飲食業
岐阜市

トレーラーが届ける、スルスル飲める一杯「Have a Nice Day」を訪ねてみた。

トレーラーが届ける、スルスル飲める一杯「Have a Nice Day」を訪ねてみた。
TOM
TOM
サラが淹れてくれたコーヒー、なんだかすごく美味しかったんだよね。
SARA
SARA
そう?特別なことはしてないけど。
TOM
TOM
なんだか甘くてさ。きっと気持ちがこもってたんだよ、愛情ってやつかな。
SARA
SARA
・・・あなた、砂糖を山盛り三杯入れてたわよ。無意識だったのかしら。
岐阜を中心に活動する「Have a Nice Day」をご存知だろうか。トレーラー式の移動販売で、「スルスル飲めるコーヒー」をモットーに、こだわりのコーヒーを提供している。今回は、代表の佐藤 文昭(さとう ふみあき)様にお話をうかがった。
今回のツムギポイント
  • 家族のための一杯から始まった挑戦
  • トレーラーという選択と夫婦のブランディング

  • 副業から本業へ、覚悟の決断

  • スルスル飲めるという哲学

  • 岐阜から始まるコーヒーの未来

①家族のための一杯から始まった挑戦

 

はじまりは、家族の中の小さな出来事だった。

 

「もともと夫婦でコーヒーが好きで、毎日のように飲んでいました。妻が妊娠して、カフェインを控えた方がいいと聞いて、カフェインレスの豆をいろいろ取り寄せたんです。でも、味がどうしても物足りなくて。これなら自分で焙煎してみようかなと思ったのが始まりです。」

 

その頃は、まだ“商品”ではなく、家族のための一杯だった。

 

「妻が安心して飲めるコーヒーを作りたい。それだけでした。」

 

豆の種類や焙煎時間を変えながら、試行錯誤を重ねる日々が続いた。やがて、生活の転機が訪れる。勤めていた会社を退職することになったのだ。

 

「退職後は、友人の会社で土木の仕事をしながら、副業としてコーヒーのテント販売を始めました。マルシェやイベント、知人の会社の駐車場など、小さな場所からのスタートでした。」

 

家族のために始めた焙煎は、やがて知らない誰かの一杯へと広がっていった。

 

②トレーラーという選択と夫婦のブランディング

 

現在の出店スタイルはキッチンカーではなく、トレーラー型。

 

「固定費を抑えられるというのもありますが、トレーラーは珍しいので目に留まりやすいんです。」

 

この形を提案したのは奥様だった。

 

「キッチンカーよりもトレーラーの方がいいんじゃないか、と妻が言ってくれました。」

 

屋号や世界観づくりは奥様が中心となっている。

 

「店名は妻の案です。ロゴはデザイナーさんに制作していただき、その中から妻が選びました。」

 

「Have a Nice Day」という店名には、コーヒーを通してその日が少しでも良い日になれば、という願いが込められている。

 

佐藤さんが味をつくり、奥様が世界観を整える。二人三脚でブランドは形づくられてきた。

 

③副業から本業へ、覚悟の決断

 

佐藤さんはコーヒー業界出身ではない。前職は設備保全や土木関係。まったく異なる分野からの挑戦だった。

 

「コーヒー屋としての経験はありませんでした。本当にゼロからです。」

 

最初は独学で始めたが、基礎はきちんと学んだ。

 

「この人から学びたいと思った焙煎の師匠がいて、連絡を取らせていただきました。焙煎の基本だけでなく、豆の見方や味づくりの考え方など、コーヒー全体について教えていただきました。」

 

事業として本格的に取り組むかどうか。背中を押したのは、ある経営者の言葉だったという。

 

「本業としてやってみたらどうだ、と言っていただいて。将来的にこれ一本でやっていきたいという気持ちもありましたし、覚悟を決めました。」

 

味づくりの方向性も、出店を通じて変わっていった。

 

「最初は自分が好きな酸味のある浅煎りを中心に出していました。でも、東海地区では深煎りを好まれる方が多いと感じて。そこからは、お客様の反応を見ながら味の方向性を調整していきました。自分の理想だけでなく、地域の好みに寄り添うように、少しずつ変えていったんです。」

 

現在は浅煎り・中煎り・深煎りを含めた5種類を常時ラインナップしている。エチオピア、グアテマラ、ブラジルなど、産地の個性も伝えている。

 

「いろいろな味を楽しんでもらえるようにしています。」

 

自分の理想と、お客様の声。その両方をすり合わせながら、少しずつ形が整っていった。

 

④スルスル飲めるという哲学

 

「スルスル飲めるコーヒーを目指しています。」

 

この言葉には、佐藤さんなりの基準がある。

 

「ブラックでも重たくない。苦すぎず、でも薄くない。ホットでもアイスでも、気づいたら飲み終わっているような、そんなコーヒーが理想です。」

 

特におすすめなのが、ウォータードリップのアイスコーヒーだ。

 

「夏のマルシェで、一杯飲んだお客様がすぐ戻ってきて、“もう一杯ください”と言ってくださったことがありました。本当に嬉しかったです。」

 

“あわあわ”と呼ばれる泡立てたドリンクは、コーヒーが苦手な人にも好評だ。

 

「女性やお子さんでも飲みやすいようにしています。カフェインレスで作ることもできます。」

 

佐藤さんのコーヒーは、世代を問わず支持を集めている。小学生の常連のお客様がいることも、その証のひとつだ。

 

「小学1、2年生の子が、お母さんと一緒に来てくれて、ドリップパックを何度も買ってくれているんです。自然と出た“美味しい”が聞けた瞬間が、一番嬉しいです。」

 

派手な言葉ではない。けれど、その一言が何よりの励みになっている。

 

⑤岐阜から始まるコーヒーの未来

 

今後について尋ねると、佐藤さんは大きな目標を語ってくれた。

 

「岐阜でコーヒーの木を育てたい、というのが僕の中では一番大きなゴールです。もし僕ができなくても、息子が興味を持ってくれて、そのゴールを伝えていけたら嬉しいですね。岐阜県産のコーヒーができたら面白いと思っています。」

 

壮大な夢だが、根底にあるのは“続いていくこと”への願いだ。

 

その大きな夢に向かう中で、いま描いているのが焙煎所の構想だ。

 

「カフェスペースを兼ねた焙煎所を作りたいです。コンテナのような形で、焙煎もしていて豆も売っている。3、4席くらいの小さなコーヒースタンドが理想です。」

 

お客さんとの距離が近い、海外の街角のような空間を思い描いている。一方で、現実的な課題もある。

 

「生豆の価格が上がっていることは大きな悩みです。」

 

そしてもう一つが、カフェインレスの需要を広げることだ。

 

「欧米では4割近くがカフェインレスと言われています。こちらでも広めていきたいですね。“カフェインレスあります”と書くと、実際に選んでくださる方は多いので、需要は感じています。」

 

妊娠中や授乳中の方、夜だけ控えたい方など、必要としている人は確実にいる。移動販売だからこそ、さまざまな場所でその存在を知ってもらえると考えている。

 

インスタグラムでの発信も続け、認知度は少しずつ上がっている。Have a Nice Dayを目当てにマルシェを訪れるお客様も増えてきた。

 

今後については、営業エリアを広げる予定はなく、地元を基盤に、焦らず広げていきたいという。

 

「まずは地域で、“コーヒーといえばHave a Nice Day”と思ってもらえる存在になりたいです。豆を買いたい、コーヒーを飲みたい時の選択肢にHave a Nice Dayを入れてもらえたら嬉しいですね。」

 

佐藤さんはコーヒーの魅力についてこう語る。

 

「浅煎りはフルーティーで、初めて飲んだときは衝撃でした。飲み比べると本当にいろんな味があります。苦手だと思っている方も、牛乳で割ると飲みやすいこともあるので、ぜひ一度試してほしいですね。」

 

家族のために始めた焙煎は、今では地域の一日をそっと整える存在になっている。

 

コーヒーにこだわりがある人、美味しいコーヒーを飲みたい人、カフェインレスコーヒーを探している人は、マルシェでトレーラーを見かけたらぜひ立ち寄ってみてほしい。

 

佐藤さんの想いが詰まったコーヒーが、きっと良い一日を届けてくれることだろう。

 

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