地域を支える誇りと技術「協和電設株式会社」を訪ねてみた。
昭和43年に創業し、電気・通信工事を通じて地域のインフラを支えてきた建設会社だ。現在は、代表取締役の西垣 康紀様(にしがき やすのり)が会社を率い、公務員からの転身を経て組織改革に取り組んでいる。今回は、西垣 康紀様と総務課の林 愛香様(はやし まなか)にお話を伺った。
- 公務員から転職、組織づくりへの挑戦
- 助け合いの文化が根付く組織づくり
- 惜しみなく投資する人材育成
- 次世代に伝えたい建設業の誇り
①公務員から転職、組織づくりへの挑戦
協和電設は、現代社会において一時も欠かすことのできない電気・通信という重要インフラの構築、保守、点検を担うことで、人々の快適で便利な生活を支え、社会に貢献している企業だ。
この社名には、創業者たちの想いが込められている。
「先代である父が、以前勤めていた電気関係の会社の仲間7人とともに立ち上げたのが、協和電設の始まりでした。立場や役割を越えて、力を持ち寄り、支え合いながら歩んでいこう。そんな気持ちが、「協和」という名前に込められているそうです。」
そう語る西垣社長。昭和43年、7人の同僚が集まり、当時地域の重要な通信手段であった有線放送の配線工事から始まった。
創業から57年。時代の移り変わりとともに、事業のかたちも少しずつ姿を変えてきた。現在では、中部電力管内の変電所や送電線、通信線をはじめ、携帯電話基地局や交通信号機など、私たちの暮らしに欠かせないインフラの工事や保守・点検を担っている。
「時代に合わせて、事業も柔軟に変わっていかなければならないと感じています。変化を続けることが、これからも社会に必要とされるための一つの答えだと思っています。」
先代社長は高度成長期に乗り、人を増やし事業を拡大していった。その基盤を受け継ぎ、現在の協和電設へとつないだのが西垣社長なのだ。
公務員として働いていた西垣社長は、45歳で退職し家業を継ぐ決断をした。
「当時は道路建設課に所属していました。若い頃は現場の発注や施工管理を担当していました。その後、30代に入ってからは企画系の部署へと移り、東海環状線の整備などにも関わっていました。」
地図に残る仕事がしたい。その想いから土木の道を選んだという西垣社長。
「もともと物を作るのが好きで、どうせ作るなら人の役に立つもの、地図に残るような大きな仕事をしたいと思っていました。」
先代社長は、西垣さんに自分の後を継ぐことを強制していなかったという。なぜ安定した公務員の道を離れ、家業を継ぐことにしたのか。
「当時の協和電設には、50人近くの社員が在籍していました。社員一人ひとりの顔だけでなく、その先にあるご家族やお子さんのことを考えると、『この先も、誰かがこの会社を支えていかなければ』という気持ちが自然と湧いてきました。ですので、自分がその責任を引き受けようと決意し、転職を決めました。」
家族を持つ50人の社員。その責任の重さを、西垣社長は真正面から受け止めた。公務員から建設業へ。西垣社長が直面したのは、組織マネジメントの課題だった。
「先代の頃は、現場で力を発揮するプレーヤーとして優秀なスタッフが数多くいました。一方で、組織全体をまとめ、方向性を示すマネージャー的な役割を担う人材は十分とは言えなかったんです。そうした状況の中で、自分がその役割を引き受けることになりました。」
技術者集団を束ねるのは決して簡単ではなかった。
「正直なところ、最初はかなり戸惑いもありました。考え方の違いから、私のやり方に違和感を覚えた人もいたと思います。その結果、離れていった人もいましたが、一方で、時間をかけて理解してくれる人や、共感してくれる人も少なくありませんでした。」
将来を見据え、西垣社長が取り組んだのが、年齢構成の見直しだった。
「もし一斉に退職が重なってしまえば、技術や役割を引き継ぐ人がいなくなってしまいます。だからこそ、無理のない年齢構成にしていくことが大切だと考えました。中途採用などを取り入れながら、10年ほどかけて少しずつ整えていったんです。」
時間をかけて人を育て、つないでいく。その積み重ねが、技術の継承だけでなく、組織としての安定や安心感にもつながっている。目先の変化に流されるのではなく、10年先、20年先を見据えて人と向き合ってきた姿勢こそが、今の協和電設の土台を支えているのだろう。
②助け合いの文化が根付く組織づくり
協和電設の大きな強みの一つが、社員教育の土壌と、社内に根付いた良好な人間関係だ。特に資格取得の場面では、先輩社員が後輩に声をかけ、知識や経験を共有する姿が日常的に見られる。
「社内の人間関係は、とても恵まれていると思います。先輩が後輩を一方的に指導するのではなく、互いに理解しながら育っていく。そうした空気が自然とできています。」
そう語る西垣社長に、その背景を尋ねると、返ってきたのは意外なほどシンプルな答えだった。
「特別な仕組みを用意しているわけではありません。社員一人ひとりを大切にすること、困っている人がいれば手を差し伸べること。その積み重ねだと思っています。」
実際、資格試験が近づくと、先輩社員が自主的に勉強会を開き、自身の経験や工夫を惜しみなく共有する。そこに見られるのは、個人同士の競争ではなく、組織として力を高めていこうとする姿勢だ。
「建設業は、一人で完結する仕事ではありません。現場は常にチームで動きます。だからこそ、日頃から信頼関係を築いておくことが何より大切だと考えています。」
総務課の林さんも、こうした職場環境の中で働く安心感を実感している一人だ。
「分からないことがあっても、気兼ねなく相談できます。先輩方が丁寧に向き合ってくださるので、落ち着いて仕事に取り組めています。」
人を育てることを特別な制度に頼るのではなく、日々の関わりの中で積み重ねていく。その姿勢こそが、協和電設の技術力と組織力を静かに支えている。ここには、仕事を通して人としても成長できる環境が、確かに息づいている。
③惜しみなく投資する人材育成
もう一つ、協和電設が力を入れているのが、教育制度の充実だ。
「中小企業大学校で組織論を学んでもらったり、銀行系や生命保険会社が行う研修で社会人としての基礎を学んでもらったりしています。技術面についても、業務に必要な資格はすべて取得できるよう支援しています。」
電気工事士や施工管理技士などの公的資格についても、取得を積極的に後押ししてきた。
「資格を取得した際には、手当として給与に反映するようにしています。教育については、将来への投資だと考えているので、できる範囲でしっかり取り組んできました。『教育に投資して潰れた会社はない』という言葉がありますが、その考え方には共感しています。」
資格取得を支援すれば、人材が他社へ流出するのではないか。そうした懸念の声があるのも事実だ。しかし西垣社長の考えは、一貫している。
「資格を取らせた結果、辞めてしまうとしたら、それは会社に魅力がなかったということだと考えています。だからこそ、魅力のある会社にすること社員の成長につながることに対して、費用を惜しむつもりはありません。」
さらに同社では、教育だけでなく、社員同士の関係づくりにも目を向けている。
「外での仕事が多いため、全員がそろって顔を合わせる機会はどうしても限られてしまいます。だからこそ、親睦を深める場づくりは、会社として大切にしています。懇親会や交流会なども、その一つですね。これからも、社員同士のつながりが自然と生まれるような取り組みは、会社として応援していきたいと考えています。」
こうした人への投資と関係性づくりを積み重ねてきた結果、協和電設には自然と風通しの良い職場環境が育まれてきた。人を育てることを経営の軸に据える姿勢が、組織の安定と持続的な成長につながっている。
④次世代に伝えたい建設業の誇り
西垣社長には、強い想いがある。それは、若い世代に建設業の魅力を伝えたいということだ。
「建設業は、3Kというイメージを持たれがちです。確かに、楽な仕事ではありません。しかし、人々の生活を守る、誇りある仕事なんです。」
インフラを支える建設業は、社会にとって不可欠な存在だ。電気、水道、道路、橋。私たちが当たり前のように使っているものは、すべて建設業の人々の手によって作られ、維持されている。
「私たちの仕事がなければ、人々は安心して暮らせません。そのことを、ぜひ若い世代に知ってもらいたいと考えています。」
では、協和電設が大切にしている人物像とは、どのようなものなのだろうか。
「一番は、やる気があることですね。そして、人の役に立ちたいという気持ちがあること。この二つだと思っています。経験やスキルは、入社してから少しずつ身につけていけばいい。根っこにある想いの方が、ずっと大切だと考えています。」
技術や知識は、時間をかければ身につけることができる。一方で、仕事に向き合う姿勢や、人のために働こうとする気持ちは、簡単に育つものではない。だからこそ、西垣社長は「志」を重視してきた。
「未経験でも構いません。建設業に興味がある、人の役に立ちたいという気持ちがあれば、周りの仲間と一緒に、少しずつ成長していける環境があります。」
これまで現場で力を発揮してきた技術者たちを、組織としてまとめる土台づくりに取り組んできた西垣社長。いま、その視線は次の世代へと向いている。
「これまで築いてきた基盤を、次の世代がどう受け継ぎ、どう発展させていくのか。そのことを考える時期に来ていると感じています。」
組織としての基盤は整った。これからは、若い世代がその土台の上で、新しい価値を生み出していく番だ。
「建設業の未来は、これからを担う若い世代にかかっていると思います。誇りを持って働ける環境を整えること。それが、今の私にできる役割だと思っています。」
その言葉からは、次世代への期待と、静かな信頼がにじんでいた。最後に、西垣社長が何よりも大切にしていることを伺った。
「人を大切にすることですね。社員がいるから会社があり、お客様がいるから仕事がある。地域の皆さまがいるから、私たちはここにいられる。その当たり前を忘れず、感謝の気持ちを持って、これからも地域のインフラを支えていきたいと思っています。」
地域に根ざし、人と向き合い続けてきた協和電設。その積み重ねこそが、同社の揺るぎない強さを支えている。人の暮らしを足元から支える仕事に、静かなやりがいを感じたい人にとって、ここはきっと、一つの選択肢になるだろう。
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