“ときめき”を形にするイラストレーター「iromizu」を訪ねてみた。
懐かしくて温かい色使いと、日常の風景を切り取ったイラストで、見る人の心にときめきを届けている。今回は、イラストレーターのiromizuさんにお話をうかがった。
- 子どもの頃のときめきから生まれた名前
- とある出会いからイラストレーターへ
- 懐かしい色合いで伝えるときめき
- お客様の声が原動力に
- 広がり続ける夢と挑戦
①子どもの頃のときめきから生まれた名前
iromizuという名前には、幼い頃に感じた忘れられない“ときめき”が詰まっている。イラストレーターとして活動するずっと前、まだ小学生だった頃の体験が、その源になっている。
「色水作りっていう遊びが子どもの頃すごく好きで。母校の小学校の裏に大きい公園があって、そこで草や花を探して色水を作る授業があったんです。」
草や花を水に入れて潰すと、ふわりと広がる鮮やかな色。その変化に胸が高鳴ったという。
「水色の花ならきれいに水色になって。それがすごくハマって、思い返すと、私の中での“ときめきの原点”なんです。」
そんな幼い頃の記憶が、後の活動名につながっていく。まだイラストレーターになる未来を想像していなかった頃から、「もし自分で何かをするならiromizuにしよう」と心に決めていたという。
子どもの頃の純粋な気持ち――色にときめき、世界が広がるように感じたあの瞬間。それが今のiromizuさんの作品と活動を支える大切な原点となっている。
②とある出会いからイラストレーターへ
元々絵を描くことが好きだったiromizuさん。イラストレーターの道に進むきっかけとも言える出会いがその後の人生を大きく動かすことになる。
「“ハンドレタリング”という絵のように文字を書くアートに興味を持って、最初は取り寄せのお試しキットをやっていたんですけど、教室に通って習いたいと思って名古屋の教室に通い始めました。」
半年かけて資格を取得。その教室で出会った講師との出会いが、転機となった。
「先生がすごくクリエイティブな方で、ものづくりに熱心で。刺激を受けて、ipadを買ってイラストを描き始めたんです。」
そして次第に「好きなことを仕事にしたい」という思いが強くなっていく。
「自分の好きを仕事にしたいと思って開業届を出したのがはじまりですね。」
初めてイベントに出展した時は、不安の方が大きかった。それでも勇気を出して飛び込んだ。
「初出店の時は誰も来てくれなくても仕方ないと思ってたんです。そう思ってたからこそ、足を止めて見てくださる人がいることがすごく嬉しかったのを覚えています。そこで出会った方の応援が今でも力になっています。」
巾着やノート、ステッカーなど、日常に寄り添う雑貨に自分のイラストをのせて販売する、その経験は新鮮で楽しく、活動の幅は少しずつ広がっていった。
③懐かしい色合いで伝えるときめき
iromizuさんのイラストを特徴づけるのは、独特の色づかいだ。昨年の冬頃から画風を変え、現在のスタイルに落ち着いたという。
「創作活動の中で“ときめき”を大切にしているんですけど、私の中でのときめきは“色”なんです。街中でも可愛い色に出会うと、すごくワクワクするんです。」
見た人が思わず心をときめかせるような、そっと寄り添う作品を描きたい。そんな想いが色づかいに込められている。興味深いのは、幅広い年代のお客様から「どこか懐かしい」と言われることだ。
「昔の色合い、ちょっとレトロな感じに見えるみたいで、“なんだか懐かしい”って言ってくださる方が多いですね。それが落ち着く感じにつながるなら嬉しいなと思っています。」
派手ではないのにカラフルで、どこか馴染みのある色。寄り添うようなあたたかさを大切にしている。
また、iromizuさんの作品には、きれいに整いすぎていない日常の風景もよく描かれている。
「散らかっているものが描かれていたり、何気ない日常を切り取ったイラストが多いと思います。表立って言ってないんですけど、完璧じゃない日があっていいよね、みたいな気持ちを入れたいなと思いながら描いています。」
完璧を求めすぎず、日常のままを肯定する。その優しさが色とともに作品の奥まで染み込んでいく。技術はすべて独学だという。
「いろんな作品を見て、“こういう表現もあるんだ”と学んで、自分でひたすら描くことを繰り返しています。真似をするわけではなくて、積み重ねたものを自分の形として出していく感じですね。」
それでも描きたいのに技術が追いつかない、アイデアが浮かばないという葛藤が訪れることがある。
「こういう絵が描きたいのに描けないとか、そもそもアイデアが出てこないとか、葛藤はいっぱいあります。」
そんな迷いの時間も、制作を続けるうえで欠かせないプロセスなのだろう。悩みながら描いた作品ほど、誰かの心にそっと届いていく。
そして、iromizuさんが前へ進み続ける力をくれるのは、作品を受け取ってくれる“お客様の声”にほかならない。
④お客様の声が原動力に
迷いながらも筆を止めない理由は何かと尋ねると、iromizuさんははっきりと答えてくれた。創作の根っこには、自分自身の“好き”と、作品を楽しみにしてくれる人の存在がある。
「自分がイラストを描くのが好きというのももちろんあって、完成したものを見るとすごくテンションが上がるんです。あとは、出会ってきたお客様たちがすごく温かくて、ずっと応援してくださるのが本当に励みになっています。」
毎月オンラインで公開しているカレンダーを楽しみにしてくれる人、イベントで毎回声をかけてくれる人、初出店の頃から見守ってくれる人。そんな一人ひとりの言葉が、迷った時にそっと背中を押してくれる。
「対面のイベントで声をかけてもらったり、“こんなに喜んでくれるの?”って思うことがあって。予想以上の反応を目の当たりにすると、へこんでいる時も思い出して、また頑張ろうって思えるんです。」
もっといろんな作品を届けたい。こんな表現ができたよと報告したい。その気持ちが、iromizuさんを前へと進ませる。
今年の3月中旬〜4月初めに行った岐阜市・柳ケ瀬にある『喫茶 星時』での個展の経験も原動力の一つになった。
「自分の作品を飾っていただける機会が生まれるなんて思っていなかったので、すごく嬉しかったですし、作品と向き合う時間がとても楽しかったです。」
作品を届けた先で生まれる笑顔や言葉。それこそが、iromizuさんが描き続ける理由になっている。
⑤広がり続ける夢と挑戦
今後の夢を尋ねると、iromizuさんからは前向きな答えが返ってきた。
「やりたいことが本当にたくさんあって、人生で全部やりきれるかなって思ってるくらいです。でも夢なんてたくさんあるほうがいいですよね。商業系のイラストをよりお受けできるように挑戦していきたいです。」
また、活動の幅も広げ、アナログでの制作や、関東や関西など新しい土地でのイベント出展にも意欲的だ。
「行ったことのない地域にも行って、いろんな作家さんとも出会いたいです。自分だけじゃできないことを、他の人と協力してやってみたい気持ちもあります。」
一方で課題もある。それは、時間の使い方だという。
「好きだから没頭しちゃって、自分のことをおろそかにしちゃうんです。いろんなインスピレーションを得るためには、いろんなものに触れる時間も必要だと思っているので、そのバランスを取るのが課題ですね。」
それでも“好き”という気持ちがある限り、立ち止まることはない。
「好きだから悩みがあっても苦しくないんです。落ち込んでも終わりじゃなくて、また何かしらの方向を探していこうって出来るのは、やっぱり好きなんだろうなって多います。」
日常の中にときめきを求めている人、懐かしくて温かい色合いに癒されたい人は、ぜひiromizuさんの作品に触れてみてほしい。色と優しさで紡がれた世界が、きっと心にそっと寄り添ってくれるだろう。
詳しい情報はこちら