理論と情熱で選手を育てるスポーツトレーナー「HIGH HOPES」を訪ねてみた。





トレーニング指導と治療の両方を手がけ、発展途上にあるスポーツ選手を世界レベルまで押し上げることを目指している。今回は、代表の高見 勇斗(たかみ ゆうと)様にお話をうかがった。
- 高い望みを目指す 屋号に込められた想い
- 自身の経験から生まれた情熱
- 現場から病院まで切れ目のないサポート
- 個々の骨格と特性に合わせた最適なメニュー
- アスリートが心から集中できる場所を目指して
①高い望みを目指す 屋号に込められた想い
「HIGH HOPES」という屋号には、高見さんの選手への強い想いが込められている。名前の由来について尋ねると、印象的な言葉が返ってきた。
「うまく説明するのは難しいのですが、本当に直感で決めたんです。まるで舞い降りてきたような、不思議な感覚だったんです。」
高見さんの活動の根幹にあるのは、まだ名の知られていないスポーツ選手を世界で活躍できるレベルまで引き上げたいという願いだ。その想いは名前の選び方にも表れている。
「まだ名の知られていないスポーツ選手を世界で通用するような存在に育てたいという気持ちがありました。最初は“ビッグドリーム”のようなストレートな言葉も浮かんだのですが、もう少し選手や応援してくださる人の心にも響くような名前はないかと考えていたんです。その時に思いついたのが“HIGH HOPES”でした。さらに、私の苗字が高見なので、“高い望み”という意味とも重なり、自分自身の名前と活動の軸が結びついたように感じました。」
名前の由来について「深く考えずに決めた」と笑う高見さん。しかしその裏側には、選手たちの夢を後押ししたいという純粋な願いが息づいている。
「大きな目標を口にすると笑われてしまうのではないかと気にして、言い出せない選手も多いと思います。でも、そういう時期こそ支えてくれる存在が必要なんです。まだ結果を残していない段階だからこそ応援してあげたいという気持ちで、この名前を選びました。挑戦を言葉にすることは時に勇気が要りますが、その一歩を共に踏み出せる存在でありたいと思っています。」
“HIGH HOPES”という言葉は、高見さん自身の志の高さと、選手たちの未来への夢を象徴する屋号なのだ。

②自身の経験から生まれた情熱
高見さんがスポーツトレーナーを志すようになったのは、5歳から取り組んできた空手での体験が大きく影響している。県大会優勝や東海大会2位といった輝かしい実績を残す一方で、深い挫折も経験してきた。
「僕自身、日本一になりたいって思っていたんですけど、周りからは“無理だろ”ってよく言われました。『そのために何をするんだ』と大人に言われた時に、子どもの僕には強く言い返せなくて、それがすごく悔しかったんです。」
特に忘れられないのは、独学のトレーニングで体を壊してしまった経験だ。
「親が考えたメニューをそのままやっていたら、体を本当に壊してしまったんです。立てないくらいの腰痛を二度も経験しました。その状態で試合に出ても結果は出せなくて、やっぱりすごく悔しかったですね。」
この体験は、今の活動につながる大きな原動力となっている。
「もし小学生の頃に戻って、正しいやり方で積み上げられていたら、もっと良い結果が出せたんじゃないかって今でも思います。その悔しさがあるからこそ、同じような思いを選手にさせたくない。僕を信じてついてきてくれる選手をちゃんと育てたいって思うんです。損得じゃなくて、ただやってあげたいっていう気持ちなんですよね。」
現在は3名の空手選手をサポートしており、そのうちの一人は1年間の指導でヨーロッパの体重別大会を制覇した。この成果をきっかけに、他の選手からも指導を求められるようになり、信頼の輪が広がっている。

③現場から病院まで切れ目のないサポート
HIGH HOPESの大きな特徴は、高見さんがトレーナー資格(JATI)と柔道整復師の両方を持っていることだ。通常は別々の専門家が担う役割を一人で担えるため、トレーニングと治療を切れ目なく結びつけられる。これは、選手にとっても非常に大きな安心材料となっている。
「本来、トレーニングを指導するトレーナーと、治療を行う治療家は一緒の方が良いと思うんです。両方やっている僕からすると、必要な知識は重なっていて繋がってくるんですよね。」
この言葉が示すように、高見さんの強みは両分野を横断的に理解している点にある。知識が分断されず一つにまとまっているからこそ、現場で矛盾が生じない。
「例えば腰が痛い選手がいたとします。トレーナーは“体幹が弱いから鍛えましょう”とアドバイスする。でも治療の視点だと“股関節や胸椎の動きが悪いから腰椎に負担がかかって痛みが出ている”と考えて柔軟性を出していこうとする。同じ選手に対して、これって全然違うアプローチに聞こえちゃうんです。でも、両方の知識を持っていれば一貫して説明できるし、選手も混乱しないんですよ。」
トレーナーと治療家の知見を合わせ持つことで、指導内容が統合され、選手が迷わず練習に取り組める環境を作り出せる。さらに高見さんは、選手のケガや診断に関しても妥協を許さない。
「病院に行くような怪我は、僕も一緒に行きます。ドクターの部屋まで一緒に入って、指示を直接僕が受けるようにしているんです。間に選手を挟まないようにして、確実に正しい情報を伝えられるようにしています。」
こうした姿勢は、選手の信頼を一層強めている。さらに、試合への帯同も欠かさない。
「試合前のコンディショニングや試合後のケアはプロ選手には当然ありますけど、一般の子たちにはほとんどいないんですよ。その場で怪我しても、病院に行けるのは翌週になってしまって、試合の場では見てもらえないことが多いんです。でも僕がいればその場ですぐ対応できるので、選手にとっても安心できると思います。」
トレーニング、治療、病院との連携、そして試合現場でのサポートまで。切れ目なく寄り添う姿勢は、HIGH HOPESの屋号が象徴する“高い望み”を実現するための強力な基盤となっている。

④個々の骨格と特性に合わせた最適なメニュー
高見さんのトレーニング指導は、解剖生理学や運動学といった理論に基づいたアプローチが特徴だ。画一的な指導ではなく、一人ひとりの骨格や特性に合わせてメニューを組み立てている。
「解剖学や運動学に基づいて理論的にフィジカルを強くしていくんです。神経系にもアプローチしながら、それぞれの骨格や得意不得意、強化したい部分を明確にして、マンツーマンで練り上げていく感じですね。」
従来の画一的な指導についても、疑問を率直に語ってくれた。
「部活だと、みんな同じメニューをやるじゃないですか。でも普通に考えたら不自然ですよね。ポジションも体格も違うのに、全員ベンチプレスやって走り込みして、それで同じ結果を求めるのは難しいと思うんです。」
高見さんの指導では、選手と対話しながら柔軟にメニューを変えていく。
「毎回ミーティングをして、『こういう目的でこのメニューを取り入れたい』『こういう部分を強化したいけどどう思う?』などと確認します。選手自身が“ここは伸びた、ここはまだ足りない”と感じている部分をすり合わせて、無駄なくメニューを練っていきたいんです。」
さらに、足病学協会への所属や最新のカッピング技術(FCMケア)の習得など、新しい知識を積極的に取り入れる姿勢も印象的だ。
「選手のためになると思ったことは、積極的に学びに行きます。」
理論に裏打ちされた指導と、選手に寄り添う柔軟さ。この両方が組み合わさることで、選手は自分の成長を実感しながらトレーニングを積み重ねていけるのだ。
⑤アスリートが心から集中できる場所を目指して
HIGH HOPESの将来展望は大きい。高見さんは現在の活動を続けながら、アスリート専門のジムを開設するという夢を描いている。
「アスリート専門のジムを作りたいんです。最近は24時間ジムが増えましたが、スポーツ選手からすると使いにくい部分も多いんですよ。」
そうした発想の背景には、かつてフィットネスジムの店長をしていた時の経験がある。
「スポーツ選手がやるトレーニングと、ボディメイクを目的とする人のトレーニングは全然違います。だからボディメイク志向の人が多いジムの中で、スポーツに特化したメニューをやるのはすごくやりにくいんです。恥ずかしさもあって、本当に集中できないんですよね。」
理想とするジムのイメージも具体的だ。高見さんはプロバスケットボール選手の河村勇輝選手のエピソードを例に挙げる。
「河村選手は、夜中に『こういうシュートを試してみたい』と思い立って、トレーナーを呼び出してスリーポイントの練習をしたそうなんです。そういうふうに、やりたい時にすぐ挑戦できる環境ってすごく大事だと思います。でも現状、そういう環境が整っている選手は少ない。だから、僕は時間帯を気にせず練習できるジムを作りたいんです。」
目指すのは、バスケットボールコートやバレーネットまで備えた、幅広い競技に対応できる総合施設だ。
「いろんな競技の選手が集まれるような、スポーツ選手専門の大きなジムをつくりたい。これが僕の夢ですね。」
ただし、今後に向けた課題もある。それは、空手以外の競技への認知をさらに広げていくことだ。
「僕の存在は、まだ空手以外の選手には十分届いていません。もっと多くの人に知ってもらいたいと思っていますし、フリーだからこそできる柔軟さを大切にしながら、様々なことに挑戦していきたいです。」
高見さんの壮大な夢も、これまでの歩みと情熱を見れば、決して実現不可能ではない。
専門的な指導を受けたい人、そして夢に向かって挑戦を続ける人は、ぜひHIGH HOPESの活動に注目してほしい。理論と情熱に裏打ちされた取り組みが、新たな可能性を切り開いていくだろう。

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