ITと職人技の融合で、住まいの安心を届ける「株式会社ホームメイド」を訪ねてみた。
かつて長良川の水運を活かした材木商が軒を連ねたこの地で、伝統を継承しながらも、最新のデジタル技術を実務に取り入れる企業である。
今回は、代表取締役の臼井 常雄(うすい つねお)様にお話をうかがった。
- 建築ITの先駆けとなったCAD代理店事業
- 滋賀での大型案件と法人化への転換点
- 施工事例の公開と徹底した現場管理
- システム活用による工務店への営業支援
①建築ITの先駆けとなったCAD代理店事業
岐阜市の伝統的な材木町で育った臼井社長は、家業である材木屋を継ぎ、3代目として経営に携わってきた。しかし、1990年代後半からの不況の影響を受け、業界全体は大きな転換期を迎えることとなる。
木材需要の減少により、多くの同業者が異業種への転換を余儀なくされるなか、臼井社長自身も、生活を支えるために飲食店で深夜業務に従事するなど、厳しい時期を経験したという。
そんな中で出会ったのが、木材業界で培ってきた人脈や知見を活かせる、新たなビジネスの可能性だった。大工や工務店向けの建築用CADシステム「スーパーソフト」の販売代理店事業である。
当時、住宅建築の現場では、徐々にデジタル化が進み始めており、このCADシステムも導入が広がりつつあった。木造住宅の設計に特化した操作性を持ち、マウス操作で平面図(間取り図)を作成するだけで、屋根形状を自動判定して伏図を生成。さらに、立面図や鳥瞰パースまでをスピーディーに作成できる点が大きな特徴だった。当時のPC性能を考えると、3次元表示や積算見積までを一連の流れで行える仕組みは、工務店にとって非常に魅力的なものだったという。
「材木屋としての背景があったので、工務店の方々が何に困り、何を求めているのかは自然と分かっていました。実際に代理店として営業に回ると、図面作成の手間が減る点は、とても高く評価されました。このときに、多くの工務店さんにシステムを導入・支援した経験が、ITと建築を結びつける今の考え方の原点になっていると感じています。」
代理店事業は順調に成長し、2年間で5,000万円以上の売上を記録。全国でもトップクラスの販売実績を収めたという。この経験を通じて身につけた「設計を分かりやすく伝えることの大切さ」と、材木屋として長年培ってきた「木を見極める目」。その二つが重なり合うことで、後のリフォーム事業においても、構造の安全性に配慮しながら、正確な図面に基づいた無理のない提案へとつながっていった。
②滋賀での大型案件と法人化への転換点
CAD販売やウェブ制作など、IT分野での経験を重ねるなかで、臼井社長は次第に、自身が最も深い知識を持つ「建築現場」へと、もう一度向き合いたいと考えるようになった。そうした想いから、リフォーム事業を本格的にスタートさせる。
その後、縁のあった会社の社長から「ホームメイド」という名前を託されたことをきっかけに、独立を決意。個人事業主として歩み始めた当初は、知名度もなく、仕事が途切れる不安を抱える時期もあったという。
そんな中、思いがけない転機となったのが、気分転換に訪れた滋賀県で出会った一軒の民家だった。
「琵琶湖へのドライブの途中で目に留まったその家は、とても立派なお宅でしたが、長年の歳月による傷みも見受けられました。材木屋として見れば、構造自体はしっかりしており、きちんと手を入れれば、まだまだ長く住み継げると感じたんです。営業職としての経験も活かしながらご家族と丁寧に話を重ね、専門的な視点に基づいた見積もりをご提案したところ、当時としては非常に大きな規模となるリフォーム工事をお任せいただくことになりました。」
この工事は、基礎から屋根、内装に至るまで、住まい全体の価値を次の世代へとつなぐフルリフォームとなった。臼井社長は、ITを活用した正確なプランニングと、材木屋時代に築いてきた職人とのつながりを活かしながら、現場監督として一つひとつの工程に丁寧に向き合っていった。
「この仕事をきっかけに、法人として「株式会社ホームメイド」を設立しました。すでにリフォーム業には取り組んでいましたが、この大きな工事をやり遂げた経験が、その後につながる自信と信頼の土台になったと感じています。しばらく仕事が途切れ、不安な時期に巡り合ったこのご縁が、法人として腰を据えて取り組んでいく覚悟を固めるきっかけになりました。」
こうして、偶然の出会いから生まれた一件のリフォームは、臼井社長にとって事業の方向性を定める大きな節目となり、現在のホームメイドへと続く確かな一歩となっていった。
③施工事例の公開と徹底した現場管理
ホームメイドのリフォームが多くの方に選ばれている理由のひとつに、公式サイトに掲載されている豊富な「施工事例」がある。一般的なリフォーム会社でも事例紹介は見られるが、同社のサイトでは、施工前から完成に至るまでの様子が、写真とともに丁寧に紹介されているのが印象的だ。
見えなくなってしまう部分も含めて、できる限り隠さずに伝える。その姿勢には、「安心して任せてほしい」という想いが込められている。
「リフォームは、完成すると構造や下地などの大切な部分が見えなくなってしまいます。だからこそ、工程を写真で残し、どんな作業をしているのかを分かる形でお伝えしたいと思っています。それが、お客様にとっての安心につながればうれしいですね。これまでウェブ制作にも携わってきた経験から、発信を続けることの大切さも実感しています。」
こうした情報公開を支えているのが、臼井社長自身による現場への細やかな目配りだ。材木屋の3代目として、長年多くの現場を見てきた経験から、職人の仕事ぶりや姿勢を自然と見極められるようになったという。
「丁寧な仕事をする職人さんは、現場の片付けや材料の扱いといった細かな部分にも、その姿勢が表れるように感じています。そうした点を大切にしてくださる方々と、互いに声を掛け合いながら仕事ができたらと思っています。信頼関係を積み重ねていくことが、結果として、より良い住まいづくりにつながっていくのではないでしょうか。」
また、ドローンを活用した屋根点検など、新しい技術も積極的に取り入れている。屋根に登らずとも、お客様と一緒に映像を見ながら状況を確認できるため、不安を感じにくい点も好評だ。
かつて現場を一軒ずつ回り、汗をかきながら住まいと向き合ってきた経験と、ITを活かした管理や発信。その両方を大切にしながら、一つひとつの住まいに丁寧に向き合う姿勢は、今も変わらず受け継がれている。
④システム活用による工務店への営業支援
現在、株式会社ホームメイドでは、自社のリフォーム事業に取り組む一方で、地域の工務店を支える「営業・施工支援」にも力を入れている。その中心となっているのが、株式会社コンピュータシステム研究所が開発する住宅プレゼンシステム「ALTA(アルタ)」だ。臼井社長は、これまでの経験や実績を背景に、同システムの正規代理店として、デジタル技術を活用した業界支援を進めている。
「ALTA」の特長は、AIを活用した図面認識の仕組みにある。手書きの平面図や間取り図をスキャンしたり、スマートフォンで撮影したりするだけで、壁や建具を自動で読み取り、短時間で3次元データへと変換してくれる。主要な建材メーカーの設備データも実寸で搭載されており、完成後の暮らしをイメージしながら、動線や色合いを確認できる点も特徴だ。図面作成だけでなく、見積や申請に必要な資料まで一連で整えられるため、実務の負担軽減にもつながっている。
「手書きの図面を写真に撮るだけで、短時間で立体的な図面や見積まで形になります。少人数で現場と事務の両方を担う工務店にとって、こうした仕組みは大きな助けになるはずです。事務作業の時間を少しでも減らして、その分、現場の質やお客様との対話に向き合ってもらえたらと思っています。」
臼井社長の取り組みは、住まいをつくる現場に向き合う「BtoC」の仕事だけでなく、技術や仕組みを届ける「BtoB」の分野へと広がっている。猫専用の脱走防止扉といった細やかな要望から、大規模な改修まで、一つひとつの暮らしに寄り添う姿勢は変わらない。「住まいのことを、気軽に相談できる存在でありたい」という想いが、地域の人々との継続的な信頼関係につながっている。
株式会社ホームメイドの歩みを振り返ると、そこには伝統と新しい技術の自然な重なりが見えてくる。材木屋として受け継いできた木への理解、ITの経験から生まれた情報発信の工夫、そして現場で培われた確かな施工力。これらが重なり合うことで、目に見えにくいリフォームという仕事に、確かな安心感を添えている。
岐阜の地に根ざしながら、時代の変化にも目を向け続ける臼井社長。その歩みはこれからも、住まいを通して多くの人の暮らしをそっと支えていくことだろう。
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