地元食材で作る薬膳レシピが楽しめる「太陽の薬膳®」を訪ねてみた。





薬膳の魅力を広めるため、料理教室やセミナーの開催、薬膳弁当や商品開発など、多岐にわたる取り組みを展開している。今回は、代表を務める後藤 香陽子(ごとう かよこ)さんにお話をうかがった。
- 中医薬膳の魅力と効果
- 薬膳との出会い
- 薬膳を通して地域社会に貢献
- 夢や目標を持つ人たちの先生に
①中医薬膳の魅力と効果
数千年の歴史を持つ中国伝統医学(中医学)の理論に基づき、食材や生薬を組み合わせて作る「中医薬膳」。
健康維持や病気の予防を目的とし、季節や体質、環境などに合わせて食事を調整することで自然治癒力を高め、身体と心のバランスを整えることを目的としている。
薬膳の基本的な考え方には「陰陽」「五行」「五臓」「五味五性」などがあり、例えば、食材の性質(寒性・温性など)や味(酸味・甘味など)が体に与える影響を考慮して、バランスの取れた食事を作るのだという。
日常の食事に取り入れることができるため、健康的な生活をサポートする方法として近年注目が高まるなか、後藤さんは“薬膳アーティスト”として、薬膳料理を通じて健康的で明るい生活を提案する活動を行っている。
②薬膳との出会い
約10年前、自身の体の不調をきっかけに薬膳と出会い、その効果を実感した経験から学びを深めた後藤さん。
「当時、教えてもらった棗(なつめ)とクコシロップ煮を食べ始めたら徐々に体質が変わっていって、『薬膳を学べば、もっと多くの人に良い効能を伝えられるかもしれない!』と思ったのがスタートです。」
現在では、“薬膳を身近に、薬膳を当たり前の社会に”という理念のもと、薬膳料理教室やセミナーの開催、薬膳弁当の販売、商品開発など幅広く活動しているが、当時をこう振り返る。
「10年ほど前はなかなか浸透しないことはもちろんですが、『何やってるの?』とか『怪しそう』と思われることも多かったですね。」
活動をスタートして間もない頃は認知度も低く、あまり反響はなかったそうだが、自分自身の実体験から「みんなが知れば絶対にいいことばかりで、健康社会の実現につながる」という確信があったため、途中で辞める選択肢は全くなかったという。
「本当に良いものなので、どうやって広めようかしか考えていませんでしたね。地道に活動を続けてきたからこそ、少しずつではありますが、着実に成果がでてきた実感もあって、すごく嬉しいです。やってきたことは無駄じゃなかったんだなって。」
自身の体験から良いものをみんなに知ってもらいたいという想いを持ち続け活動し続けた後藤さんの強い想いを伺うことができた。


③薬膳を通して地域社会に貢献
薬膳料理教室やセミナーの開催、薬膳弁当や商品の開発・販売、養成講座の運営だけでなく、薬膳ティー、日常の料理に取り入れやすい調味料の開発も手掛ける後藤さん。
地域の特産品を活かした地産地消レシピの考案を通して、薬膳の価値を広めている。
「薬膳と聞くと、『ちょっと特別なもの』、『ハードルが高い』というイメージを持たれる方も多いですが、実はそうではないということを知っていただきたいんです。なので、簡単で手軽なレシピの考案や、誰でも日常に取り入れやすい調味料の開発など、薬膳を身近に感じてもらえるように意識しています。」
昨年後藤さんが開発した「和ハーブめんつゆ 香」は、岐阜市のふるさと納税の返礼品にもなっており、これらの活動は、健康を意識したライフスタイルをサポートするだけでなく、地域の食材を活用することで地元の活性化にも貢献しているのだ。


④夢や目標を持つ人たちの先生に
太陽の薬膳®では、資格認定されることで薬膳師として活動ができる養成講座を開講している。
「薬膳について学びたい方や、薬膳を仕事にしたい、現在の事業に取り入れたいという方に向けて、私の活動内容やノウハウを全てお伝えしています。活動を通して薬膳師を育てるというよりも、“先生”として、まずは自分が活動している姿を見せないといけないという意味も込めて、これからも薬膳を通して様々な活動をしている姿を見せ続けたいと思っています。」
また、後藤さんが代表を務める一般社団法人ぎふおウチごはん協会で開発販売をしている『鮎そーめん』は地産地消を意識した商品で、SDGsの観点からも高い評価を受けており、さまざまな公共施設や宿泊施設などでも取り扱われている。
「今は、道の駅やJA産直店や観光施設などに置いていただいたり、長良川河畔のホテルの朝食にも使っていただいています。もっと多くの方に岐阜食材での薬膳料理を広めたいと言う気持ちだけで突っ走っているんですが、やりたいことに理解して応援してくださる方が多く、本当に周りに恵まれていると感じますね。」
現在は製薬会社と提携していて薬膳を仕入れているが、今後は、すべて岐阜県産のものに変えていくことが目標だと話してくれた。
介護予防指導士の資格も持つ後藤さんは、一般的な栄養学とは異なる「中医学」の観点から、普段の食事を工夫・改善によって、未病や予防医学の重要性を伝える活動も積極的に行なっている。
薬膳の認知度も高まり、着実に活動の幅を広げている後藤さん。事業も軌道に乗っているように見えるが、すべてがスムーズに進み、現在の結果につながっているわけではないという。
「薬膳って、“薬”ってつく分どうしても薬機法の壁が出てくるんですね。これから薬膳をもっと広めていくにあたって、自分自身がもっと知識をつけなければいけないなと思ったし、商品化という意味では特に厳しいので、これから活動をスタートする生徒たちにもしっかりと伝えていきたいです。今はそれが一番の課題ですね。」
自分自身の未熟さゆえに失敗もあったが、挑戦した結果であり、すべて良い経験としてプラスにとらえていると話してくれた。
“薬膳アーティスト”としての今後の目標や夢をうかがってみると、
「周りから見たら前進しているように見えるかもしれないですけど、私からしたら一歩進んで二歩下がっている状態なので、今年はそこを取り返せるように、薬膳を広める活動を続けていきたいです。ただ、やはり一人では限界があるので、今後は『やりたい』とか、『日常に取り入れたい』と言ってくれる生徒さんたちがもっともっと増えるのが願いです。仕事として薬膳を伝える側に回りたいという人が増えてほしいですね。」
と、意気込みを語ってくれた。
「将来的に、“薬膳の魅力を伝える場所”を作りたいと思っています。教育と食育を掛け合わせて、食文化も含めた地域文化や、昔ながらの地域の伝統を伝えられる場所を作れたらと思っています。小さな子どもから親世代、おじいちゃんおばあちゃん世代まで交流できる場所を作るのが最終的な目標です。」
と、後藤さん個人としての目標も話してくれた。
薬膳料理教室やセミナーの開催、薬膳弁当や商品の開発・販売、養成講座の運営など、地域住民の健康をサポートするだけでなく、地域の食材を活用することで地元の活性化にも貢献する後藤さん。
そんな後藤さんの姿に感銘を受けた生徒たちが、今後もさまざまな形で“薬膳”の魅力を広めていくのだろう。今後のさらなる発展と、彼女たちの活躍に期待したい。

詳しい情報はこちら