“つながり” を力に社会課題へ挑む会社「TM connection 株式会社」を訪ねてみた。
ガレージハウス・コンテナハウス事業を中心に、様々な社会課題解決を手助けするような商品を開発している。今回は代表取締役の玉田 弘毅(たまだ ひろき)様に、経営哲学や事業への想いを伺った。
- 人と人をつなぐ社名の由来
- 趣味から始まった挑戦
- 組立式フレームが生む新しい住宅価値
- 課題から生まれる多彩な商品づくり
- つながりを価値に変える働き方と信念
①人と人をつなぐ社名の由来
「TM connection」という社名には、玉田社長の強い想いが込められている。苗字から取った「TM」の2文字に、日頃から大切にしてきた “人とのつながり” を意味する「connection」を組み合わせ、ただの語感ではなく、社長自身の生き方や価値観をそのまま名称に落とし込んだものだ。
玉田社長の人脈は業界の枠を超え、幅広い分野の知り合いが多い。そのため、玉田社長の事業とは直接関係のない相談や、仕事、人材紹介の依頼を受ける機会が自然と増えていったという。
「私はガレージ事業を中心にはしているのですが、多方面に知り合いが多いんです。だから、様々な分野の相談や、人の紹介を頼まれることが本当に多くて。気づいたら毎日のように誰かと誰かをつなげていました。」
人と人をつなげる活動を続けていく中で、玉田社長自身が “つなぎ役” としての役割を担っていることに確信を持つようになった。
「実際に知り合いを紹介して、そこからビジネスが大きく発展することもありました。だからこそ、人と人、事業と事業をつなぎたいという意味でコネクションとつけたんです。」
人をつなぐ力は、玉田社長にとって自身の最大の強みであり、会社が存在する意味そのものでもある。だからこそ、「TM connection」という名前は単なる社名ではなく、“自分の生き方” を表す象徴として、大切に掲げている。
②趣味から始まった挑戦
ガレージハウス事業の始まりは、玉田社長の“車とガレージが好き”という純粋な気持ちにある。もともと車に強いこだわりがあり、所有していたガレージは雑誌にも掲載されるほど本格的なものだった。
その一方で、次は自分たちの暮らしに合った家を新築したいという想いが強まり、自宅の建築を本格的に検討し始めた。ところが、新型コロナウイルスの影響で建築費が急激に高騰するという状況に直面した。
予算内で満足のいく家を建てるために、コンテナの活用などさまざまな方法を模索したが、サイズの制限や加工費用の問題があり、どれも決め手に欠けた。どうにか理想とコストのバランスを取れる方法はないかと、日々調べ続けていた。
そんな中で出会ったのが、アメリカ製のガレージ用フレームだった。組立式の鉄骨フレームを目にした瞬間、玉田社長の中で思わぬ発想が生まれた。
「ガレージが作れるなら、もういっそのこと家にしてしまったらどうだろう、とふと思ったんです。実際にフレームを見て、“これなら家として成立するはずだ” と直感しました。」
ガレージという枠にとらわれず、そのまま“住宅”として活用するという新しい発想が、ここから本格的に動き出すことになる。
思い立ったらすぐ動く玉田社長らしく、建築会社と協力しながら、このフレームを使った自宅づくりに挑戦。住宅として利用する前例はほとんどなかったが、アメリカンガレージならではの無骨で魅力的なデザインと、コストのバランスを両立させた住まいが見事に完成した。
完成した自宅をきっかけに、さまざまな用途でガレージハウスを建てたいという相談が相次ぐようになった。こうして、ガレージハウスはTM connectionの主要事業として本格的に動き出すこととなった。
③組立式フレームが生む新しい住宅価値
TM connection のガレージハウスは、従来の住宅建築が抱える課題を柔軟に解決する新しい選択肢として注目されている。独自に輸入した組立式フレームは建築コストを抑えられるだけでなく、土地の制限がある場所でも建築可能で、工期の短縮にも大きく貢献している。
「ガレージハウスの骨組みは2mほどの箱に入った状態で届きます。そのため、限られた土地でも、軽トラック1台で搬入が可能なんです。」
組み立ては差し込みタイプのジョイント方式を採用しているため、施工がしやすく、狭小地であっても効率的に工事が進められる。結果として、一般的な住宅と比べて大幅に早く建てられ、施工期間は約4ヶ月ほどに収まる。
さらに、玉田社長が自らこの家に住んでいることも大きな強みだ。実際に暮らすことで気づいた改善点を迅速に技術に落とし込み、改良を重ねている。
「住んでみると、木造より雨音が響くことに気づきました。そこで天井に遮音材を追加して改善しました。」
耐震性に対しても鉄骨に筋交いを入れたり、溶接で補強することで十分にクリア。構造的メリットとデザイン性を両立しつつ、住み心地まで追求できる住宅として、多くの人々に新しい選択肢を提供している。
家を建てるならローンが一般的だが、金額が上がれば上がるほど負担は大きくなる。「できるだけ安く、良い家に住む」。ガレージハウスは、その理想に近づくための現実的な解決策となっている。
④ 課題から生まれる多彩な商品づくり
玉田社長のビジネスの根底には、一貫して「社会課題を解決する」という姿勢がある。
どれだけ規模が大きくなっても、人の困りごとに耳を傾け、そこから新しい事業や商品のヒントを見つける。その積み重ねによって、TM connection の事業領域は広がり続けている。
「例えば、北関東でひょうが相次いで、納車前の新車や愛車が傷ついてしまうケースが続いたんです。保険金の請求が増えて損保会社が困っていると、友人を通して相談がありました。そこで車を守るカバーのような商品を開発しました。」
また、建設現場で長年感じてきた課題から、防犯装置の開発にも至った。
「現場では盗難が本当に多くて、ずっと悩まされていたんです。そこで知人の会社と一緒に防犯装置を開発しました。展示会に出したら反響が大きくて、テレビにも取材されました。作るのが好きだから『こんなもの作れませんか?』と言われると、つい形にしちゃうんですよね。」
さらに、草刈り業務の過程から生まれた“堆肥”にも可能性を見出した。
草刈りで出た草を細かく砕いて堆肥として販売していたが、ふとした瞬間に「せっかく堆肥があるなら農業にも挑戦してみよう」とひらめいた。そして思い立ったら即行動の玉田社長。農業にも本格的に取り組み始めた。
ニンニク、シャインマスカット、ナガノパープルなど、多種多様な作物の栽培にも挑戦し、SNSを活用した販売の仕組みも整えた。将来的にはB型障害者事業所と連携し、雇用を生み出して地域に還元したいと考えている。
これらの活動はすべて、“誰かの困りごと” から始まっている。コネクションという名前の通り、人から届く悩みの声が新しい商品や事業を生み、社会課題の解決につながっているのだ。
⑤ つながりを価値に変える働き方と信念
玉田社長は人脈を大切にし、人と人とのつながりから仕事が広がっていく経験を重ねる中で、最終的に信頼されるのは“人”であることを強く実感したという。
「ただ物を売るだけでは意味がないと思っています。人脈から仕事が広がっていくと実感しているので、なにより自分自身が売れることが一番大切なんです。」
また、玉田社長は建築や施工の全工程に深く関わるスタイルを貫いている。図面を描き、現場に立ち、自ら手を動かしながらプロジェクトを進めることで、妥協のない品質を提供し、同時に大きなやりがいを得ている。
「自分で施工も管理もやるし、図面も自分で描く。集中して作業している時間は楽しくて仕方ありません。」
自らの手で形を作り上げることで得られる達成感と、人の役に立つ喜び。この二つが重なる瞬間こそ、玉田社長が最も「生きている」と感じる瞬間なのだ。
「自分が手を動かして全部やることで達成感もやりがいもあるんです。社会課題を解決したり、人の役に立ったりすることを直接感じられる。だからこれからも建設、農業、商品開発を通じて、困っている人たちに価値を提供していきたいと思っています。」
建設から防犯、防災、農業まで、手がける領域は多岐にわたる。しかし、その中心にあるのは一貫して「人のために、社会のために」という理念だ。
現場の困りごとを解決し、人と人をつなぎ、社会に新たな価値をもたらしていく。玉田社長の挑戦は、これからも“つながり” を軸に広がり続けていく。
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