心と体に寄り添う食事を届ける「ホリスティックカフェマヴィ」を訪ねてみた。





障がい者支援施設を運営する株式会社ラチュールが、施設で提供している心と体に優しい料理を一般の方にも知ってもらうために開設したカフェである。今回は、代表取締役の奥田勇介(おくだ ゆうすけ)様とカフェ代表の奥田通子(おくだ みちこ)様ご夫妻にお話をうかがった。
- 包括的な支援への想いを込めた店名の由来
- 福祉の現場から広がった“心と体を支える食事”
- 畑から食卓へ、農家とともにつくる安心の食事
- 同じ想いを持つ人たちと紡ぐつながり
- 想いを分かち合う人とつくる未来のつながり
①包括的な支援への想いを込めた店名の由来
「ホリスティックカフェ マヴィ」という店名には、奥田さん夫妻が大切にしてきた価値観と願いが込められている。
「ホリスティックっていうのは、包括的とか全体的っていう意味があるんです。それに、人と人をつなぐっていう意味合いも重なっていて。夫は障がい者支援施設を運営しているんですが、そこで大切にしているのが『マニュアルに沿って一律に対応するのではなく、一人ひとりをしっかりと見て、その人らしさや特性を理解して支援すること』なんです。」
勇介さんが福祉の現場で積み重ねてきた考え方と、「ホリスティック」という言葉は深くつながっている。
「ご家族との関係性も大事にしたいし、体や心をつくる食事も欠かせないもの。そういう全部がひとつにつながっている感覚を大切にしたくて、ホリスティックという言葉を選びました。部分的に切り取るのではなく、全体をちゃんと見ていきたいという想いが強いんです。」
さらに「マヴィ」という名前にも、特別な意味がある。
「マヴィはフランス語で『自分らしく生きる』という意味を持つ言葉なんです。自分たちが目指す姿にぴったりだと感じて、すぐにしっくりきました。」
加えて、会社名の「ラチュール」もまた、二人の想いを映す言葉だという。スウェーデン語で「ちょうどいい」「ほどほど」を意味する「ラーゴム」と、「自然」を意味する「ナチュール」を組み合わせた造語だ。スウェーデンには、コーヒーを注文する時に「自分には半分の量で十分だから半分ください」と頼む習慣があるそうで、自分にとって心地よい量を素直に選ぶ文化が息づいている。
「型にはまらず、自分にとっての“ちょうどいい”を自然に表現できる場所を届けたい。そんな想いから福祉施設を立ち上げました。」
店名や会社名に込められた言葉の一つひとつに、利用者や地域の人々が自分らしく、無理なく安心して過ごせる場所を届けたいという二人の願いが滲んでいる。

②福祉の現場から広がった“心と体を支える食事”
カフェの原点は、勇介さんが10年近く取り組んできた障がい者福祉の現場にある。
「もともと10年近く福祉の仕事に関わってきて、たくさんの方と出会いました。日中の活動は人それぞれ違っていて、個性や価値観、必要な配慮も本当に多様なんです。その人に合わせた支援をしていきたいという想いがずっとあって、そこから立ち上げにつながりました。」
その活動に、通子さんの「食事への深い想い」が重なった。
「私は食事のことにずっと関心があって、栄養価の高いものを取り入れることで、障がいの特性が少し穏やかになったり、毎日をもっと楽しく過ごせるようになったりすればいいなと考えていたんです。そこから始まったのが、今の取り組みです。」
通子さんは、施設での料理提供に携わる以前より、料理教室を通してプラントベースの食事の魅力を伝えてきた。
「3番目の子が生まれた時に、食生活を大きく見直しました。もともと添加物には気をつけていたんですが、その頃からプラントベース、つまりベジタリアンのような食事に切り替えたんです。そのスタイルが自分に合っていて、とても好きになりました。同じように喜んでくれる人がいるかもしれないと思って、料理教室を始めたんです。」
今、施設では20代後半を中心とした利用者に、毎日プラントベースの食事を提供している。動物性食品を使わず、有機や無農薬の野菜をふんだんに使った料理は、体調面にも確かな変化をもたらしている。
「排泄がスムーズになったり、体の調子が整ってきたりという声をいただいています。お肉や魚を使わないのに、美味しいって言ってもらえるのが本当にうれしいですね。」
ただ健康に良いだけでなく、利用者が「おいしい」と自然に笑顔になれること。その積み重ねこそが、二人が目指す「毎日をより楽しく過ごせる暮らし」につながっている。


③畑から食卓へ、農家とともにつくる安心の食事
ホリスティックカフェ マヴィで使われる食材は、地元農家とのつながりから生まれている。通子さんが一宮で料理教室をしていた頃に出会った人たちが、今の仕入れの基盤になっているそうだ。
「この場所に施設を構えることになった時、最初は不安でした。私の自宅が一宮だったので知り合いの農家さんもほとんど一宮の方だったんです。ですが、その中の無農薬の野菜を作っている方が、偶然にも施設の近くで畑をされていたんです。」
そこから縁が広がり、今では複数の農家から直接仕入れるようになった。
「お米も無農薬のものを仕入れていますし、その農家さんが野菜も作っているのでそちらから購入させてもらっています。別の農家さんにお願いすることもありますし、どうしても揃わないときはスーパーにある地元農家さんコーナーを利用しています。」
調味料に対しても同じように強いこだわりを持っている。
「きちんとした原材料を使って、昔ながらの製法で作られたものを選んでいます。例えばお味噌なら福岡の蔵から仕入れたり、全国から厳選した調味料を使っているんです。」
農家とのつながりは単なる取引ではなく、互いに支え合う協力関係でもある。
「自然農で作られた野菜は形が不揃いだったり、市場には出しにくいものもあるんです。でも、私たちはそういうものこそ“いい”と思っていて、そこに価値を感じています。農家さんからも『この量を買ってくれるならもっと畑を広げたい』とか、『もっと作ろうと思える』と喜んでもらえているんです。」
さらに、農家を応援する取り組みの一つとして、週に一度の朝市も開いている。
「週に1回、農家さんに来てもらって朝市を開催しています。私たちは場所を提供するだけですが、そこで知ってもらう機会が増えると農家さんの活力になるし、作物を作ってくれれば私たちも続けていける。お金の流れも生まれて、喜んでいただけるきっかけが少しずつ広がっています。」
地元農家と手を取り合いながら築く関係は、安心できる食材を届けるだけでなく、地域全体に活力を循環させている。


④同じ想いを持つ人たちと紡ぐつながり
運営スタイルは、大々的な宣伝をして幅広く集客するのではなく、価値観を共有できる人々とのつながりを大切にすることにある。
「小さくてもいいから、本物を求めている方にしっかり伝わって、ちゃんと届けていけるのが一番だと思っています。価値があるものを、価値があると感じてくれる人に届けたいんです。」
勇介さんが大切にしているのは、規模の拡大や効率化よりも「本質的な価値」を届けること。
「不特定多数に広げてしまうと、自分の想いがきちんと伝わらなくなってしまう気がします。ビジネスとしての数字だけを追うようになると、結局自分自身が楽しめなくなる。それでは意味がないと思うんです。」
この考え方は、海外からのお客さんとの出会いでも確信に変わったという。
「この前、オーストラリアの方が来てくださったんです。向こうでは、普通のお店のメニューの中に必ずひとつはプラントベースの料理があるそうなんです。でも日本に来たらほとんどなくて、探していたらたまたまここにたどり着いたと。やっぱり必要としている人は確実にいるんだなと実感しました。」
スイーツ担当のはるみさんとの出会いも、価値観の共有から生まれたつながりだった。
「もともとはヴィーガンスイーツの持ち寄り会で知り合ったんです。『こんなに天才的に美味しいヴィーガンスイーツを作る人は他にいない!』って驚いて、それからずっと“天才”って呼んでました(笑)。いつか一緒に働きたいなと思っていたら、ちょうど私が妊娠したタイミングで手伝ってくれることになったんです。」
今では、はるみさんが作る本格的なヴィーガンスイーツも魅力のひとつになっている。彩り豊かで美しいスイーツは、多くの人の目と舌を楽しませている。
大切にしているのは、ただ「美味しいものを提供する」こと以上に、想いを共有できる人たちと一緒に形にしていくこと。その積み重ねが、ホリスティックカフェ マヴィらしい居心地の良さをつくり出している。


⑤想いを分かち合う人とつくる未来のつながり
お二人が目指すのは、同じ想いを持つ人々が支え合い、理想的な循環を生み出すこと。その一つが年に2回開催するマルシェだ。
「想いを持って活動している人に出店してほしいんです。例えば『お肉を抜けば出られるんでしょう』みたいな気持ちではなくて、その人自身が自分の仕事に強い想いを持っていることが大事。そこに心があるかどうかを見て、一人ひとり声をかけています。」
こうして集まる出店者は、京都、大阪、三重、名古屋など遠方からも足を運ぶ。マルシェは単なるイベントではなく、想いを同じくする人々の交流の場となっている。
「本当にいい人はすぐ飛んできてくれるんです。自分の軸をしっかり持って、一生懸命に良いものを作っている人とつながりたい。そういう人たちと出会うと、自分もブレたくないなと強く思えます。」
現在のカフェは完全予約制でお弁当形式の提供を行っているが、未来への構想もある。
「将来的には、もう少し気軽に利用できるカフェスタイルにしていきたいです。今は予約制やお弁当形式なのでハードルが少し高いと感じる方もいると思います。もっとゆっくり過ごしていただける空間を用意して、たくさんの方に知っていただけたらいいなと思っています。」
奥田さん夫妻の経営の軸は一貫している。
「ビジネスとしての数字を追っているわけではなく、いかに価値を提供できるかを大事にしています。その方に合った価値を届けられれば、きっと満足していただけるし、また来たいと思ってもらえる。そうすれば自然といい循環が生まれて、経営もうまく回っていくと信じています。」
今ではネットワークも全国に広がり、愛知県扶桑町のヴィーガンカフェで行われるマルシェへの定期出店など、志を同じくする仲間たちと協力しながら活動を広げている。
プラントベースの食事に興味がある方、新鮮な野菜を味わいたい方、そして心と体にやさしい料理を求める方は、ぜひホリスティックカフェ マヴィを訪れてみてほしい。一人ひとりに寄り添う温かい想いと、厳選された食材で作られた料理が、きっと心と体を満たしてくれるはずだ。


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