これらは石橋さん自身が「これはいい」と感じたものを選び、取り寄せているこだわりの品々である。一人ひとりの体質や症状に合わせて、外側からも内側からもケアできるアイテムを揃え、トータルでの健康サポートを行っている。
今後の目標については、「漢方薬の普及」と「若々しく健康的に生きる」を挙げる。
「血流を良くする『活血』や、老化に深く関わる『腎』を補う『補腎』という漢方の考え方を用いて、体全体のバランスを整えたいと考えています。これらは、アンチエイジングに繋がるので、若々しく健康的に生きることをテーマに、今後広めていきます。」
花凜堂薬局は、女性薬剤師によるきめ細やかな対応と、西洋医学と漢方を組み合わせた、ハイブリッドな提案を特徴とする薬局である。特に女性特有の悩みに寄り添い、個々の症状や体質に合わせた最適な提案が支持を集めている。漢方薬の効果を正しく伝えることに努め、患者一人ひとりに寄り添う姿勢にこだわっている。
ぜひ一度花凜堂薬局を訪れ、心身の健康について相談してみてはいかがだろうか。きっと、あなたにとって最適な提案を受けられるはずである。

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