飲食業
岐阜市

素材と丁寧に向き合う焼き菓子専門店「焼菓子Noix」を訪ねてみた。

素材と丁寧に向き合う焼き菓子専門店「焼菓子Noix」を訪ねてみた。
TOM
TOM
この一口に想いが詰まってるって考えると、なかなか食べられなくて。
SARA
SARA
さっきから様子がおかしいと思ったら、それが理由なのね。
TOM
TOM
うん。だから今日は、ずっとタルトを手に持ってる。
SARA
SARA
早く食べなさい。想いごと味わうのよ。
岐阜市にある「焼菓子Noix(ノワ)」をご存知だろうか。
無添加とグルテンフリーにこだわり、素材を厳選した焼き菓子を作り続けている。今回は、オーナーの江崎 裕子(えさき ひろこ)様にお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • タルトが主役のお菓子作り
  • お客様の声から始まったグルテンフリーへの挑戦
  • 糖質を抑えるための工夫と試行錯誤
  • 一人で守り続ける理想のお菓子作り

①タルトが主役のお菓子作り

 

焼菓子Noix(ノワ)という店名は、フランス語で「ナッツ」や「クルミ」を意味する言葉だ。この名前には、江崎さんのお菓子づくりへの想いと、意外なきっかけが詰まっている。

 

「メインのお菓子がタルトなんですけど、タルトって中にアーモンドクリームを使うんですね。ナッツを使うお菓子が多いので、それにちなんだ名前を考えていました。」

 

当初は、日本語での店名もいくつか検討していたという。そんな中、思いがけないところから一つの提案があった。

 

「お菓子にそこまで関心のない父から、フランス語がいいんじゃないかって提案してもらったんです。」

 

何気ない一言だったが、その言葉がきっかけとなり、店名の方向性が定まっていった。

 

さまざまな要素が重なり、名前が決まった焼菓子Noixは、2016年4月17日にオープンし、今年で10周年を迎える。変わらずこの場所で、焼き菓子を作り続けてきた。

 

江崎さんがお菓子作りを始めたのは、子どもがまだ小さい頃だった。

 

「子どもが寝ている静かな時間に、自分のためにお菓子を作るのが、ちょっとした楽しみだったんです。」

 

その頃は、まだお店を開くつもりはなかったという。しかし、通信教育で製菓を学び、製菓衛生師の資格を取得する中で、少しずつ気持ちに変化が生まれていった。

 

「お店に勤めるという選択にも、魅力や安心感はあったと思います。でも、自分でお店をやることで、作り方や考え方も含めて、納得できるものを形にできると思ったんです。」

 

自分が納得できるものを、自分の手で作りたい。きちんとしたお菓子を届けたい。そのまっすぐな想いが、江崎さんを導いた。

 

②お客様の声から始まったグルテンフリーへの挑戦

 

開業当初から、焼菓子Noixで並ぶお菓子の種類は大きく変わっていない。しかし、使う素材は、この数年で大きく変化してきた。

 

もともと体にやさしく、アレルギーの原因となりにくい素材として選んでいたが、転機となったのはお客様からの声だった。

 

「ある時期に、小麦が入っていないものはありますか、とか、卵を使っていないものはありますか、という質問を続けていただくことが増えたんです。」

 

アレルギーを持っている方や、年齢とともに体質が変わった人。これまで問題なく食べていた小麦が、ある日を境に合わなくなったという声も少なくなかった。

 

米粉を取り入れ始めたのは、2017年のことだった。最初からすべてを置き換えるつもりだったわけではなく、少しずつ試しながらのスタートだったという。

 

「最初は試しに、米粉で一つ作ってみようと思っただけなんです。」

 

試作と改良を重ねるうちに、少しずつ米粉のお菓子が増えていった。そして気がつけば、2022年7月の終わりには定番として並ぶお菓子がすべて米粉へと置き換わっていた。

 

とはいえ、米粉でのお菓子作りは簡単ではなかった。食感が固くなったり、味に物足りなさを感じたりと、試行錯誤が続いた。

 

市販の製菓用米粉では、どうしても納得のいく味にならなかったという。タルト一つとっても、何度も配合や焼き方を見直し、改良に改良を重ねて、ようやく今の形にたどり着いた。

 

そんな中、2019年、イベント出展をきっかけに岐阜県産の「LGCソフト米」と出会う。

 

「岐阜で有機のお米を探している、という話をしていたら、たまたま教えてもらったんです。」

 

LGCソフト米は、体に吸収されにくいタンパク質を多く含む、少し特殊なお米だ。試しに粉にして使ってみると、冷めても甘みがあり、食感もよかった。

 

「もちっとした食感も、お菓子作りと相性が良く、お米そのものの甘さもちゃんと感じられたんです。」

 

江崎さんは、このお米の美味しさだけでなく、その背景にも共感し、支援の意味も込めて使い続けることを決めた。

 

素材ごとに向き不向きを見極め、必要に応じて使い分ける。その積み重ねが、今の焼菓子Noixの味を形づくっている。

 

③糖質を抑えるための工夫と試行錯誤

 

江崎さんのこだわりは、米粉に切り替えたことだけにとどまらない。

 

焼菓子Noixがオープンした2016年当初から、すでに「糖質を抑える」という視点でのお菓子作りは始まっていた。

 

当初、タルトの土台には高野豆腐と小麦胚芽を使用していた。糖質をできるだけ抑えながら、満足感のあるお菓子を作るための工夫だったという。

 

その後、小麦粉から米粉へと切り替えたタイミングで、小麦胚芽も米ぬかへと変更した。

 

「実は、米粉って小麦粉より糖質が高いんですよ。」

 

そう話しながら、食品成分表のデータを見せてくれた。小麦粉は100gあたり73.4g、米粉は81.7g。一方で、米ぬかは27.5g、高野豆腐は0.2gと、数値は大きく下がる。

 

「なので、100%米粉にするのではなく、半分以上を米ぬかにしています。そこに高野豆腐もブレンドしています。」

 

素材を変えながらも、目指す方向は一貫している。江崎さんが作りたいのは、特別な日にだけ食べるお菓子ではない。

 

「毎日気にせずに食べられるもの。そんな健康なお菓子を作りたいんです。」

 

市販のお菓子には、保存性や見た目を保つために、さまざまな添加物が使われている。しかし、焼菓子Noixで使用している添加物は、ベーキングパウダーと竹炭のみだ。

 

チョコレートも有機のものを選ぶなど、保存性を高めるためや色味を良くするための添加物は使わない。

 

「なるべく使わないようにしています。それでも、本当に必要なものだけは、試行錯誤しながら最低限入れています。」

 

すべては、食べる人の体を思ってのこと。無理をさせない、日々の暮らしの中で続けられるお菓子を届けたい。その姿勢が、一つひとつの素材選びに、静かに表れている。

 

④一人で守り続ける理想のお菓子作り

 

現在、江崎さんは一人で店を営んでいる。仕込みから焼成、在庫管理、販売まで、すべて自分の手で行っている。米ぬかは無農薬のものを使っているため、選別作業だけで丸一日かかることもあるという。

 

課題として感じているのは、イベントへの出店と材料費の値上げだ。

 

「一日にたくさん作ることは、できないですね。イベントに出ると、どうしても夜が遅くなってしまって、一人では体力的に難しいと感じることもあります。」

 

有機素材の仕入れ値も年々上がり、同じ材料でも、時期によって大きく価格が変わることがある。販売価格の調整も簡単ではなく、今のペースを大切にしながら続けている。

 

江崎さんは、この場所で、無理をせずに続けていけることが一番だと考えている。

 

小さい頃から、無農薬や有機の食材が身近にあった江崎さん。その経験が、今のお菓子作りの根っこにある。

 

無添加で、グルテンフリーで、毎日食べられるお菓子。体にやさしいものを探している人、アレルギーがある人、素材にこだわったお菓子を選びたい人は、ぜひ焼菓子Noixを訪れてみてほしい。江崎さんが積み重ねてきた試行錯誤と想いが、きっと一口ごとに伝わってくるはずだ。

 

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