体に優しいお菓子で親子の笑顔をつなぐ「fufutto」を訪ねてみた。





無農薬のいちごや米粉など、体にやさしい素材を使った焼き菓子を販売し、マルシェやイベントで人気を集めている小さなお菓子屋さんだ。今回は、代表の田代幸香(たしろ さちか)様にお話をうかがった。
- 思わず「ふふっと」笑顔になる屋号の由来
- 家族のいちご愛がきっかけで始まったお菓子作り
- 独学で生み出した米粉のお菓子と、暮らしに根づく食材への意識
- 親子で食べられるおやつという新たな挑戦
- 体にやさしいお菓子で、笑顔の輪を広げたい
①思わず「ふふっと」笑顔になる屋号の由来
「fufutto」という温かみのある屋号は、事業を始めるために考えた名前ではなかった。もともとは田代さんが、お菓子作りの記録や、暮らしの中で気に入った雑貨などを投稿するために開設したSNSアカウントの名前だった。
「最初は屋号をつけようと思って決めたわけではなくて、お菓子作りの記録や、自分の生活の中で気に入ったもの、雑貨などを載せるためのアカウント名として、軽い気持ちでつけたものでした。」
名前の由来について、田代さんは懐かしそうに振り返る。
「“ふふっと”心が躍るような、ほっこりしたものを表現できたらと思ってつけました。いざお菓子を販売しようと思ったときにも、その気持ちとぴったりだったので、そのまま屋号にしたんです。」
当初は、鍵付きのアカウントで投稿はせず、見るだけのものだった。しかし、旦那様からのひと言がきっかけで投稿を始めると、思いのほかお菓子の投稿への反応があり、次第にアカウントの中心は「お菓子」になっていった。
気軽につけた「fufutto」という名前は今、親子に寄り添う優しいおやつを届ける屋号として、多くの人に親しまれている。

②家族のいちご愛がきっかけで始まったお菓子作り
田代さんがお菓子作りを始めたきっかけは、旦那様の実家であるいちご農家とのつながりにあった。無農薬で育てられたいちごを、岐阜でもたくさんの人に届けたい――そんな想いから始まった。
「夫の実家が熊本でいちご農家をしているんです。夫が岐阜に引っ越してきてから、岐阜でもいちごの販売を始めたのですが、“いちごだけじゃちょっと寂しいから、何かお菓子も作ってみたら?”って言われたのがきっかけでした。」
しかし、田代さんにとってお菓子作りは全くの未経験分野だった。
「私自身は、専門的にお菓子作りを学んだこともなくて、完全に独学で、試行錯誤を記録するためにアカウントを作ったという感じでした。」
使用する食材は、熊本で育てられた無農薬栽培のいちごと、お米からつくられた米粉。そこだけが決まっていて、レシピも何もない状態からのスタートだった。パウンドケーキやマフィンなど、さまざまな焼き菓子を試してみたが、どれもしっくりこない日々が続いた。
そんな試作を重ねた末にたどり着いたのが、今の看板商品であるシフォンケーキだった。
③独学で生み出した米粉のお菓子と、暮らしに根づく食材への意識
米粉を使ったシフォンケーキの製作は、想像以上に困難を極めた。小麦粉に比べて扱いが難しく、特に“膨らまない”という壁に、田代さんは何度も直面することになる。
「米粉は小麦粉よりも作るのが難しいとは聞いていましたが、思っていた以上に手強かったんです。最初は本当に膨らまなくて、いろいろな方法を試しました。」
田代さんの挑戦は、日々の暮らしの中で続いた。
「その頃は、仕事をしながら毎日シフォンケーキを焼いていました。何がいけないのかを調べては、次の日に分量を変えて、また焼いて…。果物を入れると水分が増えるから、控えた方がいいかも、と考えて少しずつ調整していきました。」
何度も失敗を重ねた末、ある日ようやく納得のいくふくらみと食感にたどり着いた。現在のシフォンケーキは、卵・いちご・豆乳・油・塩というシンプルな材料をベースに、熊本産の細かな粒子の米粉の特徴を活かし、ふっくらとした仕上がりを実現している。
使用する素材へのこだわりは強く、卵は岐阜市内の養鶏場で餌にまで配慮して育てられたもの。その他の材料も、できるだけオーガニックや農薬不使用のものを選んでいる。
田代さんが「食べるもの」に対して意識を向けるようになったのは、結婚をきっかけに生活スタイルが大きく変わったからだった。
「以前は、毎シーズン風邪をひいて、治るのに1ヶ月かかるのが当たり前だと思っていました。でも、夫はほとんど風邪をひかない人で、その理由を考えたとき、“風邪をひかない体をつくる”という発想に気づいたんです。毎日のご飯と味噌汁を基本にしたシンプルな食事に変えていくうちに、私の体も変わっていきました。」
病院や薬に頼りすぎず、自然な対処法を実践する夫の家族の姿に影響を受け、田代さんも「日常の中でできること」を少しずつ取り入れるようになった。
完璧にはできなくても、「こんな選択もいいな」と思ってもらえるような、やさしいおやつを届けたい――その想いが、今もfufuttoの土台になっている。


④親子で食べられるおやつという、新たな挑戦
田代さんのお菓子作りに、大きな転機が訪れたのは、友人のお子さんとの出会いがきっかけだった。小麦・卵・乳製品という三大アレルゲンすべてにアレルギーがあることを知ったとき、胸の奥に新たな使命感が芽生えた。
「うちのシフォンケーキは小麦と乳製品を使っていないので、自信を持っていたんですが、“卵アレルギーだから食べられない”と聞いたとき、どうにかしたいと強く思いました。そこからクッキー作りに取り組み始めました。」
その試作は、思っていた以上に根気のいる作業だったという。
「本のレシピを参考に作り始めたんですが、使う米粉の種類で仕上がりがまったく変わってしまうんです。本の通りに作っても、うまくいかない。ちょっとずつ配合を変えては焼き直すというのを、数ヶ月間ずっと繰り返しました。」
ようやく完成したクッキーをイベントで販売したとき、友人のお子さんと同じく小麦、卵、乳製品にアレルギーを持つお子さんの親御さんから、からかけられた言葉は、今でも田代さんの心に残っている。
「お客様から『普段は、あれもダメ、これもダメと制限ばかりだけど、今日は子どもに“どれがいい?”と選ばせてあげられたことが本当に嬉しかった』と直接言っていただいて…。そのときは、思わず涙が出ました。」
現在では、卵・小麦・乳製品を使わないプレーンクッキーをベースに、ココア味や紅茶味、フロランタンなど、さまざまな種類が登場している。「親子で同じおやつを食べられる」ことが、家族の笑顔につながっている。

⑤体にやさしいお菓子で、笑顔の輪を広げたい
2024年3月には長年続けていた保育士の仕事を退職し、fufuttoとしての活動に専念することを決めた。現在、田代さんは岐阜県内を中心に、月に10~15回ほどマルシェや間借りスペースでの出店を行っている。
「プレーンクッキーと、プレーン・いちごのシフォンケーキは定番として必ず出しています。その他は、イベントの客層や内容に合わせてメニューを変えています。」
将来的には、拠点となる小さなお店を構えたいと考えている。現在はコーヒーの勉強も始めており、ゆっくり過ごせる空間をつくるという夢に向かって準備を進めている。
「イベントだけだと、どうしても場所や日程が合わなくて行けないという声をいただくので。もっと安定して届けられるように、拠点が持てたらいいなと思っています。」
一方で、日々の活動では集客や認知度アップの難しさにも向き合っている。SNSでの発信も工夫しながら、認知度アップを目指して地道に続けている。
「“応援したい”とか“いいな”と思って、フォローしてくださっていると思うと、本当に心強くてありがたいです。」
一方で、活動の中では「どこまでこだわるか」に日々悩みながら、原材料費の高騰と品質のバランスにも向き合っている。
「まだまだ知らないことばかりで、自分も現状に満足してはいけないなと感じています。新しいことに挑戦するのは怖さもありますが、もっと軽やかに、いろいろなことにチャレンジしていきたいです。」
今年で3年目を迎えるfufutto。アレルギーがあっても、親子で安心して楽しめるおやつを届けるという想いは、ますます力強くなっている。
体にやさしい食材で作られたお菓子を求めている方、アレルギーがあっても子どもと一緒に楽しめるおやつを探している方は、ぜひfufuttoを訪れてみてほしい。米粉のシフォンケーキと手作りのクッキーが、親子の笑顔あふれるひとときをやさしく彩ってくれることだろう。
