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大垣市

暮らしと心を整える整理収納の専門家「Re:start」を訪ねてみた。

暮らしと心を整える整理収納の専門家「Re:start」を訪ねてみた。
TOM
TOM
昨日、片付けしてたら食べかけのおやつが山ほど出てきたよ。増えてるのかな・・・
SARA
SARA
増えるわけないでしょ。あなたが忘れて次々開けてるだけ。
TOM
TOM
もしかして、未来の自分のためにストックしてたのかも!
SARA
SARA
・・・この量は未来のあなたも食べきれないわよ。
大垣市を中心に活動する整理収納アドバイザー「Re:start」をご存知だろうか。
単なる片付けサービスではなく、依頼者の生活スタイルや価値観に寄り添い、心の整理まで手伝う整理収納のプロフェッショナルだ。今回は、整理収納アドバイザーの高桐 久恵(たかぎり ひさえ)様にお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • 「いつからでも始められる」という想い
  • 友人宅の片付けから始まった転機
  • 徹底したヒアリングで実現するオーダーメイド収納
  • お客様の人生に寄り添い続ける仕事
  • 次世代のアドバイザー育成を目指して

①「いつからでも始められる」という想い

 

Re:startという屋号には、高桐さんが歩んできた過程と、『人生はいつからでも始められる』という深い想いが込められている。

 

「私自身、結婚して子どもを産んだ時点で、自分の好きな人生はもう終わったんだと思ってしまった時期がありました。」

 

高校卒業後、鹿児島県種子島から就職で岐阜へ。観光バス会社のバスガイドとして働き、やがて結婚と出産を機に仕事を辞め、専業主婦として子育てに専念する日々が始まった。

 

2歳差で2人目の男の子が生まれて、もう手が回らなくなってしまって。常にイライラして、産後うつみたいな状態になってしまったんです。」

 

そんな時に出会ったのが「片付け」だった。最初は趣味でも特技でもなかったが、気持ちの整理や自分自身を取り戻すきっかけとなったという。

 

「私の場合は、新しい自分を見つける作業が、たまたま片付けだったんです。いつからでも好きなことを見つけられるし、変われるんだって気づけたんですよね。」

 

家の中が整っていくことで、心にも余裕が生まれた。その感覚が自分で人生をリスタートできるという確信へとつながった。

 

Re:startという名前には、新しくリセットし、人生をいつでも始め直せるという前向きなメッセージが込められている。それは、かつての自分自身へ向けた言葉であり、同じように悩みながら暮らす誰かへのエールでもある。

 

②友人宅の片付けから始まった転機

 

高桐さんが片付けの世界に踏み出すきっかけとなったのは、意外にもある友人の存在だった。産後うつで心が沈んでいた時期、気晴らしに誘ってくれた友人の家を訪れたことが始まりだという。

 

「その友人は料理がすごく上手で、家を訪れる度にご飯を作って振る舞ってくれました。」

 

感謝の気持ちがある一方で、毎回お世話になってばかりなのが申し訳なかった。何か自分にできることはないか――そう思い、家に行くたびに掃除機をかけるようになった。

 

「この人のために何かできることはないかなと思って。得意でもなかったんですけど、行くたびにちょっと掃除をしていました。」

 

そこで目にしたのが、驚くほど物が入っていない収納だった。

 

「床に物が溢れてるのに、収納はガラガラだったんです。ここに入れればいいのにって言ったら、『入れると分からなくなるから』って。家を建てた時に収納をたくさん作りすぎて、逆に何をどこに入れればいいか分からなくなったと聞いて驚きました。」

 

片付けが苦手な人の考え方をそこで初めて知ったという。自分の当たり前が、他の人の当たり前ではない――その驚きが興味へと変わっていく。

 

「やっぱり人の役に立ちたいって気持ちが根本にあるみたいで。片付け上手でもないのに、SNSで収納術を調べて、それを見ながらいろいろ買って整えていたら、だんだん片付いてきたんです。」

 

その姿を見た友人は「センスがあるから、仕事に向いてるかも」と背中を押してくれた。そこで初めて知ったのが整理収納アドバイザーという資格だった。

 

「当時は岐阜市のメディアコスモスで講座が開かれていました。9時から5時までの長時間な上、受講料も主婦には高くて子どもも小さかったので本当に迷いました。でも、なんかピンと来たんでしょうね。」

 

思い切って子どもを預け、講座に参加した。それが人生の転機となる。

 

片付けを学び、家が整っていくと心にも変化が生まれた。

 

「家の中がきれいになっていくと、自分の心もスッと軽くなるんですよ。心と頭と家の中って繋がってるんだって気づいて、自分が変わったんです。」

 

この体験こそが、後のRe:startの原点となった。

 

③徹底したヒアリングで実現するオーダーメイド収納

 

整理収納アドバイザーとして活動を始めた9年前、周囲の理解はまだ追いついていなかった。「片付けをお金を払って依頼する」という文化がほとんどなく、家に他人を入れることへの抵抗感が特に強かったという。

 

「当時は本当に知られていなくて、家族にもそれ仕事になるの?って言われてました。他人を家に入れること自体ハードルが高い土地柄なので、本当に苦労しましたね。」

 

強みも実績もない状態で選んだのは、とにかく場数を踏むことだった。

 

「ほぼ無料でいろんな家に行って経験を積みました。それが今、自分の武器になってますね。いろんな家を見てきたからこそ、状況を瞬時に判断して柔軟に対応できるようになりました。」

 

高桐さんが特に大切にしているのは、事前のヒアリングだ。

 

「その方がどんな家に住んで、どういう経緯で今の暮らしになったのかを時間をかけて聞きます。そうすると考え方や生活の癖が見えてくるんです。」

 

理想の暮らしを聞くことも重要だが、散らかっている人ほど理想が描けないという。

 

「目の前の生活で精一杯なので、どう暮らしたいかが分からないんです。それを引き出すために、これまでの経緯や困りごとを丁寧に聞きます。」

 

収納は人によってまったく異なる。キッチンだけを見ても、時短を重視する人とミニマリスト志向の人では、最適な収納が全く違う。

 

「その人が何に困っていて、どんな暮らしを望んでいるか。それによって必要な収納が大きく変わってくるんです。」

 

ただ、理想と現実が一致しないこともある。ヒアリングによって、その人が無理なく続けられる「リバウンドしない片付け」を提案する。

 

「今は小さいお子さんが、5年後には小学生になる。その時どうなるかを共有して、未来まで見据えた収納を一緒に考えるんです。」

 

暮らし方は変わる。だからこそ、5年後・10年後を見据えた片付けが必要なのだ。こうして高桐さんの収納提案はその人の人生に寄り添う片付けへと進化していった。

 

④お客様の人生に寄り添い続ける仕事

 

活動を続ける中で、整理収納の需要は年々高まり、忙しい時期には月に20日以上現場に出ることもあるという。依頼に至るまでの背景には、人それぞれの葛藤や勇気がある。

 

もっと早く頼めばよかったって言ってくださる方が本当に多いんです。家に人を入れるのが恥ずかしくて、何年も悩んでから申し込む方もいて。でも、終わった後にそう言ってもらえると本当に嬉しくて、活動を続けてきてよかったと思います。」

 

中には「人生が変わった」と言ってくれる人もいる。片付けは単なる作業ではなく、その人の暮らしや心の変化に深く寄り添う仕事なのだと実感する瞬間だ。

 

また、高桐さんの仕事は一度きりで終わらない。暮らしは変動し、家族構成も変わるため、長く続く関係性が生まれていく。

 

「一回呼ばれて終わりじゃないんです。お子さんが一人暮らしを始めたから収納を改めたいとか、自分の実家も片付けて欲しいとか。長いお付き合いのお客様が多いですね。」

 

人生の節目に立ち会い、変化を一緒に見届けられることが、高桐さんの大きなやりがいとなっている。

 

そして、高桐さんが大事にしているのは、片付けが心にも影響するということだ。

 

「たかが片付けなんですけど、家の環境を整えるだけで気持ちが変わるんです。自分がそうだったからこそ、絶対に前向きになるって分かるんですよ。片付けって自分の心の整理にも繋がってるんだと思います。」

 

部屋が整うと、心も整う。その変化を一緒に体験できるからこそ、この仕事に深い価値を感じている。

 

⑤次世代のアドバイザー育成を目指して

 

今後の展望を尋ねると、高桐さんの声に力がこもった。活動の幅を広げるだけでなく、「伝える側」としての新たな挑戦を始めようとしている。

 

「来年からアドバイザー育成講座を始めたいと思っています。半年間の講座で、実際の現場にも一緒に入って手取り足取り教えるような、実践型の講座を考えています。」

 

岐阜県内にも資格取得者は多いが、仕事として一歩を踏み出せずに立ち止まる人も多いという。

 

「どうやって仕事にするのか分からない人がすごく多いんです。集客の仕方やSNSの使い方、現場でのヒアリングや収納提案の仕方、説得の仕方まで。そういうことを教える存在に私がなりたいと思ってます。」

 

自分が苦労して積み上げてきた経験を、次の世代に渡したい。そして何より、現場に立ち続けたいという強い想いがある。

 

「こんな考え方の人がいるんだって驚かされたり、大変なのに面白かったり。本当にやめられないです。」

 

しかし課題もある。それは、整理収納サービス自体の認知度がまだまだ低いことだ。特に「家というプライベート空間に入る」という性質が壁になっている。

 

「一回頼んでもらえれば良さが分かるんですけど、そこにたどり着くまでがハードルなんですよね。家に入ると、その人の生活が全部見えるので、不安も大きいんだと思います。」

 

だからこそ、高桐さんはInstagramでユーモアを交えながら発信を続け、お客様が安心できる雰囲気を作りたいと考えている。

 

根底にあるのは、人の役に立ちたい、人と関わりたいという想いだ。

 

片付けに悩んでいる人、自分の暮らしを見直したい人、人生をリスタートしたい人は、ぜひRe:startを訪れてみてほしい。

 

高桐さんの丁寧なヒアリングと、その人に寄り添ったオーダーメイド収納は、家にも心にも余裕を取り戻させてくれるだろう。

 

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