家計に寄り添う投資を学ぶ「タネマキハナコ」を訪ねてみた。





投資や資産形成を気軽に楽しく学べると、特に主婦層を中心に支持されている。 今回は、教室を運営する下田 花子(しもだ はなこ)さんにお話しを伺った。
- 「種をまき、花を咲かせる」理念
- コロナ禍の相談から生まれたタネマキハナコ
- 口コミで広がる人と人のつながり
- 家計簿で学ぶ実践的な授業スタイル
- 投資のタブーをなくし、岐阜から未来を変える
①「種をまき、花を咲かせる」理念
岐阜市で2021年に誕生した「タネマキハナコ」は、投資や家計管理を気軽に学ぶ教室として、30~40代の女性を中心に、親子や夫婦での参加も増え、幅広い支持を集めている。運営するのは、岐阜で生まれ育った下田花子さん。子どもの頃から家計簿や投資が身近な環境で育ち、独自の「お金のルール」を実践してきた。
「子どもの頃、両親が夕食の席で株の話をしたり、母がソロバンを弾いて家計を管理したりするのが当たり前でした。お金の話をオープンにする家庭だったんです。」
タネマキハナコの名前には、下田さんの想いが詰まっている。子どもの頃からお金の話が身近だった彼女は、投資や家計管理を「種をまく」行為になぞらえた。
「本名の花子を取って、種まき花子か、暮らしの花子か迷いましたが、カタカナの『タネマキハナコ』が読みやすく、伝わりやすいと思い、選びました。種をまいて花が咲くイメージが、この活動にぴったりだと思ったんです。」
「種をまく」には、投資で未来を育てる意味に加え、知識を広げる願いが込められている。
「講座に来た人が学んだことを友達に話して、また新しい人が来てくれる。花が咲いて、種が飛んで、次の花が咲くような循環が、私の理想です。」
下田さんの理念は、「お金の不安を減らし、明るい未来を届ける」こと。
「投資は怖いものじゃない。知らない方が怖いんです。知識を広げれば、未来も変わっていくと思っています。」
この理念は、口コミを通じて花開いている。

②コロナ禍の相談から生まれたタネマキハナコ
下田さんは、柔軟な働き方を選びながら、投資や家計簿を上手に活用し、無理のない安定した暮らしを続けていた。
コロナ禍でも、贅沢をするわけでもなく、かといって過度な節約に走ることもなく、穏やかに毎日を楽しんでいる姿は、周囲の目に魅力的に映った。そんな彼女に友人たちが、どうしてお金に困らないのかと問いかけたことが、講座を始めるきっかけとなった。
「友人が家計の管理について相談に来ました。コロナでやりくりが厳しく、将来が不安だと話す彼女に、私の家計簿を見せながら話したら、『こんな方法があったんだ!』と驚いてくれました。」
当初は、友人からの質問に対してYouTubeの動画を紹介し、学んでもらおうとしていた。しかし、どの動画を見たらいいのかわからない、説明が難しく感じるといった声が多く、思うようには進まなかった。メールや電話でのサポートにも限界を感じるようになり、直接教える方が早いと考え始めた下田さんは、2021年、自宅のリビングでタネマキハナコを立ち上げた。
「岐阜でお金のことを気軽に学べる場所はほとんどありませんでした。最初は親しい友人から始まり、どんな内容が喜ばれるか手探りでした。でも、『教えてほしい!』という彼女たちの声に背中を押されたんです。」
下田さんのユニークな経歴も、講座の魅力を支えている。20代の頃、ピースボートで世界一周の旅に出た際、電卓でお金の計算をし、この国ではこれぐらいの通貨に両替し、楽しむのがお得と旅仲間を指南していた。
「予算をきっちり管理して楽しんだんです。それが私のお金のルールでした。」
こうした経験により、友人たちに「花子なら信頼できる」と信頼に繋がったという。講座は口コミで広がり、4年目の今、約400人が卒業する人気プログラムに成長した。駐車場に書かれている「タネマキハナコ」というカタカナを見て、「何だろう?」と気になって訪れる人もいるという。
「友人が『花子なら大丈夫!』と信頼してくれて。難しすぎない『普通の目線』で話すことが、岐阜の人に響いているんだと思います。」
下田さんの講座は、専門用語を避け、初心者にもわかりやすい内容が特徴だ。
「都会まで足を運ばなくても、地元岐阜でお金のことを身近な視点で学べる場所を作りたかったんです。」
タネマキハナコは、コロナ禍の不安をきっかけに生まれ、岐阜の地域コミュニティに根を張り、知識の種をまき続けている。


③ 口コミで広がる人と人のつながり
タネマキハナコの最大の特徴は、広告をほとんど使わず、口コミだけで広がったことだ。
「最初は友人が職場で話してくれて、そこから別の人が参加し、その方がまた次の方を呼んでくれました。全部、人と人のつながりで広がりました」
特に印象的なのは「タネマキチケット」の仕組みだ。このチケットは講座を受講する際に利用できるもので、家族や友人に贈り物として渡し、講座をプレゼントする人が多いという。子どもの結婚祝いにお金ではなくタネマキハナコの講座を贈りたいと話した卒業生の言葉が、このアイデアのきっかけとなった。
「お金じゃなく、資産形成の知識を贈るなんて素敵ですよね。チケットを使って新しい人が来て、知識が広がっていくのがうれしいんです。」
このチケットは、岐阜のコミュニティで知識の種をまく象徴となり、家族や友人へのプレゼントとして広がっている。また、下田さんは市民活動団体「暮らしのお金を学ぶ会」を立ち上げ、非営利で相談窓口を提供。多くの人に、知識の入り口を広げたいという想いが込められている。こうした活動が、岐阜の地元住民とのつながりを深めている。
「講座に来た人が『友達にも教えてあげたい』と、次の人を連れてきてくれる。その広がりがまさにタネマキハナコの種まきなんです。」
下田さんの人柄も、口コミの輪を広げる鍵だ。これまでの暮らしや人との関わりの中でお金を管理し、工夫を重ねてきた経験が、講座の参加者に信頼感を与えている。「あの時の花子がやってるなら」と、SNSで再会した旧友が遠方から参加することもあるという。
岐阜のコミュニティを軸に、知識の輪は広がり続けている。銀行員や医師、会社社長など多様な参加者が「知らなかった!」と驚き、横のつながりで新たな参加者を呼ぶ。タネマキハナコは、岐阜の人々の信頼と共感で育まれ、地域に根ざした希望の循環を生んでいる。


④ 家計簿で学ぶ実践的な授業スタイル
タネマキハナコの講座は、2時間半×4回のプログラムで、投資や家計管理の基礎を学ぶ。授業では、NISAの活用、格安SIMへの切り替え、保険の見直しなど、日常生活に直結する知識を伝える。
「保険に入りすぎている人や、通信費が高い人が多いんです。私は10年近く格安SIMを使っているので、節約のコツも教えますよ。」
最大の特徴は、下田さんが自身の家計簿を公開するスタイルだ。
「私の家計簿を全部見せます。みんな『出たとこ勝負』で生活していると言うけど、コロナ禍で困るのは、もしもの時を想定していないからなんです。家計簿をつけて、長期の資産形成を考えれば、不安が減るよとお話ししています。」
特に手書きの家計簿を推奨する。
「手で書くと実感するんです。お金の動きが目に見えると、安心感が生まれます。」
講座では、参加者に宿題として家計簿作成や支出チェックを課す。実践的なアプローチで、「わかりやすい!」「自分にもできそう!」という声が多く、初心者でも抵抗なく学べる雰囲気が魅力だ。
例えば、クレジットカードの明細をチェックしない参加者に、「ダブルチェックしないと、夫がこっそり使った分を見逃すよ!」と笑いながら伝え、家庭での実践を促す。
こうした「家計のリアル」を交えた指導が、「お金の話はタブーじゃない」と感じさせる。身近な視点で教える講座は、参加者に「家計簿から始める投資」を、生活に直結することとして実感させてくれる。

⑤ 投資のタブーをなくし、岐阜から未来を変える
タネマキハナコの最終目標は、岐阜でお金の話を「タブー」から「日常」に変えることだ。投資への誤解を解き、誰もが気軽に学べる環境を目指す。最大の課題は、投資に対する偏見だ。
「投資って危ないとか、自分には関係ないって思ってる人が本当に多いんです。家族や周りから投資はダメだって言われて、不安が刷り込まれてしまうんですよね。だからこそ、岐阜でその意識を変えていきたいと思っています。」
下田さんは、NISAや長期投資の基礎を丁寧に教え、「詐欺は問題だけど、投資自体は悪くない」と強調する。投資詐欺が減り、知識で身を守れる人が増える社会を目指している。
「結婚詐欺があっても、結婚自体が悪いわけじゃない。投資も同じなのに、誤解されがちなんです。」
このユーモラスな例えが、参加者に「投資は身近」と感じさせる。地域での活動も広がり、市民活動団体と連携して中央青年会館で中高生向けの無料授業を開催している。
「高校生が目をキラキラさせて聞いてくれるんです。バイト代の使い道を考える子に、投資の基本を教えると、未来が広がるのを感じます。」
夫婦や親子向けの割引制度も導入し、家族でお金の話をするきっかけを作る。
「私が両親からお金の話を自然に学んだように、岐阜の家庭でもそんな会話が増えてほしいと思っています。」
下田さんの夢は、意外にも「仕事がなくなること」だ。
「お金の話が家庭で普通にできたら、私の講座はいらないんです。それが理想だけど、困っている人がいる限り続けます。」
彼女自身、子どものお年玉を投資に回すよう促し、「貯金より、増えるよ。もちろんリスクもあるけどね。」と笑顔で話す。子どもが「投資も暮らしに必要な金融商品の一部」と育つ姿に、将来への希望を感じている。
岐阜の地元住民に寄り添い、知識の種をまき続ける下田さんの取り組みは、地域の意識を変え、明るい未来へと繋がっている。タネマキハナコは、岐阜から日本のお金の文化を変える可能性を秘めている。
タネマキハナコの詳細は、公式HPやInstagramで確認できる。お金の知識を楽しく育むタネマキハナコに、ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。

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