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岐阜の魅力を体験できる「Change Over」。三人の想いが響き合う場所を訪ねてみた。

岐阜の魅力を体験できる「Change Over」。三人の想いが響き合う場所を訪ねてみた。
TOM
TOM
サラ、キャンプしようよ!テント張ってよ!
SARA
SARA
良いわね〜でも室内にテント張るの?しかも私が?
TOM
TOM
だって僕、不器用だし・・・それに外だと虫いるしさ〜
SARA
SARA
室内キャンプも悪くないけど・・・アウトドアの意味知ってるのかしら・・・
岐阜市にある旧 山田屋旅館がリノベーションしたことをご存知だろうか。
この場所で三人の経営者が岐阜の魅力を発信したいとチカラを合わせている。「change over」中島 誉明(なかしま たかあき)さん、「埜となれ山となれ」安田 尚央さん(やすだ たかひろ)さん、「Tea stand MIX CHA(ミクスチャー)」片山 治(かたやま おさむ)さんにお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • 三つの個性が響き合う、旧旅館の新しい物語
  • 歴史ある街並みに、新しい風を
  • 体験”をデザインするアウトドアブランド
  • 文化を体験し、共有する場として
  • ここから始まる、岐阜の魅力を広げる場所

①三つの個性が響き合う、旧旅館の新しい物語

 

岐阜市・柳ケ瀬商店街のほど近く。細い路地を入ったところに、静かに佇む建物がある。築80年の旧山田屋旅館だ。20年以上前に廃業し、しばらく時が止まっていた場所だ。その建物が2024年、リノベーションを経て新しい役割を持ち始めた。

 

その再スタートをともにしているのが、三人の経営者だ。

 

キャンプ用品メーカー「Change Over」の中島さん。アウトドアブランド「埜となれ山となれ」の安田さん。そして「Tea stand MIX CHA(ミクスチャー)」を運営する片山さんだ。

 

三人の店名には、それぞれの想いがぎゅっと詰まっている。中島さんはこう話す。

 

「『Change Over』って、テニスのコートチェンジのときに使う言葉なんです。僕自身テニスをしていたので。その“場所が変わる”って感覚が、アウトドアに出かける時の気持ちの切り替えにも似ていて、響くものがありました。」

 

 

安田さんの「埜となれ山となれ」という名前は、ことわざに由来する。

 

「もともとは“ここまでやったら後はどうなってもいい”という意味があるんですが、僕は少しだけ捉え方を変えていて。商品をお客様に渡すまではしっかり向き合う。でもその先は、お客様自身の想いで自由に育ててほしい。余白のあるプロダクトでありたい、そんな気持ちを込めています。」

 

 

片山さんの「MIX CHA」には、また違った視点がある。

 

「“ミクスチャー”は音楽用語で“混ぜる”という意味なんです。新しいものと古いもの、人や文化が自然に混ざり合う場所にしたくて。そしてお茶を扱うので“チャー”の響きもかけました。」

 

 

異なる分野で活動してきた三人が、旧旅館に集まり、それぞれのまなざしで空間をつくり変えている。

 

音、空気、人の動き。違う色を持つ3人の感性が重なり合って、ゆるやかに場を形づくっている最中だ。ここに足を踏み入れると、旅館だった頃の静けさも、これからの賑わいも、同時に感じられる。

 

三人が生み出す新しい柳ケ瀬の景色は、まだ始まったばかりだ。

 

②歴史ある街並みに、新しい風を

 

このあたりは、昔は路面電車が走っていて、今もところどころに懐かしい街並みが残っている。

 

ただ、古い建物が取り壊されていくのを目にすることも増え、「なんとか残したいよね」という気持ちがずっとあったという。そんな時に、この旅館を見つけたのが片山さんだった。

 

「宿泊施設をやりたいと思い、物件をさがしていたら商店街の会長さんが昔旅館だった建物があるよと教えてくれたのがきっかけでこの場所を見つけました。」

 

旅館の経営者にすぐには辿り着けず紆余曲折あったが、さまざまな方のおかげで所有者にお会いする事ができたのだそうだ。こうして、物件を購入しティースタンドを開いた、片山さんは「将来は一棟貸しの宿泊施設にリノベーションが目標」だと話してくれた。

 

その後、スタッフの関係で、なかなか営業ができず悩み「この場所をどう使っていこう?」という話を安田さんとしていた頃に、ちょうど耳に入ってきたのが、中島さんが“実店舗を持ちたい”と考えているという話。

 

「中島さんはセレクトショップで、私はアウトドアブランド。立場は違うけど、一緒にいるとすごくバランスがいいんですよね。私自身もお店を持ちたいと思っていたタイミングだったので、じゃあ三人でやってみようよ、という流れで始めました。」

 

そう安田さんが教えてくれた。三人は、イベントで一緒に出店したこともあり、お互いがどんな想いで仕事をしているかも知っていた。だから、肩の力を入れすぎることなく、自然と「一緒にやる流れ」ができあがっていったのだろう。

 

古い旅館を残しながら、新しい使い方をしていく——その挑戦に、三人らしい温度が重なっていく。

 

③体験をデザインするアウトドアブランド

 

中島さんには、もともと「いつか自分の事業をやりたい」という気持ちがあった。じゃあ自分は何で人の役に立てるんだろう?と考えたとき、ずっと身近にあったキャンプが浮かんだという。

 

「キャンプが好きで、友人から“始めたいけど、何から買えばいいの?”って相談されることが多かったんです。でも本当は、そんなに構えなくていいんですよね。家にある布団やコンロでも楽しめますし、まずは身近なものではじめてみてほしいんです。」

 

最初からフルセットを買いそろえたり、使ってみて「必要なかった」や「やっぱり違った」となる光景を見て、どこか違和感を感じたそうだ。

 

「僕はキャンプって、本来は自分のペースで、自分に合うスタイルを見つけていくものだと思うんです。だから最初は身近な道具から始めて、好きなスタイルが見えてきてから少しずつ買い足すほうが良いと思うんです。」

 

中島さんは、自身が普段使っていて便利だなと思った商品や、ちょっと気の利いた雑貨などを届けたいと話してくれた。

 

 

安田さんは、既製品のOEMが多い中で、「誰ともかぶらないアウトドア用品を一から作る」という想いを大切にしている。

 

「機能性・軽量性・収納性のバランスから形を決めています。想像する使い方によって素材やギミックを加えることで、個性的な形が生まれ、焚き火の楽しみ方や料理のしやすさも変わるんですよ。」

 

 

そんなお二人の世界観と、片山さんのお茶スタンド。一見まったく違うようで、実は不思議と相性がいい。片山さんはこう話す。

 

「お茶スタンド目当ての方も来てくれますが、アウトドア好きな人が立ち寄ってくれて、お茶を知ってくれたり、お茶を飲みに来た人がアウトドアに興味を持ってくれたりするんです。なので相性が良いと感じています。」

 

この空間では、お客さんがゆったりと1~2時間過ごすことも珍しくないという。お茶を飲みながら会話したくなる、アウトドア用品を手に取ってみたくなる。そんな“心地よさ”が自然と生まれているようだ。

 

④文化を体験し、共有する場として

 

「Tea stand ミクスチャー」では、岐阜の白川や揖斐地区で採れた素材を使ったお茶を提供している。京都の上質な抹茶も取り入れながら、心が整うような美味しい一杯を提供している。

 

三人が共通して大切にしているのは、「岐阜の文化や自然を、もっと自然な形で感じてもらいたい」というまっすぐな想いだ。

 

お茶を気軽に楽しむ時間やアウトドア用品を通して自然に触れる時間。そのどちらも、「岐阜ってこんないい場所なんだ」と気づくきっかけになる。中島さんは、最近行っている取り組みを嬉しそうに話す。

 

「金華山の登山者に冷たいお茶をお渡ししたり、川の源流で釣りをしたり、アウトドアイベントも積極的にやっています。遠くまで行かなくても、庭やベランダで過ごす時間だって立派なアウトドアだと思います。家でも使えるキャンプ用品を提案して、体験の中で良さを知ってもらえたらと考えています。」

 

ショップは単なる“物販の場”ではなく、畑の収穫体験やクラフトコーラ作りなど、地域とつながるさまざまな体験と人々を結ぶ場所になっている。商品を売るだけではなく、そこにある暮らしや自然、文化をどう楽しむかを伝える――そんな三人らしい“体験のあるお店”が、旅館の中で息づいている。

 

⑤ここから始まる、岐阜の魅力を広げる場所

 

課題として共通しているのは、「まだ十分にお客様に知ってもらえていない」ということ。中島さんは、今後についてこう話す。

 

「SNS発信やイベントを通して、少しずつブランドやお店の魅力を知ってもらえるように広げていきたいですね。」

 

安田さんも、同じ方向を見ている。

 

「もっと知ってもらう機会をつくりたいんです。展示や商品の見せ方も工夫していきたいし、岐阜の自然を感じられる場所を一緒に体験するイベントも続けたいですね。」

 

三人が届けたい価値は、キャンプ用品やお茶そのものではなく、その先にある「体験」。自然の中で過ごす静かな時間や誰かと一緒にお茶を味わうひととき。それが、訪れた人の記憶に残る贈り物になる。

 

片山さんは、今後の構想をこう語る。

 

「商品をただ使うだけじゃなく、その背景やストーリーを知ることで、もっと愛着が湧くと思うんです。地域の文化や自然とつながる体験を通して、岐阜の魅力を全国に広めたいですね。将来的には、ワークショップや宿泊も含めた複合的な場所にしていけたらと考えています。」

 

安田さんは、旅の入口としての役割にも期待を寄せている。

 

「岐阜市って、中部国際空港からのアクセスはいいのに、意外と素通りされてしまうんですよね。だからこそ、“岐阜の魅力を感じてもらえる宿”をつくって、皆さんに立ち寄ってもらえる場所にしたいんです。」

 

三人の話を聞いていると、この場所を起点に、岐阜の風景や文化が広がっていく未来がはっきりと浮かんでくる。

 

キャンプ用品の開発、お茶の体験、地域のイベント――。それぞれの活動を重ねながら、岐阜という土地に息づく魅力をていねいに届けていく。

 

そして訪れた人が、「また帰ってきたい」と思える特別な体験をつくり続けていくのだろう。

 

三人が紡ぐこの挑戦が、これからどんな風に広がっていくのか。その未来がとても楽しみだ。

 

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